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2017年4月10日号

勝負事

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 プロの将棋の世界が揺れている。昨年、羽生三冠から名人位を奪取した現役最強の佐藤天彦名人が先日行われたある一局でコンピューターの将棋ソフトに敗れるということが起こった。チェスの世界では世界チャンピオンが人工知能に敗れて久しい。もはや人間はコンピューターに勝てないとまでいわれている。少し前には世界最強の囲碁棋士が人工知能に敗れ話題になった。したがって別段、驚くこともないのかも知れないが、将棋の現役名人とコンピューターとの対戦はこれまで実現していなかったので、今回の名人敗退はやはり大事件なのだ。
 最近は、人工知能を使って小説や記事を創作するソフト開発も進められているというから、かくいう筆者も失業対策をゆめゆめ怠れない時代になった。とはいえ、記事などというものは10人読んだ人のうち9人がつまらないといっても1人がおもしろいといってくれればそれを励みに書き続けられるようなところがあるものだ。
 ところが、プロの将棋の世界といえば勝負事の世界である。勝つか負けるか、斬るか斬られるか。自分が勝つことで評価が上がり、そのひとつの頂点に君臨するのが名人である。だから、その名人がコンピューターに勝てないということになるとプロ棋士たちの存在意義、存在価値というものは急速に薄っぺらで軽いものになってくる。それが勝負の世界というものだろう。
 昨年来、将棋界は将棋ソフトをめぐる問題に揺れた。ビッグタイトルの挑戦者に決まった棋士が対局中、スマホを使って将棋ソフトの棋譜をカンニングしていたのではないかという疑惑が浮上し、挑戦者が交代になった。ところが、その後の第三者委員会の調査によって疑惑はシロと判明し、一連の対応の拙さの責任を取るかたちで日本将棋連盟の会長が辞任する事態に及んだ。
 技術革新、プログラムの開発スピードは速い、後手に回った将棋界の対応の遅れが招いた事態だと指摘する人もいるが、そもそも将棋ソフトをカンニングしてはいけないと禁止すること事態がプロ棋士の存在を否定することになるのだから、対応が遅れるのも無理はない。
 辞任した前会長が「光速の寄せ」といわれた時代、将棋とはあなたにとってなんですかと聞かれ「自分を表現する場」と答えていた。コンピューター時代にプロ棋士たちがこれからどこへ向かうのか。この言葉が一つのヒントになるような気がするのである。

  • 鳴門屋
  • 株式会社山善

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2017年7月25日号
6〜7面
CAD/_CAM特集
8〜10面
モノづくりの要所