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挑む加工現場 詳細

2017年3月10日号

熟練技能をデジタル化

まだ見ぬ開発、人の手で 

 熟練技能者のノウハウをデジタル化し、圧倒的な競争力を獲得した中小企業がある。
 アルミをメインに多品種単品の部品を24時間無人稼働の工場で生産するHILLTOP(京都府宇治市、従業員数99人)だ。
「機械がやれることは機械に任せる。人は人にしかできない夢ある仕事を開拓し続ければいいんです」。同社の山本昌作副社長はサラリと話すが、その理想を実現できる中小はかなり珍しい。
 完成品の最短納期は新規で5日、リピートで3日。高難度・高精度な加工にも対応し、受注分野は日用品から医療機器部品、航空宇宙関連まで多岐にわたる上、プロダクトデザイン、機能的な改良の相談にも応じられる。
 デザイナーとエンジニアが協業しやすいラボも社内に設置し、装置開発事業もスタート。社員が創意工夫を活かせる場を広げ続けている。
 「米国にも日本からプログラムを送って日本と同じ納期で生産できる拠点を2年半前に設立したのですが、『お前の工場はミラクルだ!』と、驚かれました。納期・精度ともに評価が良く、米IT系受託加工大手の仕事をどんどん食っていますよ」(山本副社長)。
 米拠点は既に売上2・5億円を突破し黒字化。顧客は名だたる大手企業を含め約360社にまで広がった。

■加工ロジックを解明
 この2月の日本本社の加工プログラム作成数は約1400件に達したが、20~30代の若手プログラマー16人でこなした。その驚異的なスピードは、熟練技能を自社開発ソフトでデジタル化した「HILLTOP system」によるものだ。

 プログラマーの操作は、どの部位にどの刃物を使うかを画面上でクリックするだけ。回転数や送り速度等のパラメーターは、ソフト側で自動入力される。プログラムにかかる時間は従来ソフトを使用した場合と比べ、約10分の1に短縮できる。
 育成にかかる期間も約3カ月と超速。若手プログラマーは、「ゲーム感覚で学べ、通常は5~10年かけて学ぶようなプログラミングが簡単にできるようになる」と言う。
 しかしそんなに簡単に作ったプログラムで、本当に要求精度をクリアできるのか? つい口にしてしまった疑問に、山本副社長は「わが意を得たり」と逆に嬉しそうだ。
 「熟練度や形状の複雑さ次第で、加工面品位が落ちることもあります。でもそうした失敗は、データベース高度化の貴重な種。チャンスなんですよ。様々な加工条件をチームで検証し、最適化してデータベースにフィードバックしていく。様々な加工のロジックをどんどん解明していけば、より複雑な加工も高品位に仕上げられる。そうして数値化したロジックこそが、AI(人工知能)として使えるわけです」

■開発型企業へ進化
 旧社名の山本精工として自動車部品の量産で生きていた同社が、多品種単品加工に舵を切ったのは、約30年前。
 「売上の8割を占めた量産のお客を手放し、崖っぷち。それでも下請けから脱却するという決意は固かった」。山本副社長は苦笑交じりに振り返る。
 受注を探し回る日々の中、データ活用で効率向上を進めようと決めた。
 「PCと工作機械をつないだのは、おそらく日本で当社が一番早かったでしょう。今ようやく、国を挙げてインダストリー4.0に動き始め、メーカーが機械内部データをオープンにし始めましたが、当時は絶対NO。データを引張るのに苦労しました」(同)。
 今あるシステムの源流はほぼすべて、自社開発のもの。機械内部にセンサーを取り付け、通信ソフトを自社開発し、熟練技能をデータベース化して設計に活用するソフトもエクセルから創り上げてきた。
 山本副社長は次はさらに一段、ステージを登るという。「国内売上約14・5億円のうち、今は7割が加工の仕事ですが、ここから一気に化けますよ。ロボット、IoTデバイス、AGV…アルミ加工はHILLTOP systemを最大限活用しつつ、他社とも協業しながら世の中に無い役立つモノを生み出せる企業に成長していきます」。加工業から開発型企業へ。次の進化を見据えている。

  • 鳴門屋
  • 株式会社山善

日本物流新聞最新号

2017年4月25日号
7〜9面
工具特集
10〜11面
特集溶接技術