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2017年3月10日号

グレシャムの法則

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 「地産地消」がいわれるようになったのは1980年代の半ばのことらしい。85年のプラザ合意でそれまで1ドル=240円台だった円ドルレートが円高へシフトし、3年ほどで120円台になった時代である。円が急激に強くなって、単純にいえば輸入品がそれまでの半値で買えるようになった。86 年からはGATTのウルグアイ・ラウンドが始まり、関税引き下げ、貿易自由化の動きが強まった。
 この時代に国内では円高と貿易自由化を背景に物流革新と価格破壊が進行した。大店法改正を追い風に全国展開するスーパーや資本力にモノをいわせた大企業が出店攻勢をかけた。円高と自由化の流れはそのあおりで地方経済が疲弊していく道程と軌を一にするものである。
 つまり、地産地消は、それが素晴らしいものであるからというよりもむしろ、どこかよそから安い品が大量に流入し、地産地消が危機に直面した時代だからこそ叫ばれた、ある意味で切ないスローガンなのである。
 ところで「グレシャムの法則」をご存知だろうか。Bad Money Drives Out Good。「悪貨は良貨を駆逐する」と訳される。16世紀の英国。それまで銀貨の純度は千分の925と決めてあったのだが、1542年にヘンリー八世が純銀含有量を減らしはじめ、改鋳がはじまって10年足らずのうちに規定量の6分の1に減らしてしまった。 品位の低い、生産コストの安い通貨を大量に発行すれば、王様はその分だけ儲かるからだ。
 見た目はわからないので国内では通用するが、外貨と交換するときにわかってしまうため、1558年にトーマス・グレシャムが貨幣の悪鋳をやめるよう進言し、その中に 「悪貨は良貨を駆逐する」というセリフがあったとされる。
 名目価値が同じなら実質価値の低い方の通貨が流通するようになる、という意味で使われる言葉であるが、この法則は、場合によっては通貨に限らず、いろいろなモノにもあてはまる普遍性のある法則のように思われるのだ。「場合」というのは、「質」にこだわらない、あるいは「質」が見えない、わからない「場合」である。
 「どこで買おうがニンジンはニンジン、TシャツはTシャツに変わりはない。ならば安い方がよかろう、それが経済効率というものだ」という認識である。
 したがって「地産地消」を考える時に大事なのは「名目価値」と「実質価値」の違いを見極める目、「質にこだわる」我々自身の価値観なのである。

  • 鳴門屋
  • 株式会社山善

日本物流新聞最新号

2017年3月10日号
7〜12面
モノづくり大特集