株式会社 明城
代表取締役 榊原 勝己 氏
愛知県安城市城ヶ入町団戸173-16
TEL0566−92−0233
純和風住宅の「説得力」、データで提示
気候風土にあう、三河材と土壁の家

住宅産業研究所の推計(05年度)によれば年間20棟以下の元請工務店は全国に約7.4万社。この5年間で約26%が廃業に追い込まれていった。後継者も少なく、大手ビルダーやハウスメーカーとの競合は年を追うごとに厳しい。地域の大工に家づくりを頼む人はどんどん減りつつある。
そんな中、愛知県安城市の工務店・明城では大工の技能を活かした木造住宅の「説得力」を模索し始めた。温度・湿度環境やVOC放散量の比較、強度実験、コスト差などの実証を行い、変わり始めた顧客ニーズに応えられる取り組みを始めている。「工務店は、新しい居場所探しを始めたばかりだ」という榊原社長に話を聞いた。
「土壁に瓦土ぶき屋根。昔ながらの作りの家が日本の気候風土に合う。一番いいに決まってるんだ――この説明では、今の若い奥様方には通用しません。大工がいくら肌で良さを実感していても、データで実証し、優れているところをはっきり示さなければ説得力を感じてもらえない」。明城の名物頑固親父、榊原勝己社長は言う。
05年の9月、1000万円の私財を投じ、日本で初めて純和風住宅の良さを示す実証実験を始めたのはこうした理由からだった。
榊原社長が建てたのは仕様が異なる3棟の実験棟。1号棟と2号棟には杉板や和型瓦土葺き屋根、木小舞と土壁などの天然素材だけを使用。3号棟には石膏ボードとグラスウール、ビニールクロス、平瓦、集成材を使用し、1年間以上温度・湿度環境とVOC放散量のデータなどを計測した。
これまでの測定によると、土壁の家の湿度は年間を通じて快適湿度帯(40〜60%)をほぼ保持。夏の日中は、土壁の家はほぼ外気温と同じで、人工素材棟の室内は土壁の家より約5℃高かった。
取材に訪れた2月中旬の昼下がりでは、人工素材の棟の室内は、自然素材の棟2つより約4〜5℃高く温かい一方、湿度は30%。乾燥状態だったからか自然素材の棟のほうが呼吸をしやすく感じた。また人口素材の棟は声が跳ね返って響き、会話に違和感が残るのが気になった。
「土壁の家は夏の暑さに対応できる家。冬場は室温こそ人工素材の家より低いが、乾燥が少ないため、インフルエンザ菌の活動を押さえ風邪もひきにくくなる」と榊原社長は言う。
今年6月 日に予定されている成果発表の講演会では、実験に参加した名古屋大学と静岡大学の研究グループによる1年半にわたる計測データ解析の結果が詳しく発表され、数値としての快適性がよりはっきり示される運び。現在は夜間エアコン運転による蓄熱性能の差などを計測中だ。
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創業41年になる明城の年商は約5.5億円、年間建築棟数は約14棟で坪単価は50〜70万円。同社の得意とする重厚な純和風住宅を求める中高年層の顧客が多く、「立派な家を」と依頼されることが多い。しかし、ここ数年、榊原社長は顧客の動きに変化を感じ始めていた。「昔ながらの100坪もあるような邸宅を建てる人が少なくなり、小規模の家を望む人が多くなった。ローコストビルダーの台頭も著しく、『家は買うもの』だという顧客層が目立って多くなった」
「作る家には作る客、売る家には買う客がくる。作る家には大工にもお客様にも感動があり喜びがある。俺は作る家しかやらない」
木の良さ、大工としての技能、技術を活かした家を作るという信念は堅い。しかしそれを貫くには合理性を重んじる30代顧客にも通用する説得力が必要と、改善の試みが始まった。
まず着手したのは徹底的なコスト見直し。明城独自の寸法に合わせた規格への製材、モルダー加工までを三河の製材工場との直取引により実施。標準化された部材はどこの現場でも使用でき、コストの大幅削減に貢献した。さらに車単位の仕入れにより運搬効率を上げたほか、室内壁・天井の化粧パネルを自社工場で作成。品質の統一と工期短縮も実現した。
一方で、現在標準採用とする地元材・三河材の破壊強度実験や、前述の温度、湿度室内環境などの実証実験により自然素材住宅の良さを客観的データとして提示。壁を用いず柱のみで大開口部を支えられる埋め建て柱工法「ラーメン工法」も独自に開発するなど、木材を活かす道を追求し続ける。
30代顧客のニーズが高い分譲住宅にも挑戦中だ。一昨年、三河材自然素材、土壁裏表、和型瓦土葺き屋根を使用し、化学のり接着剤の代わりにニカワを採用する自然素材住宅を坪50万〜55万円(外構工事込み)と比較的低コストで提案。3年かけ、安城市内で10区画を販売する計画で、これにより「低コストの三河自然素材住宅を若い顧客層にも広めていきたい」という。
今後は10億円までの売上高が目標。部材購入のスケールメリットが上がり、工場の稼働率が上がればいい家をより低コストで提供できるためだ。
「この競合時代の中で自分たちの居場所を作るには、大工が真心込めていい家を作り、それをユーザーに分かりやすく説明していかねばならん」と榊原社長。平均年齢 歳の若手大工社員18名を率い、檄を飛ばしながら次の道を模索し続けている。
〔写真説明:明城の施工例内観。株付き丸太など天然素材を活かす大工の技が随所にみられる。〕
