<
物流新聞トップへビルダー最前線 -28- 2007年5月10日号 ・1156号・12P
バックファイルご案内

株式会社 匠技建

取締役会長 渡辺一夫氏
東京都立川市幸町2-43-7、TEL042-534-1171

生産性の高さ、全国ビルダー2位

「行列ができる」ローコスト工務店

住宅

東京都東村山市で行なわれた「安くて良質な住宅を作る」都の実証実験プロジェクト。 実験には4グループが公募により選ばれたが、その一つで「木の香る家」を提案したのが、匠技建を代表とする5つの企業からなるグループだった。

「木の香る家」は、無垢材や珪藻土など自然素材をふんだんに使った住宅だ。竣工した東村山の実証実験住宅を回ると、自然の香りに包まれるという点で、文字通りこの住宅が抜きん出ていることがわかる。というより、率直に言って剥き出しの自然材に囲まれて暮らすイメージだ。

実証実験の提案では、自然材に加え、吹き抜け構造などにより自然の風、光を取りこめる構造も訴えた。また健康住宅であるだけでなく、がっしりした木組みによる大架構のなかで、竣工後、間取りを自由に変更できるように工夫を凝らした。施主はライフスタイルの変化や経済条件にあわせ、いわば「家族とともに成長する家」を持てることになるわけだ。

一方、この実験の鍵となるコストダウン策については、木材産地の工場(岩手県遠野)で高度な製材加工を行って現場に直送、現場の木工事を減らすとともに、中間流通カットの効果を創出した。

「木の香る家」は元々、現代計画研究所(実証実験で匠技建のグループに参画)が20年以上前から考案・提案しているもので、賛同する工務店らがネットワークを作り、全国で実績を上げている。

そういう意味で匠技建もネットワークの1メンバーであるのだが、「これに当社のオリジナリティを付加したい」と意欲的だ。 渡辺会長は「(実証実験のグループで)私どもが代表企業になったのは、実際の施工内容がそれなりに評価されたからでしょう」と謙遜口調で話しながら、現在は延床で約40坪が標準だが今後は狭いスペースでもスケルトン・インフィルを実現できる「木の香る家」を提案していきたいとした。「地元に近い東京都檜原村の製材を使うことも視野に入れている」そうだ。

もっとも、同社が「木の香る家」だけに力を入れているわけではない。 化粧っ気の無い自然の素材感を全面に出すことが、今の住宅シーンに合うかどうかということもある。

渡辺会長は言う。「最近、木の香る家のモデルハウスを見て絶賛、即決されたデザイナーのお客様がいらっしゃいました。無垢材だから反れるし、割れますよと話すと、『割れるのがいいんじゃないか、これこそふるいつきたく家だ』と最大の賛辞でしたね(笑)。でも一般的には好みは分かれます。冷静に見て木の香る家が当社の実績棟数の1割をこえることは難しいでしょうね」。

都の実証実験に参加して「地域で知名度が上がるなど間接的効果を実感する」同社は今、CS(顧客満足)、CD(顧客歓喜)、CT(顧客信頼)の獲得に向けて社内体制を強化中だ。強引な売り込み営業は一切行なわず、現地見学会で「見ていただく」を基調に、住まいのプロとしての客観的アドバイスを提供することでファン層拡大を狙う。

またOB客と同社社員の親睦の場として「住まいる会」を運営しており、新年会や夏のバーベキューパーティには100名近いOB客が参加するそうだ。地域に密着し、顧客と長い付き合いを行なうことが同社の特徴でもある。

住宅のバリエーションも売れ筋の「やすらぎの家」(一般在来にウレタン吹付断熱工法を施し断熱性を追求したタイプ)を中心に、スーパーウォール工法や、ソーラーサーキット工法なども取り入れ、価格、好みで幅広いニーズを満たす。またローコスト住宅研究会(長野県・エルハウス主宰)に参加するなどコスト対策の実践も着々進行中だ。 創業者の渡辺会長は、昨秋、満60歳を迎えたのを機に社長のポストを38歳の血縁の無い宮崎昭人氏に譲った。

実は宮崎氏は、渡辺会長が週一回、建築専門学校の教壇に建っていた頃の教え子。自社に招き入れ、社長に育てた。「人の交流を重視し、人を、経営者を育てるというのが創業時からの私のミッションでした」と渡辺氏は話し、今はもう若手社長にすべて任せていると表情を和らげる。

創業者の培ったものをどう受け継ぐか。新しい芽をどう育てるか。 30代の若き現社長の舵取りが問われるところでもある。

*写真*無垢材をふんだんに使った「木の香る家」は同社の顔に。こういう住宅でないと、というファンがつく。