物流新聞トップへビルダー最前線 -30- 2007年6月10日号 ・1158・10P
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株式会社 ウッドビルド

代表取締役 寺島今朝成 氏
長野県長野市若穂綿内364-4、TEL.026-268-5588

県内のこだわり客が集中

良質の無垢材用いて作る、スローな家

住宅

木造軸組みの注文住宅を30年以上続けるなかで、在来の欠点を実感させられた。他方、省エネの観点から国が推奨する高断熱・高気密住宅は、窒息状態を強いる不健康な住宅に映った。
寺島今朝成社長は今、そのように振り返る。
 自ら考案したウッドビルド(WB)工法によって、在来と高断熱高気密住宅の優れた面だけを残す家づくりを全国に広げ、さらに、国を説得して日本の伝統的住宅文化を再生させようと目論むのが、寺島社長率いる長野県のウッドビルドである。同社が通気断熱WB工法を考案したのはちょうど10年前。実証実験を繰り返し翌年からは同工法の会員を募集した。現在、WB工法を取り入れる工務店は全国で570余社、寺島社長は「来年には1000社へ増やしたい」と意気込む。地域の工務店だった同社は、2年ほど前に施工を辞めWB工法の普及販売活動に専念。昨年は6億円を投じ巨大なWB工法体感施設を建てた。
 WB工法のポイントは大きく2つある。一つが「呼吸する(透湿透過させる)壁」だ。一般的なビニルクロスを透湿クロスに変えることで、C値(隙間相当面積の値)を高水準に保ちながら室内の臭い、湿気、化学物質などを壁の外の通気層に排出できるようにした。2つめが「自然力による通気制御で、夏涼しく、冬暖かい」を実現したことだろう。これには金属の熱変位を利用するという斬新なアイデアが活きた。
 述の透湿壁の向こう側には、透湿壁と断熱層の間を通る通気層があるのだが、この通気層の複数の換気口(床下や屋根部など)に、温度によって自動開閉を行なう金属の形状記憶式装置をつけたのだ。気温の高い夏は金属の熱変化によって換気口が開き、通気層の熱を外に逃がす。逆に冬場は閉じて通気層が保温層の役割を果たす。これだと夏涼しく冬暖かい。
寺島社長は熱っぽく話す。
 「家にセーターを着せたり脱がしたりする状態を、自然に作るシステムなんです。高断熱高気密住宅は確かに冬暖かいが、湿気を閉じ込めてしまっているため結露が出る、蒸れて腐る、化学物質だって室内にこもってしまう。一方で在来住宅は通気性に優れるが冬寒いという欠点があった。WBによって、素晴らしい日本の建築文化である在来工法の住宅が、断熱性能の高い健康省エネ住宅になるんです」。

国を動かす

WB工法を全国に広めるなか、同社では性能測定を大学等の協力を得て徹底的に行なってきた。 地元信州大との検証実験ではWB住宅におけるホルムアルデヒドの量が厚労省指針値の2〜10分の1に過ぎないことを証明。また地元世帯を対象にしたモニター調査では、冬の灯油使用量がWB住宅において圧倒的に少ないことも分かったという。
しかしながら「実測値は提示できても、そうできたことのメカニズムを証明するのは難しく、苦労している」(同)。
象徴的なのが換気認定だった。現在の住宅は「24時間機械換気」が義務付けられているが、同社では「WB工法では透湿透過壁で換気できる」とし、大臣認定を得るべく換気量が十分であることのデータを国に提示した。ところが「測定値は結局、出口評価に過ぎない。今回の法律は入口評価であり、測定結果は法律外のこと」そう、受けあってもらえなかったという。
そこで透湿透過性能に関するより詳細な検証データを実験から構築、さらに5万4000人の署名も集め再三再四、国と交渉した。結果、昨年8月、国がWBの透過効果について「1時間に0.5s回以上の換気に相当する」と認め、機械換気に頼らない工法として唯一、WB工法が大臣認定を勝ち取った。これは住宅業界において衝撃的なトピックでもあった。
寺島社長は力を込め「透過性能は認められたが、まだWBの透湿効果は認められておらず、引き続き国に働きかけていく」と話す。難しいメカニズムの証明は信州大学とのタイアップで行なう方向。新連携制度の利用も視野に入れるそうだ。先頃は「日本建築文化を守る会」も立ち上げた。同社では伝統工法と現代技術の融合に想いを馳せる。ビジネスというより、運動ですね。そう問うと「伝統的な日本の住宅が持つ機能の素晴らしさを私たちで証明したい。でないと、日本の住宅は本当におかしな方向に行ってしまう」。