現場力が生んだ新発想の「ブローチ加工装置」
「新連携」に認定、将来の夢膨らます
富浜精工[精密歯車加工] 山梨県大月市
日本の町工場にはモノづくりを支える貴重な技術資源が豊富にあるという―。 精密歯車加工を中心に小ロットの部品加工を約40年。山梨県にある社員9名の町工場、富浜精工は技術と信頼性、フットワークの軽さを身上に長年コツコツとモノを作ってきた。 そんな同社が6年前、汎用旋盤に取り付けるだけで「ブローチ、キー溝加工」ができる新発想の装置を開発、「キーマン(商品名)」の名で思い切って工作機械のマーケットに問うた。
装置は、旋盤の回転運動を前後直線運動に変えて「引き抜き力」を導き、ブローチ刃によるワンアクションでキー溝、スプライン、D穴などの内径加工を行なえるようにしたもの。機械加工を知悉する志村社長のアイデアでまずは自社用装置として開発、「この装置によって主に外注に頼っていた最終工程のキー溝加工が自社でラクに加工できるようになりました。ならば、と一般市場に売り込むことに決めたのです」(志村賢二専務)。
当初の宣伝文句は「お手持ちの汎用旋盤がブローチ盤になります」―というものだった。要は、ほとんどの加工工場にある汎用旋盤を有効活用しようとの提案だった。 市場の関心は得られたが、販売実績を語るまでにはいかなかった。精度面、生産性などでもっとつめる必要を痛感した。そう志村専務は言う。
特殊内径加工を研究
ここからが「何でも作ってみせる」町工場の面目躍如たるところだ。 同社は、キーマンに改良を加え、またシーケンサ制御やブローチガイドを作り、簡易盤ブローチ機械として売り出していた装置を、本格的な高精度ブローチ装置に変えてみせた。切削理論を研究、特殊内径加工研究会という組織を立ち上げ、さらに「学」の協力も得ての取り組みだった。
とりわけ刃物に常に密着して刃物の倒れ精度を向上させる「ブローチガイド」(=写真)が高精度化に貢献した。志村専務は「倒れ精度は5ミクロン以下を保ちます。それに旋盤をベースにした装置の構造上からも、刃物とワークが『芯対芯』の関係にあるため、ブローチ盤以上に精度が出しやすいんです」などと話す。 生産性も自慢。ワイヤカットでスプライン加工を行なうケースはよくあるが、仮に100個加工する場合、ワイヤだと2週間前後かかる。キーマンなら2時間程度だ。
この春には、中小企業新事業活動促進法の「新連携」として山梨県で初めて認定を受け、地場のブローチ工具メーカーとタイアップした装置・刃物の一体提供なども試みている。 志村社長は「35年間加工の仕事に専念したあと、この6年はキーマンの売り込みにかけるようになった。35年と6年を秤にかければ6年のほうが重いんですよ」といって微笑した。ブローチ加工の普及事業、メーカーへの完全脱皮と夢を膨らませている。
