株式会社 安成工務店
代表取締役 安成 信次 氏
下関市綾羅木新町3−7−1、TEL0832−52−2419
工務店から始まる、地域循環・環境共生
断熱材原材料の古紙回収NPOまで設立
先代から現職を継いだ昭和63年当時は「普通の工務店だった」(安成社長)という安成工務店を、今日までの20年で山口ナンバーワンの建設業者にまで育てた。コア事業はOMソーラーと国産材活用による環境共生型住宅の供給。一方で建築・建設にまつわる諸事業を連携しつつ発展させ、この建設不況の中で就任当初14億円だった年商を、06年度には同社単体で85億円に、グループ5社で132・6億円にまで押し上げた強力な経営手腕の持ち主だ。その事業展開と、地域工務店から始まる地域循環と環境共生の事例を2回にわたって紹介する。
安成工務店の戸建供給棟数は07年度12月期見込みで141棟。全棟が新聞古紙を原料とした断熱材セルロースファイバーを採用し、5〜8割がOMソーラーハウスによる環境共生住宅という高実績をたたき出している。
太陽熱を含ませた空気を家の中で循環させ、その熱で給湯・暖房と換気を行うOMソーラーハウスのCO2削減効果は、「1戸平均で年間約1トン」(安成社長)。累計800戸を供給してきた同社には「年間800トンのCO2削減に貢献」(同)の自負があり、「セルロースファイバーによる断熱効果やリサイクル効果、製造時のCO2排出量カット、地域産材の活用による輸送時のC
O2カット、雨水利用などを加味した指標が定量的に出せれば、もっと環境負荷低減効果は大きい」と言う。
安成社長によれば「業界でよく聞く、『環境にこだわる消費者がいないから環境共生に取り組まない』という論法は、全くもって逆」。
「本気で取り組み、情報を発信し続ければ感性の高い顧客層が集まる。時代に必要な正しい会社は、必ず評価されるはずです」―自然に強まる口調はゆるぎ無い信念の表れであり、これまでの道程で得てきた顧客からの強い支持も窺える。
OMからデコス、NPO設立まで
安成社長が環境共生型住宅に取り組み始めたのは、社長就任当初である32歳の頃。OMソーラーとの出会いがスタートだった。それまではデザイン・機能・コストでプレハブメーカーと対抗していたというが、「何かが違う。もっと地域工務店ならではの家づくりができるはずだと悩んでいた」(同)。
そんな時、OMソーラーの、気象衛星アメダスで計測した全国30kmメッシュの地点の風向・風速・日射量などの気象データを分析して各地域に最適の温熱環境をデザインする独自の家づくりを知り、「これだ!」とOMソーラー協会に入会。研究を始めるが、「当時はシミュレーションどおりの結果がでなかった」。
原因は窓からの断熱欠損。「ならば」と、壁体内結露を起こさず完全に断熱できる手法を追求してたどり着いたのが、アメリカで断熱市場の3割にまで普及している新聞古紙を使った断熱材・セルロースファイバーだった。
採用当初、社員たちからは反対の声もあった。グラスウールによる断熱に比べて3倍の断熱費用がかかったためで「普段はコスト削減を意識しろというのに」と不満が挙がったという。その局面をまず打開したのは、施工する大工たちからの「冬の温かさが断然違う」の声。気温・室温の実測調査でもシミュレーションどおりの結果が出ただけでなく、施主からは「音が響かない」「寒さ暑さが確実に和らいだ」と好評だった。
そこからの事業展開がすごい。「セルロースファイバーは燃やしても有害物質を発生させない。ベーパーバリアがいらず、木材の透湿性を生かした心地よい住環境をつくれる環境共生住宅に最高の工法だ」と確信を持ち、平成6年から全棟標準採用に踏み切るだけでなく関連会社「デコス」を設立。「断熱性能の確保は施工精度あってこそ」(社長)の信念のもと、施工法を「デコスドライ工法」として全国に施工代理店・認定店を設け普及した。後に新省エネ基準、次世代省エネ基準認定を取得する一方、同社で断熱材自体も販売するようになり、供給棟数600棟を超えた平成17年には山口県菊川町に製造工場を設立した。売れ行きはというと、「年間約1・5倍の売上高増で、今年度には2600棟での採用を見込む」ほどだ。
地元での新聞古紙回収の仕組みもユニークだ。工場がある山口県菊川町では行政と安成工務店が共同して「NPO法人e小日本(えこにっぽん)きくがわ」を設立。家庭の新聞古紙を自治会や子ども会、老人クラブが回収し、「デコス」工場に集める。その対価として住民は地元商店や公共施設で利用できる地域通貨「エコロ」を受け取るのだという。
工場設立当時、下関市との合併を控えた菊川町では、ゴミ分別レベルが高く、行政では合併によるモラル低下を憂慮していたという。地元商店街もさびれつつあり、町全体が活気を失いつつあった。だからこそ、行政も住民のエコ意識向上と「エコロ」による地元商店街活性化を実現する仕組みとしてNPO設立を希望した。
こうした「地元の課題解決を行政と共に試行する」(社長)という安成の姿勢と取り組みに対する評価は、今年4月、日本初の木質ペレットによる地域集中冷暖房・給湯システムの実証実験を同社分譲地「安岡エコタウン」においてNEDO・山口県から委託される根幹ともなった(次号では「安岡エコタウン」での、実証実験と最新エコ設備、地域連携の取り組みを中心に紹介)。
