株式会社 ケイ・エル ハウジング
代表取締役 河越 眞介 氏
神戸市北区谷上西町14-7、TEL078-582-4400
健康・省エネで「選ばれる」工務店に
3年で脱下請け、さらに広がる紹介の輪
「育ててきた縁が、点から線になり、面へと展開しつつある」―今年、創業100周年を迎えたケイ・エル ハウジングの河越社長は言う。健康省エネ住宅の品質を強化しつつ全方位でつないだ縁は、地域住民をはじめ、同業者、国の第一線研究者、行政、異業種の経営者にまでも及び、07年年間建築棟数48棟のうち7割以上を紹介による受注が占めるようになった。また、4年半ほど前から脱下請け化に取り組み、3年でほぼ100%の元請化に成功。他社でうずまくコスト競争を尻目に、「値引きはゼロ。むしろ平均単価は上昇傾向で、健康・省エネの強化を求める施主が増えた」そうだ。これまでの軌跡と人気のわけを聞いた。
創業は明治40年。鳥取県と兵庫県の県境にある但馬地方の山林経営家だった。後に製材所を経て戦後の住宅供給ラッシュを背景に材木商としても発展し、高度成長期以後は材料供給にあわせて工務も行うようになった。これまでに下請・元請として約3200棟以上の建築実績がある。
元請としての受注が増え始めたのは、阪神淡路大震災後あたりから。ハウスメーカーの工務部社員、建築士から直接、「自宅を建ててくれ」と頼まれることが急増したそうだ。「家の良し悪しは大工次第。それを嫌というほど知っているプロに選ばれたのは、下請け工事でも特に難しい物件を任されてきた実績を認めてもらったから」。河越社長は誇らしげな笑みをのぞかせる。こうしてプロの欲しがる家から始まった元請工事は、紹介受注を少しずつに増加させていった。
現在、健康省エネ住宅を得意とする同社には、本やネットで工法を調べつくしたお客が来ることが多いという。ただ、「一般の方の知識はやはり机上の空論」と河越社長。だからこそ初回はほぼ社長自らも顧客に接し、工法の組み合わせによる効果を熱心に語って聞かせ、工法別の見積もりにも応える。より高度な質問には最先端の研究者に質問を投げかけ、「施主さんの悩みと疑問を、腑に落とす」のだとか。
一方で、「私の言うことを鵜呑みにしては、知恵が磨かれないから」と、様々な勉強会への参加も促すなど、出会いから契約までには2〜3年はかかる。気の長い話に思えるが、「施主と私たちが共通の価値観で家づくりができるようになってこそ、本当に満足できる家づくりができる」。そうした施主の満足感の高さが、紹介比率を高められる競争力の源泉だ。
■Q値計算で省エネ効果を明確に
自社の能力向上にも余念がない。たとえば性能表示の採用は、草案の段階から研究会に参加し、兵庫県の注文住宅会社で一番、評価書の取得が速かった。しかも「温熱環境の評価はQ値(熱損失係数)計算。これならば家の方位、断熱材の種類と厚さ、窓の方角、種類など、型式認定によるものでは具体化されない数値まで家ごとのケースではじき出せるので、実測値に限りなく近い光熱費計算も可能」と河越社長は言い、「もし10万円とでたらね。大体のお客さんがそれ以下にしようと、頑張るんですよ」とにっこり。より具体的な目標値が、省エネへの意欲を高めるのだという。
ただ、省エネになるからといって快適性を損なうわけではない。同社では医学・建築の両側面から居住性能を評価するべく、シックハウスを考える会と共同研究を実施しており、その報告書によると(07年1、2月に実施)、在来型では、暖房をきかせた居室とそれ以外の場所の室温差が最大18℃もあったのに比べ、同社のモデル住宅の室温差は最大でも5℃以下、しかも平均室温は18〜20℃だった。全館換気空調システムの採用と、気密・断熱性の高さが奏功した結果だ。
健康への配慮も特筆すべきで、ホルムアルデヒド放散値は全棟で測定。平均値は厚生労働省指針値の約半分になるという。アトピーの家族がいる施主の場合はより厳密で、「珪藻土や漆喰、ヒノキなど、材の違いによってアレルギーが出ないかどうか、OB客の家に数時間いてもらい、反応をみてから施工する」ほど。いわゆる「健康素材」だから大丈夫、に留まらない徹底した方針は、最新の知見報告をつぶさに調べる研究熱心さと「安心・安全な住まいを提供したい」の信念が根底にある。
■チームで満足度・実力アップ
また同社では04年に取り組みを始めてからわずか3年でほぼ100%元請化を成功したのだが、それには04年の兵庫県経営革新法の認定も大きく、「PDCA(プラン・ドゥ・チェック・アクション)サイクルに基づき、経営品質の向上に取り組んできた」という。現在も毎年、課題を抽出し改革に取り組んでいるのだが、中でも力を入れているのは「営業、設計、工務のチーム制」だ。
「設計時からチームであたることで、社内の情報伝達がスムーズになり施主さんの安心感がアップするだけでなく、高低差が大きい土地の場合の設計提案を工務に相談するなど、個別事情ごとのノウハウが蓄積される」と河越社長。チームのリーダーも別に設け、「いずれ希望があればチームごとに独立し、グループ会社化していきたい」の展望がある。
また100周年を記念し、昨年末には見込み客とその紹介者双方にプレゼントする「ケイ・エル商品券」を企画したそう。レストランやディナークルーズなど、様々な場所で使えるもので、「すでに受注につながりつつあります。異業種交流会で知り合った社長方に協力を依頼したのですが、こうした絆を様々な場所で築けてきたことが、うちの大きな力になってきたのを感じますね」と河越社長。今後も絆にこだわり、紹介比率をさらに上げ、「品質・満足度で選ばれる工務店を目指す」という。
