物流新聞トップへトピックス2008年01月01日号 ・1171・12P
たくせい
1面掲載

「隗(かい)より始めよ」という中国の格言(戦国策・燕策)がある。「他人に言う前に、言い出した自分がまず、やれ」という意味。知っている人も多いだろう▼先ごろ、古本屋を覗いて色々手にした本の中で、この格言の本来の意味が「一流の人間を求めるなら、まず二流の人間を用い、優遇すべき」というようなことだと始めて知った▼燕(えん)の昭王が賢者を招こうとした時、臣の郭隗が「自分のようなさほどでない人間を優遇すれば自ずと自分以上の賢者が集まってくる」と進言した故事が出だそうだ▼われわれの知る今の格言はずい分といわないまでも、元の意味を相当に敷衍(ふえん)している。だったら、仮に中の「人間」をモノや事象に置き換えるとどうなるだろう▼「一流」を求め、一流のモノ」をつくるには、気張ったり、片意地張ったり、形式ばったり、格好つけたりしないで、足元のモノを一つひとつ地道に、正直に片付け、積み上げていけば、自ずと「一流」に届き、信用も評価も得られるという新解釈もできる▼昨年、「偽装」が世の中の信頼というかけがえのない空気を汚し、胸を張ってまっとうなことをしようとする人や企業ですら息苦しさを覚えるようになった▼悲しいが、その壊れかけた世の、新しい年がスタートした。こうなれば急いで一流を取り戻そうとせず、一歩一歩足元を固め、小さな信頼を積み上げ、強固な地盤を築いて行くしかない。「まず隗より始めよ」だ。

取材現場から
12面掲載

CO2が「金」を生む

昨年来、取材活動の中で「CO2」の概念と位置づけが、脳内でどんどん変化していくのを感じている。海面上昇により沈み行く南洋の島国・ツバルや一触即発の水資源紛争が起こりそうなアフリカにとってはすでに「殺人ガス」に近い。だが、経済市場では「削減と削減アピールが金を生み出す気体」でもあると意識し始めた▼シャープの液晶工場・亀山工場は最先端のCO2排出量低減策を前面に押し出したアピール戦略の中で「亀山ブランド」を確立し薄型テレビ戦争を頭一つ、抜け出ようとしている。一方、「PDPは輝度の制御が画質のキモ。一定放映時間内全体で見れば消費電力量の低さは液晶にひけをとらないがカタログ表示では、設置時の関係で最高輝度の状態で、消費電力量が比較的大きい」(日立製作所主査)。欧州で進む環境配慮設計指針(EuP指令)の消費電力基準を決めるに当たり、大変な苦戦を強いられているという。この戦争に負ければ、欧州市場からPDPは消えざるをえない▼こうした戦いは中小にも広がり、今後、CO2削減に積極的に乗り出せない部品メーカーも輸出を制限される可能性が高いし、逆に先にアピールできれば市場を勝ち抜く鍵になる。さらに、日本には今年からスタートした京都議定書約束期間の目標を達成するという義務もある。目標は90年比6%減だが06年時点で同比6・4%増。「2050年にCO2排出量50%減」の大目標だけは打ち出した政府の抜本的対策はまだ見えにくいが、動き始めた排出量取引制度の検討も含め、「全企業がCO2を資源として意識し対策を進めるべき時」(東京都環境局)を迎えているようだ。

物流新聞トップへトピックス2008年01月25日号 ・1172・28P
たくせい
1面掲載

なんとも腹立たしい。いや、何事もできれば穏便に。だからこのコーナーも提案か不満事ならこれまで「ならないものか」とか「(そう)あってほしい」程度の意見に押しとどめてきた▼しかしこのたびの独立行政法人の整理合理化計画(独法改革)の、政府の決着には失望だ。改革に抵抗した閣僚のご都合主義もさることながら政権が変わらなければなるものもならない、今、そんな気になっている▼そもそもこの改革はなぜもちあがったのか。財政難を理由に見放されている国民がたくさんいるのに毎年、3兆5千億円の税金をつぎ込んでいる独法。この中の「ムダを削り、必要なところに充当」ではなかったか▼もちろん公共、公益の面から存続が望ましい組織も多く、官僚の天下りも全面否定するつもりはない。優れた官僚もいる。理があるなしは別に首がかかるから抵抗もあるだろう▼しかし垂涎の大臣の椅子を差し出されたからといって「国民に選ばれた政治家」がもっともらしく官僚の代弁者になってどんな仕事ができるというのか▼独法は省庁再編の中で分離・独立した組織。役割を終えたり、改革が必要なものも数多くあり、存続させれば人と組織にムダな税金をつぎ込まなければならないことは重々理解しているはず▼それなのに政治家として話ができないとは…。またそれを中途半端な指示で結果擁護してしまった首相。ということは、このままの体制では改革は無理ということ。だったら政治のすべてを一新、そういう結論になる。

取材現場から
28面掲載

社会を動かす「子ども力」

住宅にまつわる最新の環境工法を生み出した研究家から、こんな打ち明け話を聞いたことがある。「高校生の娘にね、『偽善者だ』って言われてるんですよ。『環境が大事だ大事だって人に言うけど、自動車持ってるじゃない』ってね。ノーマイカーはじめようかな…バスにすりゃいけるんだけど、ちょっと大変だしな…」。極端な例かもしれないが、子どもの威力を表す話としてよく覚えている▼住宅の耐震化でも、子どもの威力が注目されはじめた。今世紀前半に大地震が頻発し、大被害がすることが予想されている。約150万円で耐震化が可能な安価な工法や補助金制度、補助税制も整った。しかし、住宅の耐震化どころか家具の固定すら進まない。「本音は面倒くさいから」と、名古屋大学の福和信夫教授。「頭で納得して、腑に落ちて、自分の問題としてとらえられてはじめて人は動く」という。子どもでも分かることを大人が何故しないのか。自分の子どもに突きつけられて初めて「動かなければ」に変る。実際、名古屋地域では小学校での防災教育が進んだところから地域の防災対策が進んだ事例もあるそうだ▼「大学生のインターンシップが社員の活力をアップさせた」という話も聞いた。大学生を子どもといっていいかは微妙だが、受け入れ企業曰く「お金という目的がないのにもかかわらず、熱心に働く姿勢に刺激される」。子どもの素直な目と行動が、「まあ、仕方ない」「皆がそうだから」で硬直した空気を一変させるのだろう。

物流新聞トップへトピックス2008年02月10日号 ・1173・12P
たくせい
1面掲載

 「小企業」を「零細企業」、「営業員」を「モノ売り」、「僧侶」を「ぼうず」、人の気質や気性の表現で「吝嗇(りんしょく)」を「ケチ」、「緻密」を「細かい」、「几帳面」を「四角四面」▼微妙に意味や位置づけが違うが、他からこう呼ばれたり表現されるとあまりいい気がしないものだ。蔑みや何らかの意図を感じる▼今、「食」による被害が広がり大問題になっている中国製冷凍ギョーザ中毒事件で、さすがだなと思うのは一般新聞各紙の報道における冷静な表現である▼当たり前といえば当たり前だが、何事につけ報道姿勢に疑問を感じるある種の新聞や雑誌の節操、品性のない表現をみると一層そうした思いを強くする。その最たる表現が「毒入りギョーザ」。報道よりも喧伝である▼といっても農薬混入によって中毒者が出、まかり間違えばとてつもなく多くの日本人や日本での生活者が被害を被ったかもしれない中国製冷凍ギョーザのずさんで無責任な製造・管理は許せない問題だ▼その上、一層、食の輸入に頼らざるを得ない日本の将来を考えると原因を徹底究明し、対策を求めなければならないし、仮にその過程で、国対国レベルの問題に発展しても、通すべきは通す強い姿勢も必要だ▼が、相手が意図的詐術を弄したものでないかぎり(現状は不明確)節度ある言動は当然だし、またそうであってこそ相互信頼による対策の知恵が生まれる▼それなのに真実の報道を通じ平和的解決の一翼を担うマスコミが要らぬ喧嘩を煽ってどうするというのか。報道の品性を省みてほしい。

取材現場から
12面掲載

研究成果を無に帰すな

これは本当なのか?と、目と耳を疑った。建材の防耐火性能偽装問題を受け、国交省が1月末に発表した一斉調査の結果、不正発覚が45社・98件にも上った ことだ。不正報告の中にYKKAP、日本軽金属など、業界トップクラスの企業が数多く含まれていたことにも驚いたが、「認定書に含まれていない塗装や素材 を用い、大臣認定品として出荷」「難燃剤の使用量を5分の1にした」という内容の酷さにもがっくりきた▼すでに原因究明報告が出されているニチアス、東洋 ゴムの事例でみると、「絶対に認定を取得しなければならないという重圧の中、法令遵守意識を欠如したまま申請と異なる試験体での不正受験に至った」 「チェック機能がなかった」(ニチアス)、「製品開発の遅れが市場参入の障壁になるとの判断が働いた」(東洋ゴム)と、厳しい開発競争の中でのコンプライ アンス欠如が目立つ。また、評価機関(ベターリビング)では試験体すり替えの対応策もなかった。「まさかないだろう」という性善説に立った検査体制が業界 を揺るがす大問題発生につながった事例は、耐震偽装を思い出させる▼そもそも、防耐火や耐震性能の認定がなぜ、必要なのか。空襲、大地震を幾度も経験し、 多くの被害があった日本だからこそではないのか。実務者・研究者・開発者の地道な努力の末に、「耐火」「耐震」を実証し、ようやく克服してきた歴史と「大 臣認定」への信用を踏みにじる気なのか、と言いたい。実直に、粘り強く困難な仕事に身を投じる研究者・実務者の顔を思えば、莫大な費用を投じて改修し、 「ごめんなさい、もうしません。今度から対処します」で、一件落着とはいかない怒りをこの問題に感じる。