物流新聞トップへビルダー最前線  2008年05月30日号 ・1180・28P

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切る、削る、曲げる、つなぐ…20余名で高品質に

材料を設計・加工し、完成まで
(有)村松鉄工所[産業機械製作] 静岡県富士市
JR新富士駅から緩やかな上り坂を何度か曲がりながらタクシーで走ること20分ほど。あたりはみかん畑や茶畑が点在し、すでに富士山の裾野に入っていることを実感する。  そんな場所に、小さくて人間くさい工場、村松鉄工所があった。  工場の正面扉を開くと、オークマのNCフライス盤が複数台目に飛び込む。その左手にはNC旋盤、右方向には切削型の工作機械ではなく、バンドソー、レーザー加工機、プレスブレーキなどが並び、中央の一番奥には金属の板材が山積みされていた。  一体なんの工場だろうと、ここを訪ねる人の多くが思うそうだ。だがそれも、工場内の右手奥を占める「組立てスペース」に足を踏み入れると、疑問は氷解する。  そう、この工場では、さまざまな素材・材料を購入した後、切ったり削ったり、あるいは曲げたり溶接したりして最終の組立てまでを行なっている。  要は、こうこうこういう機械が欲しいと同社に頼めば、設計も含め、ゼロからオーダーメードの完成機を作り出してみせるわけだ。社員22名の小さな町工場ながら、担当別に多種の加工を高レベルでこなし、顧客には医療機器をはじめ産業機械、食品機械の著名企業を抱える。  大手の工場で使う特殊な機械や装置が―失礼ながら―こういう場で一手に作られていることに少々驚く。 人の技と工夫、 最新技術をマッチ  同社の村松隆社長は現在69歳。26歳のときに独立して同社を立ち上げ、40数年が過ぎた。  「最初は製缶加工から入って板金に拡げ、やがて工作機械を導入し、50歳にしてNCを学んだ(笑)。それから設計も行なうようになった。医療用などの機械を一品一品仕上げていく今の事業スタイルが定着したのは、この10年ぐらいかな」と言う。ちなみに約43年の社業のなかで、仕事がなくて困ったことは一度もないそうだ。「毎日2時間の残業が過去からずっと続いている。営業なしの自然体でやってきたから、派手さもありませんが」。  社員には「心を込めて作れ」と繰り返す。精度がよく、見た目にもよい出来にするには「気持ちが必要」と社長は思っている。  そんな同社の強みは、板金から部品加工、設計から製作までをこなすなかで、幅広くノウハウを蓄積したことだろう。意欲的に掴み取ったノウハウは、さらに工夫や創造力を生み、製造・生産ラインを進化させる。工場内をつぶさに見て回ると、まさにノウハウや工夫のかたまりが、そこかしこにあった。  一例として3台のNCフライス盤。詳細はマル秘だが、どれも機械テーブルのY方向に移動可能なゲージが取り付けてある。ゲージのメモリはNCに組み込まれていて、任意の位置のワークにゲージの端を密着させると「NCが原点を読み込み、削り出しを早くできる」仕組みだ。  また、治具も市販にないものはどんどん自社で作る。工具ホルダーやコレットなどもそう。「こういうものがあれば便利だ」と気づく能力と、それを作る能力、そして意欲が強いからだろう。「段取りを良くするための努力は惜しまない」という。  「昔の技術に、NCが代表する今の技術を上乗せしていきたい」と語る村松社長は、今も現場で日々フライス盤を操り、汗をかいて仕事する。  「最近の若い人は?」と聞くと、「難しい仕事を与えると逃げる子が増えた。根性がないかな。とにかく自分からやろうとする前向きさがこの仕事には大事だと思うよ」―ベテランの職人顔でそう返って来た。