物流新聞トップへビルダー最前線 -51- 2008年09月30日号 ・1188・36P

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株式会社 なんば建築工房 

代表取締役 難波恭一郎 氏
岡山県倉敷市児島上の町1-11-44、086-472-4426

伝統を生かす、現代技術の快適性

「土壁プラス外断熱」の性能、産学で研究へ

 

 倉敷に伝わる伝統技術を芯に据え、卓越した職人技で地元の賞賛を集めてきたなんば建築工房。4代目となる難波恭一郎社長は、その中心に職人魂を貫きつつ、断熱・気密といった現代技術の応用、またその検証に余念がない。近年では土壁と外断熱を組合わせた工法の快適性・省エネ性を科学的に実証するべく某大学と共同研究をスタートさせるところで、そうした「数値として表せる家づくり」が地域工務店の大きな武器になるという。前回に引き続き、難波社長に話を聞いた。

 難波社長が修業先から戻り、家業を継いだのは30歳のころ。社長を慕う職人たちが前職からついてきてはいたものの、「仕事が一つもなかった」と社長は振り返る。
  「職人たちを遊ばせるわけにはいきませんから、少しの修繕でもやらせてくださいと、とにかく各家を回って仕事を探しました。ただ、下請けはしなかった。当時は下請け仕事で活気が出ている会社もありましたが、私は自分で設計して家を建てたかったですから。となると、若い者が勝てるのは、情熱と単価だけでしょう? もう、ほぼ原価と手間賃だけの状態で(笑)、歯を食いしばって過ごす時期でした」
  流れが大きく変わったのは、35歳のころに入札を勝ち抜いた地元菩提寺・由加山蓮台寺八角堂の仕事から。屋根の頂点から頂点へ、八つの緩やかな弧を描く垂木は、弧の位置によって微妙に断面が変化しなければ、美しく収まらない。その寸法を差し金一本で測り、自らの頭で計算して墨出しをする作業は複雑を極めたそうだが「加工した垂木が弧の形にぴたりとはまったその時、『何でもやれる』の自信がついた」と難波社長。施工技術の高さが周囲に認められるきっかけにもなり、これ以降、受注も順調に増加していったそうだ。

現代技術と伝統の融合
  「伝統工法には、古来より受け継がれた知恵が凝縮されている。建築の基本だ」と難波社長は言う。たとえば古い蔵にみられる「置き屋根」。小屋組みの上に土を載せ、漆喰でその上を固めた上に瓦をのせる二重構造になっており、通気層から雨水や屋根が受ける膨大な熱量が抜けていく仕組み。熱気や水分が自然に抜けるので室内は真夏もひんやり涼しく過ごせるというわけだ。
  その工法を、なんばでは現代技術で応用する。外張り断熱工法で、置き屋根と同様に屋根を二重通気構造にするのが基本。こうした応用は、約15年前、住宅技術評論家の南雄三氏との出会いがきっかけだったそうだ。「戸を開ければ光と風が抜けていき、閉めれば冷暖房の熱を逃がさず快適な温熱環境が得られる」―高気密・高断熱の力が、なんばの家をより快適で、コストもかかりにくいものに変えていった。
  その中でも、「これまで建築をやってきた中で一番」と難波社長が推すのが「土壁プラス外張り断熱」の工法。熱を溜め込み緩やかに放熱する土の性質は、夏はクーラーをかければいつまでも涼しく、冬は暖房の熱気をじんわりと放散し続ける。さらに外張り断熱ボードをプラスすることで、壁内の自然な通気と室内の蓄熱効果が高まる仕組みだ。
  実際に同社施工物件で測定した数値では、約40坪の2階建ての建物で、冬季晴天時、無暖房で朝6時の室温は11℃以下には下がらず湿度は40%を下回らなかった。夏季の一番暑い前後3週間も、2階のエアコン1台を半日運転するだけで快適な住空間を確保でき、湿度は70%を上回らなかった。
  また同社で導入を進めている建築環境影響評価CASBEEによる測定によれば、「土壁プラス外断熱」の省CO2効果は一般住宅の約半分。この快適性・省エネ性に注目が集まっており、受注件数の伸びも著しいという。
快適性を「数値」で表す

 さらに、「外断熱プラス土壁」の快適性を科学的に実証するべく、現在、某大学建築学科と地元工務店数社とで、研究をスタートさせるところ。「土壁の家は、ひんやりしていて過ごしやすい。肌に感じる空気がほかの家と全然違うように思うのですが、それを、科学的なデータで表したい」のだという。
  国土交通省が年間140億円もの予算を組み推進する「超長期住宅先導的モデル事業」にも地域工務店の連合体で応募するそうで、こうした施策利用・科学データ活用により、激変する時代の波を工務店が漕ぎぬく力に変えていく考えだ。
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  「6年後には娘婿に後継し、それ以降は一大工としてお客様を探していきたい」―今後について、難波社長は言う。「一日1万円くらいの手間賃で、施主さんの理想の家を、オープンコストで創りたいんです。儲けは考えていません。今までの経験と技術を生かして良い家が創れれば、それが何より嬉しいですし、会社の財産にもなるでしょう?」。4代にわたり受け継いだ職人魂が、同社の変わらざる芯を支えているようだ。