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挑む加工現場   2010年04月10日号


グループ全体を、ITで「見える化」
知恵と技術でつながる、新しい連携へ


田中精工 [精密ダイカスト金型、ダイカスト部品一貫生産]
京都府宇治市

 宇治のモノづくり企業から、IT経営が中小に広がり始めている。立役者は、田中精工(田中光一社長、創業1946年、従業員97人)。精密ダイカスト金型、ダイカスト部品一貫生産を行う中で、協力会社10社とつながるWEB-EDIシステムを開発し、「中小企業IT経営力大賞2009」の経済産業大臣賞に輝いた。経済産業省の進める中小企業のIT活用支援事業「J-SaaS」のサービスにも名を連ねられ、新たに5社が活用を進めているという。
EDIとは電子商取引のことで、田中精工のシステムはインターネットを介し、グループ間でモノづくりに必要な情報を共有できるものだ。協力会社側はWEB上のデータセンターにアクセスすればすぐに、「今日の受注数と種類は?」、「今、田中精工でどのくらい工程が進んでいるか」、「急な発注は?」、「自社の不良品数は」…と、自社に関わる情報がPCの画面上で確認できる。
これまでのように、「とにかく、来た分から製造を進める」、「電話や紙で状況を確認する」方法しかなかった場合に比べ、「段取りのムダを大幅に省ける。協力会社の生産効率はおよそ3割良くなり、空いた時間を使って不良の原因追求・改善もやりやすくなった。結果、グループ全体のQCD(品質・コスト・納期管理)が向上、取引先からの信頼感をより高めることができた」(田中社長)。
システムの活用で、膨大だった伝票類もほとんど無くなり、協力会社内の事務にかかる時間は、ほぼ半減。利用料の負担もない。一方の田中精工側でも、「以前は月末の駆け込み納品に悩まされた」(同)というが、システム導入で協力会社の納期管理がしやすくなりキャッシュフローも改善するなど、「協力会社とWIN―WINの関係が築けているんです」。田中社長は喜びを隠さない。
■一貫生産をITで効率化
09年に新築した本社ビルの横にある、3階建て工場の1階。鋳造現場をのぞくと、トロトロに溶け、銀色に光るアルミの流れが目に入った。600℃にもなる高温のアルミの流れは、機械の手でダイカストマシン内部の金型へと注がれ、15d〜500dもの圧力で瞬時に押し固められる。この「ダイカスト」工程を経て、田中精工と協力工場で穴あけや磨き処理、洗浄、表面処理などを行い、ダイカスト部品が完成する。
田中精工の強みは、工程の全てを統括できる一貫生産ノウハウにある。「極端に言えば、完成品メーカーさんは、『こういう部品がほしい』と指示するだけ」(田中社長)。金型の設計、製造までも自社で行うと言い、完成品はミクロン単位の精度を誇る。一貫生産を始めて40年、大手メーカーの信頼は厚い。
これまでには技術の研鑽、生産効率アップをと、IT技術を惜しみなく導入してきた。製造ラインのFA化やIT生産管理システムでライン全体の「見える化」を図り、顧客の生産状況に素早く対応できる体制が整った。だが、「全体の30%を占める協力工場での加工工程だけが、ラインのブラックボックスになっていた」(同)ようだ。
■対等で、オープンな連携を
この「ブラックボックス」を見える化しようと、WEB-EDIシステムの開発に乗り出したのは約3年前。開発を統括した総務部の坂本栄造部長は、「協力会社それぞれの、身の丈にあったシステムを作りたかった」と振り返る。というのも、協力会社の多くは2〜30人の小さな町工場。PCを使うと言っても、WEBを閲覧したり、エクセルなど表計算ソフトの利用が精一杯という状況だったからだ。先進的なITシステムを次々導入してきた田中精工との温度差は、あまりに大きかった。
「発注側からの押し付けでは、実際に使えるシステムにならない」と考えた坂本部長は、中小企業IT促進事業を活用し、協力会社10社と「小規模製造業EDI普及促進協議会」を発足。ITコーディネーターと共に現場を訪ねてそれぞれのIT活用状況や、システムでやってみたいことを具(つぶさ)に聞きまわり、会議を重ねたという。
結果、大きく分けて@受発注情報の活用、A自社の工程管理、B田中精工以外の企業からの発注情報の自動受信や資材発注管理―の3段階を備えたシステムを構築し、「初段階以上は、自社の管理レベルに合わせて活用を」と、自発性を大きく残した。
3段階目まで進めば、田中精工に限らず他社からの発注分の情報までも全て、システム上で一元管理ができる仕組みで、「発注先が上下関係でがんじがらめにしない、オープンなシステム。これこそが、中小モノづくり企業の自由な連携を加速させる」と、新規開発室の田中英一室長は目を輝かせる。
「システムを介してグループとグループが有機的につながっていけば、いち技術者、一社、一グループではなし得なかった、世界中の大きなプロジェクトに挑むこともできる。将来的には、お互いの発注情報だけでなく、工程情報、意匠なども共有できれば、より効率的でより精緻なモノづくりができるはず」(同)。システムの進化の先に、「知恵」と「技術」でつながっていく、新しいモノづくりの姿が見えてきたようだ。



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