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オヤジの社会学   2011年6月10日号掲載

オヤジ達のディズニーランド

 都会でサラリーマン生活をしていた頃は会社帰りによく一杯やった。 会社の仲間とも飲んだし、友人と落ち合ったり、たまにはひとりでも飲んだ。赤ちょうちん、バー、立ち飲み… まあ、なんというか、嫌いなほうではない。
 東京の虎ノ門にSという飲み屋があった。大きな店ではなく、100席足らず。いまどきの飲み屋と違って個室や仕切りなど一切ない、昔ながらの食堂形式の飲み屋である。その空間が5時を過ぎるとどこからともなく集まってくるオヤジたちであっという間に埋め尽くされる。
 人気の秘密は省庁や大使館が近い東京のど真ん中にしては値段が安いこと。そして、東北を中心とした地酒のラインアップの充実ぶり。注文すると一升瓶から直接グラスにトクトクとたっぷり注いでくれたものだ。手の込んだものは作っていなかったけれど、料理もうまくて、砂肝とネギを炒め軽く塩を振ったものなどをつまみに、やや黄色い濃厚な山形の地酒など飲むのがよかった。この店を紹介してくれた友人は「ここはサラリーマンのディズニーランドなんですよ」といった。たしかにみんな楽しそうに飲んでいる。
 肩や額が触れ合うようにしてすぐ隣や、テーブルの前に当時の筆者よりもやや年長のオヤジが飲んでいるので、初対面でもやあやあとなることがよくあった。それがまた楽しみのひとつでもある。飲み屋はオヤジたちのディズニーランドであり、社交場であった。
 場末といえばいい過ぎになるが、そんなざっくばらんな酒場にあっても、さすがにいい歳をこいたオヤジたちだけあって皆、場をわきまえている。酒場で政治、宗教、カネの話は野暮というものだ。野球の話も慎重になったほうがよい。個人の信条にも関わる問題は、メートルが上がるほどに危険な話題となる。下手をすると喧嘩になる。では、一体何の話をしていたのかというと、酩酊していたせいかどうもあまり定かでない。
 何年か前にSがなくなったと風の便りで聞いた。子どものころの遊び場に建物が建ってしまったような寂しさを覚えた。



中原亭(なかはら・てい)…金融、工業系と紙誌の編集を経て田舎暮らしにチャレンジ。現在、地方紙コラム執筆・地域雑誌編集のかたわら、田んぼを耕作。5人の子持ちオヤジ。


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