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オヤジの社会学   2011年8月10日号掲載

露店の道

 子どもと一緒におまつりに行った。出店が立ち並んだ日暮れの道を並んで歩いていると、小3の息子が袖を引く。見ると立派な拳銃をズラリ と陳列した店。あれをやるから金を出せ、というわけだ。
 誰に教えられるわけでもなく、年ごろになると男の子はなぜ拳銃を欲しがるようになるのだろう。ちょうど同じくらいの時、自分もウェスタン調のモデルガンや銀玉鉄砲で遊んだのを思い出す。
 せっかくまつりに来たのだし、そうかそうかお前も男なのだなぁ、という男同士の情もあって普段なら出し渋る大枚500円を投じることにした。坊主は道を戻るようにして店にかけていった。

 「当たるのはすべて前面に展示した品です」という札が掲げられている。店の前面には高そうで大きなモデルガンやライフルがこれ見よがしに光り輝いて並んでいる。坊主がくじを引く。小さくたたまれた紙がなかなか開かない。高まる期待感。やっと紙が開いてそれを差し出した。
 「ハイ、19番ね」と素っ気なく言って手元から小さなプラモデルのような箱を取り出すと、店主はそれを無造作に息子へ渡した。息子はうれしそうだが、大金をはたいたスポンサーとしてはどうも納得がいかない。「これが前面のどこに置いてあんだよ」と痩せた、色黒の的屋に食い下がった。

 男は陳列棚の左隅のほうを指差す。そこが前面なのかどうなのか、陳列棚上なのかどうなのか、はなはだ危うい場所に物陰に隠れるようにして同じ商品が置いてあった。男は、選手のクレームに対してライン際のボールの落下した痕を指差すウィンブルドンのジャッジのように冷静であった。完敗であった。「まぁ、前面と言やあ、前面だわな」と捨て台詞を残すのが精一杯で、父親はその場をすごすごと立ち去るのだった。
 箱をさっそく解いて中から拳銃を取り出した息子は、とくに青白いライトが光る照準が気に入ったようで喜んでいる。露店の道を歩きながら「19番じゃなくて61番だったんじゃないか、お前ちゃんと見たのかよォ」と最後まであきらめ切れないのは、ケチな父親のほうだった。



中原亭(なかはら・てい)…金融、工業系と紙誌の編集を経て田舎暮らしにチャレンジ。現在、地方紙コラム執筆・地域雑誌編集のかたわら、田んぼを耕作。5人の子持ちオヤジ。


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