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挑む加工現場   2011年12月10日号


微細加工が拓く、医療器具開発の最前線
ワンストップで、「発想」を「製品」に変える

衣川製作所[微細加工・試作加工]
京都市

 米粒より小さいチタンのハサミ、φ1mm以下のSUS製カンシ―。鼻息で吹き飛ばさないよう注意しながらカメラを近づけ、先端にピントを合わせてみると、シャープなエッジが刃先に確認できる。そう、これら微細な作品は玩具ではない。「手術器具は細胞を切り裂くためのものですから、切れなきゃ創る意味が無いでしょう。ハサミは世界最小。髪の毛も切れるし、紙なら0.1mm厚まで切断できますよ」。開発した衣川製作所(1966年創業、従業員数約25名)の衣川隆文社長は事も無げに言う。
 同社は森精機切削加工ドリームコンテストで6年連続受賞しており、微細加工部門でハサミは09年に銅賞、カンシは11年の金賞に輝いた。カンシは可動部やエッジの高精度加工などが審査委員会から高い評価を受け、ハサミのほうは既に、もう少し大きなサイズでの実用化が検討されているところ。「血管内で詰まったものを切り取るなど、手術の効率化を進められ、患者の身体負担をより小さくできる」(衣川社長)。医療器具開発の最前線で衣川製作所の技術が生きる。
 本社内に新設したショールームには、アイデアと微細加工技術の粋を凝らした作品がズラリと並ぶ。狙いはユーザーの開拓。例えば、展示されたアスペクト比50倍になる0.1mm角の剣山型角ピンを見て研究者や企業側から「マウスの脳波測定実験に使いたい」など、用途はユーザー側が決めるという。一方、医療器具系の展示会出展にも積極的で、メーカーからの依頼も増加した。「当社の規模で展示会に営業戦力やコストをかけるのは厳しい面がある」と衣川社長は明かすが、アピールの手を緩める気は皆無。「もはや空洞化は止まらない。我々がモノづくりで生きていける場はどこにあるのか、戦術の練り直しが問われている」。見据える生きる道の一つが医療にある。

■発想を形に変える技術力
 売上高2.7億円(201
0年)の構成比は、半導体製造装置部品などエレクトロニクス関連が6割、医療器具分野が2割、大学・研究所が2割。毎回プログラム製作からかかわる多品種少量品が95%を占める。リーマンショックからコスト要求が厳しくなり、衣川製作所の売上高もリーマン以前より約25%落ちたが、「それでも利益を確保できているのはユーザーの要望を適える技術開発に徹してきたからだ」と衣川社長は分析する。
 同社では2000年の半導体不況をきっかけに下請け脱却を決意し、試作開発から量産提案までの技能を磨いてきた。試作グループ・京都試作ネットの中核企業として受注開拓に取り組み、立命館大学や京都工芸繊維大学など地元大学とも連携。共同研究の中で医療分野の試作加工の道を拓いた。学生の卒論研究作品の製作も担う。「金属加工を知らない学生の発想は企業と違って突拍子も無い」と衣川社長は苦笑するが、できるかどうかギリギリの加工に取り組む経験が、技術とアイデアを磨き上げる一つの材料にもなっているそうだ。
 医療器具などの試作に当たって企業や学生側が提示してくるのは、どんな作業ができる器具なのか、頭の中で描いた案のみ。実際の器具の姿に創り上げるのは衣川の卓越した加工技術と「コーディネート力」だ。「金型加工か切削か、あるいは射出成形なのか―。加工法の選定から始まり、量産プロセスの提案までできる。微細加工など特化した技術は当社が担いつつ、量産先の紹介や表面処理など当社が得意とする分野以外は京都試作ネットはじめ信頼できるパートナーに任せられる」(衣川社長)。ワンストップでアイデアを形にできるところに、衣川の強みがある。
 衣川社長は今後についても「売上は追いすぎず、あくまでユーザーの求める製品開発に徹する」と揺らがない。「エレクトロニクス関連の加工で屋台骨を守りながら、医療器具分野の売上を35〜40%にまで伸ばし、海外にも販路を開拓できれば」(同)。守りながら果敢に攻める、中小モノづくり企業の粘り強く逞しい姿がそこにあった。







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