コラム

2014年7月25日号

 親しく酒を交わしているうち知人が渋顔で言った。マニュアル社員が多過ぎる。仕事でももっと自分を出して欲しいんだが…。そこへ注文を取りに来た店員が手元をピッピッと叩きながら丁寧に「ご注文を繰り返させていただきます」。冷酒のお替りと新香だと伝えたじゃないか、知人は少々不機嫌だ。注文はたった二つ、わざわざ繰り返す必要なんかないと言っているのだ▼昔、ドリフターズのコントに「もし店主が○○だったら」といった人気シリーズがあった。毎回やたら世話を焼く店長やら、泣き上戸の女将などが出てきて、にっちもさっちもいかず弱り切る客と、それを意に介さず強烈個性を出し続ける店主側との落差が笑いを誘った。故・いかりや長介氏の「ダメだこりゃ」で終わるお約束のパターンだった▼そんなふうに個性を押しつける人間が昔は現実にも多くいた。今は接客業にしても教育され洗練され、場の空気をきちんと読んで笑顔も素敵になったが、どこか平べったく無機質と感じるのは筆者だけであるまい▼ところがである。ネットの掲示板を見ると洗練されたはずの現社会とは真逆、薄汚い言葉で常に誹謗中傷の嵐だ。LINEでのいじめで中学生が自殺などと胸痛む事件も続く。日頃溜め込んだストレスを顔の見えない世界で爆発させ均衡を保っているとでもいうのか。この歪みは哀しくさえある。生き生きと「個」を出せる、容認し合える社会を皆で取り戻さねば。ダメだこりゃ、では終われない。