連載

2017年9月10日号

IoT新トレンド―既存概念に縛られず

タテ・ヨコ最適化や自律分散型IoT

 情報を集め、蓄積し、活用するというフローをベースに、IoT(的な)取り組みの成果物が国内で増えだした。そこには「あらゆるモノ、人、情報をインターネットでつなぎ、ビッグデータやAIを使って製造革命を起こす」という大がかりな国家的プロジェクトの狙いとは異なる、実用的なメリットが顔を覗かせている。
 「IoTを、(日本語として一般に表現される)モノのインターネットと捉えると、大きな誤解を生む」―。そうかねてから指摘するのは、(独行)経済産業研究所の上席研究員で「IoTによる中堅・中小企業の競争力強化に関する研究会」を主催してきた岩本晃一氏(本紙連載中=今号2面)だ。

 工場内に導入する場合は閉じたネットワークで十分。必要もないのにあえてインターネットに接続して危険にさらす必要は無い、などと同氏は断言した

■エッジへ反転?
 IoTの既存概念にとらわれない取り組みも実際に進む。
 IoT実現に向けた事業で世界のトップ集団を走る三菱電機はこの9月、記者向け技術説明会で「クラウド集中型IoTから、エッジコンピューティングによる自律分散型IoTへ変えていくべき。情報の集積先として、これまでクラウド集中型がトレンドだったが、今後、分散型IoTへと反転する可能性が大きい」などと強調した。
 その理由として、自動走行など即時応答が必要な分野では、クラウドだと往復距離が長いため応答遅延がサービスの足枷になるとする。例えば急ブレーキが必要な時、遠いクラウドからの指示により数百㍉秒遅れるとリスクが増すことが考えられる。同社は各種デバイスに近い場所でデータを集積管理し処理するエッジやフォグコンピューティングによる「自律分散型IoT」の優位性を説く。また実際の問題としてデータ量が爆発的に増加する現状から、今後クラウドではカバーできなくなる可能性も指摘。これら主に2つの理由から「エッジ(フォグ)で処理の大半を実施し、そのなかの必要なデータのみを絞ってクラウドに上げるスタイルに落ち着く」とみる。この読みに沿って事業を進め、欠かせないオープン化、標準化に取り組む。

■縦・横の緊密化
 東京精密は、測定機器を展示する「八王子ショールーム」の8月末のリニューアルオープンを記念したIoT関連セミナーで「縦と横の緊密なつながり」を重視すべきと述べた。IoTは当初から、モノとモノ、モノと人、工場と工場をつなぐ「軸」を重視してきた。しかしモノづくりにはもう一つ、設計→製造→販売という時間軸に沿う重要な軸がある。
 同社はこのセミナーや同時開催の内覧会で、その双方の軸のつながりを重視し様々な提案を行った。3DCADのPMI情報(製品製造情報)をダイレクトに活用した測定工程の高効率化などを内覧会で伝えた一方、セミナーでは2つのIoTツール(ソフト)を用意し、測定機単位のIoT化から、工場単位のスモールビジネスソリューション、グローバル単位のIoT化と顧客の要請に応じ、柔軟な提案を既に提供できる状態にあることを伝えた。
 測定の重要性が増すなか「測定結果を後で見直したいというニーズが急増している」(同社)ことに着目し事業化しているものだ。2つのソフトのうち一つは、測定機もしくは測定室単位で測定結果を集めてエクセル化するなどの機能に絞っている。もう一つのソフトは、他社測定機の測定結果も含め(一定の条件下で可能)、視覚的なレポートにしたり、統計解析に利用できる。しかも前述のようにワールドワイドに活用可能だ。
 顧客視点に立って身近なところから小さくスタートできる「スモールIoT」が、ビジネスとして軌道化しようとする。