オヤジの社会学

2017年10月10日号

オヤジの味方

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 いまどきの大会社は、ヤニ臭い時代遅れのオヤジなど相手にしていたら儲け損なう、ということなのだろう。近頃登場する新商品や新サービスはどうやら拙者などまったく眼中にないようだとひがみっぽく憂いている。
 我ながら大した高額商品を購入するわけではないし、日用品の消費も知れている。コンスタントに買うのはタバコと酒くらいのものだが、それらですら年齢とともに消費量は減少傾向だ。こんな人を相手にしていたら会社は潰れる。マーケティングという網の目からこぼれ落ちて当然と言えば当然の人間なのだ。
 ところがである。捨てる神あれば拾う神ありとはよく言ったもので最近「これはひょっとしてマーケティングのターゲットとして狙われているのではないか」と感じて小躍りしたくなるようなうれしい出来事があった。とあるファミレスに行った時のことである。
 まず、テーブルに座ってひとつ気がついたことがあった。爪楊枝が置いてあるのだ。それがどうした、と言われるかもしれないが、テーブルから爪楊枝が離れて久しい。昔は食堂、レストランと言えば何は無くともテーブルに爪楊枝が置いてあったものだ。それがいつしかテーブルから去り、遠く集中管理テーブルあるいはキャッシャーのあたりに居所を移した。店内でシーハーされるのは品がないのでお帰りの際にどうぞ、と言わんばかりのレイアウトである。それが、どうぞここでシーハーしてくださいと言わんばかりにそこに置いてあるのだから何をか言わんやである。
 何か素晴らしいことが起こる予兆を感じつつメニューを開けばそこには「ホッピー」と書いてある。はじめ目を疑ったが、何度読んでも「ホッピー」と書いてある。しかも、その下にはやや級数を落とした小さな文字で「中おかわり200円」ともある。  ホッピー通なら今さら解説することもないが、焼酎をホッピーというビールテイスト飲料で割ったものを一般にホッピーと呼ぶ。「中」というのはその焼酎だけを指している。
 ファミレスで場末の焼き鳥屋さながらにホッピーが味わえるとは、長生きはするもんだ。結局、ホッピー一本で中を2回おかわりし千円足らずでいい気持ちになった。とはいえ、たかが爪楊枝とホッピーでこんな大喜びをしている人間を相手にしていては会社は潰れる。爪楊枝とホッピーが蜃気楼のように姿を消す前にしばしこのファミレスに足繁く通うとしよう。