識者の目

AI活用したIoT、最前線で技術展開する日本メーカー

 ドイツ政府が産官学共同で推進する国家プロジェクト「インダストリー4.0」が発表されて以来、スマートファクトリー(つながる工場)の実現のため、世界で大いに注目されてきている。アメリカにおいても、企業が中心となりインダストリアル・インターネット・コンソーシアムを構築し、IoTの産業実装を推進している。日本においても、政府の方針の下で「ロボット革命イニシアティブ協議会」が設立され、IoTを活用したものづくり革新を積極的に勧めようとしている。
 工作機械などの生産用ツールを提供する各企業においても、IoTベースで独自のスマートシステムを開発してきている。ファナックや三菱電機はあらゆる生産機器の接続が可能なオープンプラットフォームを開発し、それぞれFIELD system Open Platform、FA-IT Open Platformとして提供している。製造現場のさまざま情報を収集し、さらなる高度な生産を実現するためにフィードバック活用することを可能にしている。
 工作機械メーカも工作機械のIoT化により独自のソリューションを展開している。DMG森精機では、工作機械のIoT化において制御システムの高度なセキュリティを確立することを重要課題とし、日本マイクロソフトと技術協力を開始するとともに、IoT技術により工場の生産管理や品質管理を最適化する技術の開発を試みている。また、オークマは2017年5月に新世代スマートファクトリー Dream Site2 部品工場を竣工し、ヤマザキマザックは同年5月に大口製作所をスマートファクトリー化し、「Mazak iSMART Factory®」として稼働を開始させている。オークマ、ヤマザキマザックのスマートファクトリーは、いずれも万全なセキュリティ対策の基でIoTをフルに活用した高レベルな省人化(無人化に近い)工場でありながら、高度な機械加工工場を実現している。
 機械加工工場のスマート化の実現にあたり、工作機械のIoT化は当然のことであるが、それと同時にロボットの役割も大きくなる。ロボットが人間に代わり多くの作業を行う必要があり、このためにはビジョン(画像)情報の活用が重要である。その情報処理においてAIを活用することも必須となっている。工作機械による加工工場は、AIを活用したIoT化の大きな流れの中にある。この流れは「インダストリー4.0」の提唱で注目されてきているものの、日本の工作機械メーカが10年以上も前から取り組んでいる技術であるため、世界に遅れることなく流れの最前線で技術展開できている。
 工作機械のIoT化・AI化については上述のとおりであるが、工作機械の動向として金属粉末の積層造形であるアディティブマニュファクチュアリングを伝えることを忘れてはならない。いわゆる金属3Dプリンタは残留応力の低減、造形スピードの向上、造形精度の向上、内部欠陥の解消など、まだまだ解決しなければならない課題が残されている。しかし、GEの利用方法にみられるように、プロトタイプ(試作)から実用部品の製造に使われようとしてきていることは注目される。鍛造材よりは機械的性質が低下するが溶接構造物より機械的性質が高ければ、金属3Dプリンタ造形物が溶接構造物に置き換えて使用されることは十分に考えられる。現にそのようなことが起きている。さらに、中空構造も造形可能であることから、航空機部品や自動車部品の軽量化を一気に促進できる可能性が期待されている。このようなことから、日本の工作機械メーカのアディティブマニュファクチュアリングへの参入も増えてきている。
 工作機械のIoT化・AI化により、機械加工工場の高度な省人化・無人化を実現できることは高く期待できる。一方で、そのような生産体系になっていくとき、これまで経験的に培ってきた新加工法や新材量や新切削工具に対する最適加工条件をどのように導出していくか心配となる。その心配を払拭するために、専門の部署でそのような技術開発を担っていってほしい。

慶應義塾大学 理工学部 教授 青山 英樹 (システムデザイン工学科)

デジタルデザイン・デジタルマニュファクチャリング、CAD・CAMといった分野において、知識・ノウハウと科学・工学を融合させたデザイン・設計・生産のためのコンピューターシステムの開発を中心に研究を行なっている。