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MECT2017開幕特集:ガラリ変わった生産設備

―今号(10月10日号)の紙面特集は国内でJIMTOFに次ぐ規模の工作機械見本市「メカトロテックジャパン(MECT)2017」(10月18−21日、ポートメッセなごや)を前にその概要や、本紙アンケートによる出展各社の提案内容を紹介しました。また省エネ&健康機能がますます高まる家庭用暖房も。このうち、ここでは「MECT2017開幕特集」の中でも「ガラリ変わった生産設備」を掲載―。
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9月開催のEMOショーはindustrie4.0やIoTが最大級のテーマに

 MECT開幕を前に工作機械を中心に技術・市場動向をまとめた。ドイツでインダストリー4.0が打ち出されてからIoT(モノのインターネット)が機械にどんどん採り入れられ、AM(付加製造)にも様々なタイプが登場。工作機械がもつイメージはずいぶんと変わってきた。

IoT、スモールスタートがコンセンサス?

 「インダストリー4.0への対応をうたった展示が見られたが、ユーザーメリットの具体化については模索状態」―。とは、去る9月にドイツで開催された世界最大級の金属加工市「EMOショー」を視察した(一社)日本工作機械工業会のオフィシャルな視察リポートにある一文だ。
 指向が同じという点で、「4.0」とほぼ同じ意味で用いられる(工作機械関係の)IoTについても全体的には「模索状態」のよう。
 本紙のEMO現地取材では「機械同士をつなげ、蓄積した現場情報を経営層にまでつなげる試みが提唱されているが、それで何が得られるか見えていない」(工作機械メーカー幹部)というのが大方の意見。こうした意見の先には多く、次のようなコメントが続く。
 「センサーからの情報で稼動状況や、機械状態を遠隔地において把握するだけなら、とうの昔からできていた」。
 しかし、やれ「4.0」、やれ「IoT」と数年以上、大合唱が続いてきたおかげか、センサーの活用が進み、センサー(等)で掬い取った情報を生かそうとの考えが、いわば工作機械の全需要業種にわたり広がっている。それは見方を変えて「新市場の芽生え」と捉えられないか。
 げんに、センサー等で収集した情報の活用をテーマとして、機械メーカーの提案活動は活発化方向だ。
 「例えば主軸の振動。ブレの程度が生産全体にどう影響するかを解析することで、生産全体を改善する手立てを見出せる。このご時勢、ユーザーの理解は早く、関心が高まっている」(EMO会場、ジェイテクト)と言う。
 大手のヤマザキマザックは「モニターに分析機能を持たせ、(収集した大量データの分析から)効率的なメンテナンスや工程改善に活かす」とした。不可解なアラーム情報に対し、分析機能を持つアプリケーションが原因を明らかにするなども現時点で期待していいようだ。オークマはAI機能を搭載し、過去データからの推察にとどまらず、AIが多面的に考察しメンテ時期などを知らせる仕組みを構築する。
 NCメーカーが主導する広大なIoTプラットフォームも、構想を経て「事業化」段階を迎えた。それとは反対方向から、密度の濃い「スモールスタートのIoT」が育つ。先の日工会のリポートは「スマート化の発信力は日本企業に優位性有り」と記したが、双方からの動きのなかで、日本メーカーが取り組む「スモールスタート」の可能性に目を向ける向きが増えていることは確かなようだ。

世界一兆円市場へ、AM開発が加速

 従来は試作品や治具などに用途が限定されていたAM(付加製造、3Dプリンタ)が、自動車・航空機の量産部品や金型を造形する工作機械の新たな技術要素として、ここ数年、大きく注目を集めている。経済産業省が見込む2020年の3DP本体・材料・ソフトウェアの世界市場は1兆円。一大市場を狙い、開発競争が激化し始めた。
 先行する欧米製を上回るべく、経産省主導で設立された技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構(TRAFAM)では、設立した2014年時点の10倍の造形速度(500cc/時)や、造形可能範囲が同3倍の大型化(□1000×600mm)を2019年度末までの目標に掲げる。今年8月の発表によると「ほぼ計画通りに中間目標を達成済み」(TRAFAM)で、チタン合金の造形では形状精度や引っ張り強度なども航空機部品用規格を満たしつつある。金属粉末をレーザで溶融堆積するレーザデポジション式では今年度末に2機種(東芝機械と三菱重工工作機械)を発売予定だ。
 ただ、目標の販売価格は5000万円とハードルが高く、メーカーからは「機能を絞った廉価版と高機能版の展開を検討中」との声も聞かれる。用途開発も普及に向けた課題の一つ。プロジェクトリーダーの近畿大学・京極秀樹教授は「今年度から航空機や自動車など、ユーザー先でニーズや量産加工性の評価を進めていく」と言う。
 工作機械メーカー各社でもAM関連の開発が加速している。DMG森精機では今年6月の自社展で、幅2.3×奥行き0.9mと小型のパウダーベッド方式(敷き詰めた粉末の上にレーザを照射して焼結)のレーザ金属積層造形機「LASERTEC 30 SLM」を日本初披露した。森雅彦社長は発売済みのAM2機種で既に年間30台弱、約40億円の売上があるとし、「来年はAM機で150〜200台、100億円弱を狙いたい」と市場開拓に積極的だ。
 「積層造形に限らずコーティング、部品補修などに対応するアプリケーションを揃えた」とするのはヤマザキマザックだ。昨年JIMTOFでは摩擦攪拌接合機とともに3種類のAM(シングルレーザー、マルチレーザー、ワイヤーアーク)を披露し、航空機部品の強度や耐久性を向上させるコーティング加工、金型、タービンブレードの部品補修や微細造形などの需要を見込んでいる。

小型・多機能化、更新需要増が後押し

 加工機は今や小型でも高性能・多機能だ。比較的狭い日本の工場で生産性を高めるにはコンパクトな機械は重宝するし、設備を更新する際に旧マシンより大きいと具合が悪い。そんな理由もあって、更新需要を意識して性能を高める一方で機械幅を従来機以下にすることに腐心するメーカーは少なくない。
 立形マシニングセンタ(MC)は改良が進んでいる。牧野フライス製作所は横形MCで実績のある俊敏主軸や工具マガジンを採用した5軸立形MC「DA300」を高精度部品加工向けにアピールする。剛性を確保しつつ移動物の質量を小さくするなどして慣性力(イナーシャ)が小さくなるよう設計した。
 主軸30番テーパ機からの改良も。DMG森精機の立形MC「i30V」は30番機MAX3000をベースに40番の主軸を標準搭載(30番主軸はオプションで用意)。40番機でありながら機械幅を約1・5㍍に抑えた。
 ブラザー工業が「国内および欧米向けに動きが激しい。だって1千万円で複合加工機が導入できるんだから」と言うのは、旋削とミーリングが1台でこなせる「SPEEDIO M140X2」。この小型シリーズはZ軸加速度アップ、加工領域の拡大、パレットチェンジャーの標準搭載とどんどん機能を拡大中だ。
 研削盤も小型化している。
 「小型機は日本の工場に欠かせない。ただしアピール不足で、当社工場を訪問したお客様からは『こんなに小さい機械があるんだ』と驚かれる」
 そう話すのはシギヤ精機製作所。省スペースを強く意識し約1㍍幅に抑えた立形円筒研削盤「GPV−10」は横形に比べても精度は遜色なく、ロボットと組み合わせるのに向く。ユーザー層は限定されるというが、2010年度の発売当初の販売数は数台だったが、16年度には10台強に拡大した。
 太陽工機が「超小型」と謳う立形研削盤「USG−3」も間口を従来機から50cm小さい1m弱に抑えた。「作業者の移動距離を最小限に抑えることができ、工場の面積生産性向上に貢献する」と言う。

切削工具、さらなる安定化へ

 切削工具の世界が広がりを見せている。高能率加工につなげるべく、被削材の特性を踏まえた刃物が続々と標準品化され、ラインアップを拡大している。使い古された言葉ながら他社製品との違いを示すうえで、その価値を問われているのが「安定した加工」だ。工作機械の長時間稼動、生産ラインの自動化志向が強まっていることもあり、切りくずの形成と排出性、切削抵抗と摩耗の抑制がさらに進化している。その動きは今年発売された各種製品を見ても明らかだ。
 住友電気工業の超硬コーティングドリル「マルチドリルネクシオMDE型」は、独自技術のRXシンニングを採用。広い切りくずポケットを備えることで、穴あけ加工時の切削抵抗を従来比で約20%低減した。「小型旋盤や小型マシニングセンタでも安定した穴あけ加工が可能」(ハードメタル事業部)という。
 ポイントに挙げるのは幅広い領域でも切りくずを細かく分断できること。切りくずの詰まりによるドリル欠損や巻きつきによる加工機の停止を防止する。
 サンドビックは「旋削加工における革命」として新たな加工方法を提案中。これまでのように機械のチャック方向に向かって押して削る方法ではなく、引いて加工するというもの。「ワーク立ち壁やチャック手前で加工できない部分が生じる」、「切りくず処理が悪い」などの欠点を解消する。高送りとチップ寿命向上を可能にした専用工具「コロターンプライム」では、外径・端面・隅の加工がすべて可能な点を特徴に挙げる。
 チタン合金やステンレスに代表される難削材向けの提案も光る。三菱マテリアルが8月に発売したばかりの制震エンドミル「CoolStarシリーズ」は各切れ刃に複数のクーラント供給穴を配置。穴の位置を最適化したことで優れた冷却効果を発揮する。
切削抵抗の低減と切りくず排出性の向上に一役買っているのがコーティングだ。同シリーズでは熱の膨張と収縮に強い「スマートミラクルコーティング」と、平滑なコーティング膜「ZERO‐μサーフェース」を採用した。
 「素材にしても、形状にしても、切削工具は行き着くところまで行き着いた感がある。極端な言い方かもしれないが、最後に差別化できるのはコーティングではないか」(切削工具メーカー幹部)との話もめずらしくない。
 オーエスジーが開発した「EgiAsコーティング」は、摩耗を抑える耐摩耗層と割れの伝播(クラック)を防ぐナノ周期積層を交互に重ねることで、耐久性を大幅に上げることに成功した。被膜対象アイテムも拡大中。MECTではワンパスで高品位なめねじ加工ができるスレッドミルを初披露する。