識者の目

積層造形で開発期間短縮

ハイブリッド航空機、2022年に市場へ

 2万以上のサプライヤーの協力を得て生産するB787型機は150を超える国に出荷し(輸出が7割を占める)、現在月に12台のペースで生産している。民間航空機は向こう20年間で4万機の需要(うち4割はアジア向け)があると考えられており、航空機ビジネスは明るい。様々な製造技術も揃ってきた。しかし顧客は安全性、適正な価格、アップグレード可能性と多くを求める。航空機はともすれば60年を超えて飛び続けなければならない。また環境にも責任を負わねばならない(B787は飛び始めてからこれまでに180億㌧の燃料を節約した)。
 設計に関しては、単に製品を見栄えよくつくるためのものでなく、より良く早くつくるための設計が必要だ。より早く市場に出すために積層造形が一定の役割を果たしている。同時に、各部門の同時平行作業、ダッシュボードなどの部品の再利用も重要になる。
 航空宇宙産業と自動車産業を比較してみよう。技術的には自動車産業で培われた多くの技術が航空機産業で生かされている。デジタル設計されているB787とBMWのi3(電気自動車)の50%ほどには複合材料が使われている。乗客数は242人と4人。60倍の開きがある。総重量は100倍、部品数は230倍の差がある。ただし、1カ月間に生産される台数と構成する部品数をかけ合わせると、B787の2700万パーツに対しi3は2100万パーツとそれほど大きな違いがない。
 合金、複合材料、セラミックなどの材料を考える際にコストが非常に重視されるようになってきた。たとえばB787では水平尾翼は一体成形することでパーツの数を減らし、エンジンに使われる部品はセラミックをスプレー塗装して大気圏に再突入する際の熱を奪う性質を付与しコスト削減を図っている。
 積層造形法により、これまでにつくったことがないような形を最初からつくれる。より早く製品を市場に届けることもできる。設計から生産までの期間を短縮し、スクラップを減らせる。すでにこの方式で我々は5万点を超える部品をつくってきた。未来感のある内装をつくり客室デザインで差別化することもできるだろう。いわゆる構造物からより生物学的な形の部品が増えてきている。部品の複雑形状化が進むが、積層造形と切削加工をうまく組み合わせることで最良の設計・製造法が生まれると思う。
 オートメーションが進むことで品質向上や柔軟化のほか職場の安全性を確保することも可能になる。穴あけ、塗装、シーリング、複合材の組み立て、材料の運搬などについてはさらに自動化が突き詰められていくだろう。オートメーションで毎回最初から高い品質を確保することで、試験や評価を減らしていきたい。
 これからは破壊の時代と言える。グーグル、アップル、テスラなどこれまで航空機産業に関わりのなかった企業が参入してきている。ボーイング社としては最先端を走り続け、2022年には電力とのハイブリッドで飛ぶ航空機を世に出したい。航空機を人々に強い印象を与え続ける分野にしていきたい。
 (10月19日に開かれた講演「航空宇宙産業における生産の動向」から)

ボーイング マテリアルマニュファクチュアリングテクノロジー担当 バイスプレジデント レーン・バラード氏

マサチューセッツ工科大学で理学修士とMBAを取得し、1996年ボーイング入社。B787型機の生産システムの責任者として高品質・安定生産を実現。現在は組立工程や自動化、複合材料の研究開発チームの責任者として、材料費の削減などにも取り組む