PICK UP 今号の企画

検証MECT

―今号(11月10 日号)の紙面特集は「アジア」と「検証MECT」。このうち、ここでは「検証MECT」を掲載―。
 ポートメッセなごやで10月18日~21日まで開かれた「メカトロテックジャパン2017(MECT)」。JIMTOFに次ぐ国内最大級の工作機械見本市として注目度も高く、今回は9万2305人が来場した。出展メーカー各社の提案内容を振り返ってみる。

「一大転換期」迎える、AM普及へ新たな切削版マシンも

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安田工業が「Labonos」のブランド名で売り出す3Dトランスレーター

 「モノづくり産業は一大転換期を迎えている。とくに世界各国で動きが加速しているEV(電気自動車)は、5年後、10年後、大きな需要になっていく。新分野に挑戦するか、付加価値をいかに提供していくかが産業発展の課題になる」(経済産業省の片岡隆一産業機械課長)、「IoTを駆使する先進国では、モノづくりの流れが変わろうとしている。メーカー側の独善的で、押し付けるようなシステムや製品ではなく、来場者(ユーザー)の視点に立った提案が求められる」(〈一社〉日本工作機械工業会の飯村幸生会長)など、開会式の来賓挨拶では同展を生産設備のあるべき姿を考えるきっかけとしてとらえる発言が目立った。
 出展メーカーにとって新基軸を発表する場というよりも、既存の技術を一層進化させて高めた付加価値を伝える、導入メリットを具体的な事例とデータを交えてアピールするという内容が多かったのではないか。開催前からキーワードに挙がっていた「AM」(付加製造)もその一つ。ヤマザキマザックは目玉とするハイブリッド複合加工機の中でも、ワイヤアーク溶接の応用で積層造形するタイプに期待を寄せる。
中西正純営業本部長は「金属ワイヤは一般的に流通しているので金属粉末よりも安価だし、粉塵・防爆対策の必要がない。肉盛りによる金型補修で注目を集めているが、今後はEV関係でも何らかの引き合いが見込めると思い、サンプルワークにタイヤ金型を置いた」と話す。
オークマは、超次世代型として、積層造形、旋削、ミーリング、熱処理、研削まで1台でこなす「LASER EX」を展示。ブリスクの加工を実演し、SUS304の母材に、インコネルの羽根を1枚23分で積層して見せた。
 「MECTでサプライズがあるよ」。そう数カ月前にニヤリと漏らしたのは安田工業の営業幹部。ブースに行くと、小洒落た業務用冷蔵庫のようなマシンが奥に置かれていた。3DCADデータを直接読み込み、樹脂やアルミを最終形状まで仕上げる。いわば3Dプリンタの「切削版マシン」だ。
  参考出品として初めて披露した。積層造形だと強度が限られ、試作品として機能検証などに生かしにくい点に目をつけて開発した。
実物を早く手に取りたいデザイナーや試作業者をターゲットにした加工機で、3DCADデータさえあれば加工ノウハウがなくても切削できる。「Labonos(ラボノス)」のブランド名で売り出す予定。安田拓人社長は、「我々にとって新しい事業になる。試作向けに新しい市場をつくっていけたら」と話していた。
 三井精機工業は、砥石切込量を53mmまで大幅に拡大した好評のジグ研削盤「J350G」で、新開発したテーパ穴研削のデモを見せた。
U軸とZ軸を同期制御することで、従来は3度までだったテーパ穴研削が30度まで可能に。「テーパ穴加工はプラスチック金型でとくにニーズが高く、ユーザーの声から開発を進めてきた。研削で穴面の品質を上げ、金型の寿命を実現できる」とした。
 「5、6年前に『ほしいけど高くてね…』と客から言われたが、今は『ぜひとも買わなきゃ』という気運になった」と笑みを見せたのは武田機械の担当者だ。
 両頭フライス盤「BXR150SF」は材料を一次加工する、同社製品の中でも最小機種にあたる。2面同時に削れるので仕事量が倍増できる点が特長。社内で一次加工できる職人が減っているため、材料調達時に外注の加工費が付加されることから同機のニーズが高まっているそうだ。
 同じ稼動時間で生産量を倍増させるという発想は、豊和工業の新機種でも見られた。ツインスピンドルタイプの立形マシニングセンタ「HMK‐340VT1TS」は高精度小物部品に特化。主軸高さ調整が別々にできる構造に設計した。

ロボットと機械の連動、全自動化をパッケージで

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機内洗浄までも全自動化(岡本工作機械製作所)

 ロボットが工作機械へワークを供給・着脱する実演が予想通り増えていた。「増えた」というよりも、省人化と稼働率向上の提案として「すっかりお馴染みの光景になった」という印象だ。
 そのなかで「MECTの開催期間中、まったく人の手を入れずにフル全自動で展示機を動かせていたのはうちだけでしょう」と自負したのは岡本工作機械製作所。全自動研削システムを搭載した平面研削盤「MUJIN」と多軸ロボットによるワーク搬送・洗浄工程に加え、研磨後の機内洗浄まで全自動化した。
 機械のテーブルに残った泡や切粉は、ロボットがエアブロー内蔵の刷毛のようなもので掃除する。来年から自動洗浄パッケージとしてセットで納入を開始する予定という。
 歴史的に多軸加工や5軸仕様で先駆者的存在であるエグロは「機ロボ一体」をブースで強調。メインで展示した精密旋盤はロボット搭載を標準仕様としており、後付けでの自動化・ロボット化にありがちな手間や苦労を不要にした。
 ユニークだったのは不二越の展示物「ロボット加工センター」だ。コンパクトサイズのマシニングセンタの内部に、小型多関節ロボット1台を設置。このロボットがワークの搬出入から切削工具の交換、多面加工までを仕切る。
 ロボットに金属を削れるだけの剛性はないわけだが、ロボットが直接削るのではなく、ロボットがワークを分厚い金属板に押し当て、そこに切削工具が伸びて加工する。まな板の上の食材を切るとき必要な「片手で固定する」役を、ロボットが担うというわけだ。
 世界初の試みなのだそう。具体的に売り出す時期など決めていないものの、フレキシビリティという点でおおいに注目された。
 アステックは、放電穴あけユニットと多軸ロボットによる自動搬送、洗浄、貫通穴検査の工程をワンパッケージ化した無人加工機で、さらなる量産効率向上を提案した。「ユーザーの仕様に合わせて機械をつくり込める設計力が強み。内径バリも出ず、自動車、ロケットエンジンなどの燃料噴射ノズルなどの加工で、ドリルからの工法転換例が増えている」という。
 治具の自動化対応も進む。愛知産業は、ワンタッチでバイス交換が可能な独・ラング社製のクランピングシステムを実演。バイスを最大42個保管できる専用台車、ロボットとのセットで提案する予定で、「ティーチング、据付も含めてトータルでサポートする」という。
 ナベヤは、油空圧の力で自動でクランプ・アンクランプするバイスを標準品化。「ネオグリップ」として発売する。ワークをセットした状態のまま、ロボットハンドによる付け替えにも対応する。チャックでは、北川鉄工所や豊和工業が加工するワークに合わせて爪を1個ずつ自動で交換するシステムをそれぞれ参考出品していた。来春市場投入を予定している北川鉄工所によると、「職人が少なく、小ロット生産で付加価値を高めるヨーロッパ市場での引き合いも見込める」という。

ローダーの高速化競う、パレット仕様も需要じわり

 ワーク搬送・交換の定番として、ガントリーローダーやパレットチェンジャー仕様機の人気も根強い。滝澤鉄工所の担当者は「東南アジアでも人件費が高まっていることもあり、自動化仕様の引き合いは全体の半数に近付いている」と話す。
 滝澤鉄工所では、出品した小型CNC旋盤5台のうち4台がローダー搭載機。なかでも平行2主軸の「TT‐2100G」にはローダーを2つ付け、左右の2つの主軸と交差するようにしてワークを自由に運べるようにした。
 村田機械が初披露した正面型CNCターニングセンタの新型機「MD120Ⅱ」には、業界最速クラスをうたった高速ローダーを搭載させていた。ローダーの速度は従来機種に比べて最大86%(Z軸)アップ。主軸の加減速、ロードアンロードなどを1秒短縮することで、生産性を11%向上させた。
 オークマは今秋発売の新機種として、自動車部品の量産加工を想定して開発した並行スピンドルターニングセンタ「2SP−2500H」を展示した。新型機械構造と高速ローダーによりラインタクトタイムを約20%短縮。プーリーの加工では総形バイスによるV溝加工を提案していた。
 「日中は難しい5軸加工をオペレータが付いて行い、夜間はイケールなどを使って多数個取りすれば稼働率を上げられる」としたのは松浦機械製作所。9月のEMOショーでも出品し、ポツポツ引き合いが出てきたという4パレット仕様の5軸立形マシニングセンタ「MX−520 PC4」を置いた。
 ワークの積載可能質量はパレット仕様で175キロ。大型ワークの自動化が可能だ。
「これをロボットでやろうとするとかなり大がかりな設備になる。しかもワークが変わると資格を持っている人がティーチングし直さないといけない」と、同機の扱いやすさを訴えた。
 無人での長時間稼動に最適なマシンとして安田工業がアピールしたのは、マルチパレット5軸マシニングセンタ「PX30i」。もともと欧米向けに開発した、33パレット・工具300本という長時間加工機だが、高精度や無人稼動を両立できるマシンは国内でも需要があると見て、本展での披露を機に国内販売を始めた。

進化する切削工具、1パス、マルチ、深彫り…

 切削工具、ツールホルダ関係の新製品も目を引いた。「常識をくつがえす。その意味を込めて製品名の頭に『ワンレボリューション』を入れた」と話すのは、オーエスジーが来春発売する予定のスレッドミル  「AT−1」の開発者。スレッドミルはめねじをつくるために必要な工具で、新製品では刃にあるねじれを「左」にすることで倒れを低減したほか、1パス加工で懸念されるビビリを不等分割・リード(スレッドミルでは「初めて」という)で解決した。
 三菱マテリアルは縦刃カッタのエンドミル「VPXシリーズ」を展示の目玉とした。新工具ブランド「DIAEDGE(ダイヤエッジ)」導入後、初の新製品。両面インサートを縦に配置することで加工負荷を受け止め、高能率加工でも耐欠損性を確保するのみならず、「彫りが深い独自のインサート形状で、ランピング加工から肩削り、ポケット加工まで、インサートを付け替えずにマルチに対応できる」とした。
 住友電気工業も縦置きインサート仕様の新製品を並べた。隅削りカッタ「TSX型」は研磨級チップの両面4コーナ仕様。粗から仕上げまで対応する。他社製品に比べて数倍に相当する連続加工が可能なほどの強度を持たせた。インサートは、リピータ、サイドカッタ、特殊なカッタなどにも使えるように統一化。被削材に、炭素鋼、SUSなどを想定して開発した。
 MSTコーポレーションは、複数種類のツールホルダによる金型深彫り加工を提案。粗取り加工に使用するカッタアーバ「FMH強力型」は、ボディの中心を超硬にすることで、長い突き出しによるビビリを大幅に抑えた。コーナ部分やポケット加工に対応する交換式アーバ「レッドスクリューアーバ」では、超硬一体型による高剛性設計をアピールした。
ホルダに絡む新製品では、山田マシンツールが展示したハイマテック社の測定システム「CyberCon4(サイバーコン4)」が印象的だった。EMOショーに出展した製品で、日本では初披露。回転工具のホルダに埋め込むだけで、稼動時間、回転数、温湿度などの項目を測定する。Bluetoothでデータを収集し、加工評価やメンテナンスに生かすことができる。