識者の目

ゼロエネ住宅 着実に広がるも「20年新築の過半数ZEH」には大きなハードル

 「ZEH(ゼッチ)化するのにどのくらいコストアップになるのかとよく聞かれる。だいたい125万円と答えてきたが、そうも言えなくなってきた」
 そう苦笑いするのは今年6月にできた(一社)ZEH推進協議会(東京都港区、小山貴史代表理事)の秋元孝之顧問。このZEH協はZEHを建てるのに必要となるZEHビルダー88社でつくり(10月末現在)、産官学の架け橋となってその普及を支援する。
 ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは住宅そのものの断熱性能アップと省エネ設備機器の採用により省エネ基準よりも20%以上のエネルギー削減をしたうえで、太陽光発電でエネルギー収支をゼロにする住宅のこと。経済産業省資源エネルギー庁の支援事業による2016年度の補助額は1戸当たり125万円(寒冷地を除く)だったが、17年度には75万円となった。これが冒頭の発言の理由だ。
 国の目標「2020年までに標準的な新築住宅でZEHを実現」(エネルギー基本計画〈2014年4月閣議決定〉で設定)を満たすにはハウスメーカー、工務店などが作る新築住宅の過半数がZEHになっていることが必要。2020年はすぐそこで本当にできるのかと心配するが、経産省の補助事業では16年度までに1万5千件ほどが交付された。着実に広がりを見せている。
 だが、ビルダーに視点を移すとまた違って見える。「現在6236社あるZEHビルダーのうち16年度にZEHを建てた実績がまだゼロのビルダーが実に62.7%ある。この現状はまずい。手がける住宅のうちZEHが占める割合が50%以上のビルダーはまだ7.0%(434社)に過ぎず、このままでは目標(上述の20年までに過半数がZEH)達成は難しい」。
 COP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で採択されたパリ協定で、日本は30年までに13年比でCO2排出を26%削減すると宣言した。「かなり野心的な目標だが、これはあくまで日本全体の数字。家庭部門に限れば4割削減しなければならない」。そのためにはさらに強力にZEHを進めていく必要があると秋元顧問は言い、「戸建て住宅に加え、集合住宅も対策が必要だし、新築だけでこれをカバーしようとすると何年経っても実現できない。既築住宅の性能向上も並行して進めていく必要がある」と訴える。
 ZEH化しにくい住宅にむしろ目を向ける。太陽光発電設備の導入については低日射地域または多雪地域(北海道、東北・北陸・山陰地方など)や首都圏の狭小地、台風や塩害が頻発する地域(沖縄県など)を挙げる。また、「延べ床面積と屋上面積の関係上、3階建ての住宅であればネットゼロ、5階建ての住宅であればNearly ZEH(75%省エネ)が可能だろうか」と集合住宅の在り方やその普及施策を模索する。
 (11月15日、東京で開かれた「Japan Home & Building Show」の講演会「ZEH市場の今後の展望」から)

(一社)ZEH推進協議会 顧問 秋元 孝之 さん(芝浦工業大学 建築学部建築学科 教授)