連載

2017年12月10日号

ABBと川重が協働ロボで協業

操作共通化や安全基準確立へ

 産業用ロボットメーカー大手2社が国境を越えた協業に踏み切り、ロボット普及に向けた最大の課題「EASY to USE」(導入しやすさと使いこなしやすさ)の解決に踏み出した。
 その2社とは川崎重工業と、スイス・チューリッヒに本拠地を置くヨーロッパ最大のロボットメーカーABB。ともに産業用ロボット世界シェアの上位にランクするビッグカンパニーだ。両社は国際ロボット展の開幕を2日後に控えた11月27日、都内で共同記者会見を開き「協働ロボット」分野における協業に合意したことを発表した。
 当初は協働ロボットの中でも人間のように2本の腕で作業をこなす「双腕ロボット」に焦点を絞って協業を進め、プログラミングや周辺機器とのインターフェース、通信などにおける基本技術の確立を目指す。
 人が接触すると動作を停止するなど一定の安全基準を満たす協働ロボットは、2013年の国内規制緩和により、最大出力80W以上の機種でも安全柵で囲わず人と同じ作業エリアで働けるようになった。2社の協業では、安全基準やソリューションをさらに現場に応じたものに進化させ、安全性を広くPRし、政策当局などにも共同で働きかける考え。「人と同じフィールドで働ける協働ロボットは、労働力不足の課題解決に役立つ」(川崎重工業・ロボットビジネスセンター長の橋本康彦氏)、「大手製造業のみならず、人的資源に乏しい中小企業、そして町のパン屋など生活分野にまでも協働ロボットのユーザーの裾野を広げたい」(ABBグループ・ロボティクス事業責任者のパーベガード・ニース氏)という。

■協業の広がりに期待
 国際ロボット展では両社のブースと特設ブースの計3カ所で、双腕ロボット2台(川崎重工業の「duAro」、ABBの「YuMi」)が協働で基盤上の繊細な部品を組み立てるなどのデモを見せ、「今後、操作性系を両社で共通化させていく」(ABB)と協業の方向性をアピールした。
 ABBによれば「操作系の共通化は自動車の運転教習と同じイメージ。本体はメーカー別に特色があっても、ティーチングやプログラムの教育を2社分実施する必要がなくなり、導入時の負担を減らせる」(同)。蓋の取り外しなどねじる動作も得意な14軸構造のYuMi、スカラロボがベースで移動させやすく安価なduAroの2機種を、作業や目的に応じて使い分けやすくなるという。
 米調査会社ABIリサーチの調査によると、協働ロボットの世界市場は2015年時点で9500万ドル・3030台。産業用ロボット世界市場全体(15年:約100億ドル・25万台)のわずか1%に過ぎなかったが、ABIリサーチでは「協働ロボットの世界市場は2020年までに10億ドル・4万台規模にまで成長する」と予測した。
 潜在成長性の大きい協働ロボットは、いわば産業用ロボットのマーケット全体を広げるドライバーの位置づけにあり、「2社協業のスタートポイント」(ABBのニース氏)。ニース氏は、多軸ロボなど他機種での操作系の共通化や協業先企業の拡大の意向を問う協業発表会見での質問に否定の意を示さず、「産業用ロボットのマーケット全体を広げることに意義があり、ユーザーのベネフィットを追求した取り組みを進めていく」など今後に含みをもたせた。協業の広がり、そして「EASY to USE」の広がりに期待がかかる。