コラム

2018年1月25日号

 顔なじみの他紙の記者と数年ぶりにサシで夕食。アルコールが進むうち相手はトーンを上げ「記者に必要なのは3Kだよ」と切り出した▼記者の3K? 聞くと「興味・関心・好奇心の3つだ」という。ほう初耳。言い得ているかもなと応じる▼「この3つがあれば気づきができる、会話が進む。情熱も出る。でも、用意した質問の答えを取るだけ、なんだか人間らしい気持ちの無い取材が周囲で増えていないか」。当人、言いたいことが溜まっていそうだ▼確かに記者会見でも、聞き手の記者が黙々とノートパソコンを叩くだけの、のっぺりとした状況が今やスタンダードに近い。質問は後で個別にじっくりという向きもいるのだろうが、多くは終わるとそそくさ、無表情で会見場を後にする▼人間らしい会話や交わりから遠く、人が対峙するときのピリッとした緊張感もない。書記ならAIに任せた方が正確で気の効いたまとめができそうだ▼「そう、気持ちがないから相手の懐に入れない。本音を引き出せないし話が広がらない」。「無駄を排除し、効率だけ追うからつまんない。無駄話にこそ価値があるんだよなぁ」…。話は右に左へ脈絡無く流れ、全国どこの酒場にもある親父の会話とあい成った▼裏通りの老舗蕎麦屋を早めに切り上げ、外国人旅行者と若い人で賑わう華やいだ表通りでその記者と別れた▼ああそうだ、説教したりくだを巻く、親父たちの酒場の景色ももう時代遅れかな…独りごちる▼いや、時代は変わるが、全てに膝を屈するわけにもいかない。取り戻すべき何かが、社会の中に眠っている。