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新年モノづくり業界展望

―今号(1月25日号)の紙面特集より、ここでは「新年モノづくり業界展望」を掲載―。
 国内モノづくり業界は政策支援の後押しも効き、この新年、積極姿勢が目立っている。新年の産業展望として、好調な設備投資を象徴して受注を拡大する「工作機械」、増加する旅客需要を背景に中長期的に高成長が見込める「航空機」、そしてここ、鉄骨ファブリケーターの稼働率が高まり東京オリンピック・パラリンピックに向けいよいよ回復待った無しの「建設」。これら3業種を展望してみた。

工作機械、受注額年1.7兆円も出荷面で一抹の不安

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 2018の年間受注額は1.7兆円―。その発表の瞬間、会場がどよめいた。1月11日、都内のホテルで開催した(一社)日本工作機械工業会の新年賀詞交歓会のひと幕。壇上の飯村幸生会長は、会場に響き渡った感嘆と拍手を一旦打ち消すように受注予測値発表の直後、「(受注は伸びるとみるが)部品供給の制約が顕著。関連企業の皆様にはどうかご支援をお願いしたい」と、口元を引き締めて挨拶を続けた。
 日工会の中堅幹部によると、当時集計中の12月の実績が思いのほかよく、既に昨年の年間受注額が史上初めて1.6兆円を超え、1兆6500億円に肉薄することを読んでいた。(その後昨年実績1兆6456億円と発表)、「続く今年は好調が広がり1.65兆円以上が確実と踏んだ。ただどれだけ1.65を超えるかまでは詰めておらず、例年500億円単位で発表していることにならい、1.7兆円予測とすることに落ち着いた」とコメントした。要は、今年さらに伸びることはまず間違いないということらしい。
 ただ飯村会長が「部品供給の制約が顕著」と言ったように、受注に対し出荷(売上)実績が十分伴っていない点には懸念がある。
 要素部品が思うように手当てできず納期が長くなっているが「それだけでなく機種によっては納期回答が難しく、売上も立たないでいる」(中堅工作機械)そうだ。ロボットなどと違って日工会が受け持つ工作機械の統計調査は「受注額オンリー」。そこで飯村会長に直接問うた。「出荷ベースでみるときっと見劣りするはず。それに企業によって部品調達力に差があり、これが出荷実績の差となっていることもうかがえるが…」。
 返ってきた答えは案外シビアだった。「私もそこを心配している。最も懸念すべきは、調達力の差がそのままメーカー格差を広げるきっかけにならないか、という点だ」。

■EV化を恐れるな
 工作機械関連業界のリーダー専門誌として知られるニュースダイジェスト社も工作機械の見通しを独自に調べ、毎年同社の賀詞交歓会で発表しているが、例年、日工会の予測より「厳しい、低めの数字を出す」と評される同社予測も今年の年間受注額を1・7兆円と日工会と偶然一致する強気の数字に弾いた(発表1月12日)。
 想定すべきリスクとして同社は、まず半島での有事を上げ、これに伴う急激な為替変動、原材料の高騰、工作機械輸出規制の強化などが足を引っ張る恐れがあるとした。同時に中国の経済・金融動向や、重要部品の納期遅れなどを懸念材料に上げた。しかし基本的には、業界は上向きが続くとの見方。「好不況のサイクル面から分析しても好調期は続く。工作機械供給量の限界まで受注が伸びる」等の説明があった。
 一方、工作機械産業にとって先行き負の材料とされる「クルマのEV化」については、「EV化で工作機械需要が減るという一本調子の議論はいい加減止めにしよう」と同社サイドで投げかけた。同社賀詞交歓会で恒例のインタビューでは、自動運転にも絡んでクルマに搭載するモニターやセンサーの急増が予想されることや、数多くのモーターを支える軸受の加工需要増に目を向けた話が大手自動車メーカー、大手工作機械メーカーの幹部/代表から相次いだ。

■全天候型ではない
 このように工作機械は足下がよく、クルマ依存度が高いとはいえ来るEV時代にも活躍が見込めるらしい。ただ企業によって伸び率にはかなりのバラツキが見られるし、細かく言えば「中・大型機械の動きがもう一つ」(複数のメーカー)など機種によっても凸凹がはっきりある。
 EVについても、中国・BYDのある幹部など弊紙の問いに「近い将来100万円を切るEVを売り込みたい」(昨年末)と答えており、EV車体の価格低下が急速に進むとなれば、必要な金属加工も「早く・安く」が求められ、ビジネスとしての厳しさが増す恐れがありそうだ。
 目下、豊穣な森に見える日本の工作機械業界だが、森のなかに入ると倒木もあれば荒地もあることに気づく。そして今、森そのものを次世代に向け変革する試みが問われる。世界競争の視点でいえば、日本勢は機械の信頼性や精度で経験の差を活かせるが、今課題になるのはIoTやAIなどほとんどアドバンテージの無かった世界をどう取り込んでいくかだ。業界は好調だがほんの小さな油断や緩みが将来を暗くすることになりかねない。

航空機、単路機中心に受注残1万3千機、旅客増加で今後20年強気の見通し

 日本の航空機生産市場が右肩上がりから減少に転じている。(一社)日本航空宇宙工業会の調査によると、2015年度に生産額1.8兆円を記録して以降、16年度に実績額1.7兆円へ落ち込み、17年度も同規模に留まる見通しだ。
 生産縮小の主な原因は民間機向けの機体用部品。とくに16年度はボーイング777の生産減を背景に前年から1368億円減少している。
 同調査は会員26社を対象にしたもの。今後について、「防衛向けではP−1固定翼哨戒機やC−2輸送機などの調達に伴う安定的な生産が期待されるが、民間向けではボーイング社の受注機数が減少する見込み」と予測している。
 ただ中長期的に見れば、「市場の後退は一時的なもの」との見方も根強い。根拠となるのが航空機メーカーの受注残。今年1月の発表時点で、ボーイングが5864機、エアバスが7265機に達している。
 ボーイングは17年の民間航空機納入数について、業界記録を塗り替え、6年連続で業界トップを維持したという。納入数は736機。純受注数は単通路機とワイドボディ(双通路)機への堅調な需要を反映し、912機を獲得した。「受注残はおよそ7年分の生産機数に匹敵する」(同社)という。
 今後20年間の見通しも、依然として強気の姿勢を崩さない。新造機需要は機数ベースで4万1030機(6兆1000億ドル)。民間航空機部門のマーケティング担当バイスプレジデントのランディ・ティンゼス氏は 「強い伸びを見せている旅客機は、今後20年にわたって毎年4.7%のペースで増加する」(17年6月)と見ている。
 旅行客増加による単通路機市場の需要が、アジア太平洋地域の新興国を中心に高まっているためだ。LCC(ローコストキャリア)人気も追い風となり、単通路機の新造機は2万9530機と予想している。一方のワイドボディ機の新造機は9130機。今後10年間の早い時期に、旧式化した機材の代替需要の大きな波が到来するそうだ。
 エアバスも明るい見通しを発表している。今後20年間で、旅客機3万4170機、貨物機730機、金額ベースにして5兆3000億ドルが必要になるという。ボーイング同様、新造機需要の主役は単路機。その割合を70%以上と予測している。
 部品製造の受注獲得に向けた動きは激しさを増している。ただ日本は市場シェアにおいて米国などを追う格好だ。前出の(一社)日本航空宇宙工業会によると、民間と防衛の分野を含む航空宇宙工業の売上高は2015年時点で約4097億ドル。そのシェアは米国の54%に対して、日本はわずか4%(174億ドル)だ。
 認証取得、品質管理体制の構築が求められる航空機の世界。部品調達にあたって、工程ごとに製造を依頼し、部品が発注者(ティア1)と受注者(ティア2)の間を行き来する「ノコギリ発注」が行われている。その一方でサプライチェーンという「線」を、国全体の「面」につなげることで産業発展に生かす動きも本格化しており、経済産業省は「全国航空機クラスター(集積)・ネットワーク」構築に向けて動き出している。
 ネットワークの参加対象は全国各地に点在する40を超える部品生産グループや研究会など。地域のクラスターに関する国内外のティア1などからの問い合わせ窓口を一本化するほか、各組織の情報共有などの体制を整備する。

建設、鉄骨需要550万トン首都中心に仕事量確保、中小案件増加製作能力不足も

 建設業界は、爆発的な需要に対する期待は薄れたものの、昨年同様の安定した需要が継続するとの見方が主流だ。2017年度上半期の推計鉄骨需要量は前年度比3%増の274万トン。年率換算では550万トン程度で落ち着くようだ。
 建設業の市場規模は、政府、民間、民間非住宅合わせた名目建設投資額で50兆円強(=グラフ)で推移している。常盤橋、虎ノ門など、東京五輪以降も続く、鉄骨需要10万トン規模の首都圏大型再開発プロジェクトが依然として話題に上る一方、外国人観光客の増加に伴う飲食・宿泊関連施設の着工、業績が回復している製造業向けの設備投資が弾みをつけている。
 さらに物流施設、大型商業施設などの案件が本格化したことも追い風になっている上、「市中取引の大半を占める中小物件向けも増加傾向にある」(建設物価調査会)。
 同調査会が1月に発表した都内主要建設資材動向によると、ビルの鉄骨に使用するH形鋼(鋼材)の価格動向は「強腰姿勢に変化なく、なお強含み」の状況だ。原料や副資材価格の上昇を背景に、主要電炉メーカーが2カ月連続で製品の値上げを発表。流通業者は採算悪化に対する危機感から「これまでの仕入れ高分を含め販売価格を引き上げようと売り腰を強めている」という。
 順調な需要が見込まれる一方、鉄骨・鋼材を加工するファブリケーターは現在の繁忙期を手放しに喜べる状況ではない。関東圏を中心に稼働率90~100%の高水準を維持しているものの、図面承認の遅れなどによる工程のズレ、人手不足などを背景に、地域や時期によって製作能力不足が懸念されているからだ。
 (一社)全国鐵構工業協会の米森昭夫会長によると、「とくに超高層ビルに多く使用される高規格鋼材適用物件については、物件ごとに施工試験が求められるために、さらに多くの時間を要する。建設工程全体の遅延にもなりかねないので、迅速かつ効率的に対応できる仕組みをつくっているところ」(2018年年頭所感)という。
 製作能力の不足、RC造(鉄筋コンクリート構造)の設計変更は、加工案件の多くを占める中小物件にも大きな影響を与える。米森会長は需要に応えていく努力と工夫が従来以上に重要になっているとしながら、設備投資の検討もうながす。「将来の需要減少のことを考えると避けるべきだが、働き手が減る中でも仕事をこなすための、省力化・効率化の設備投資はぜひ実施していただきたい」とした。