識者の目

ロボット利活用、SIerとともにしたたかに

 日本ロボット学会の2代前の会長で、今も日本ロボット工業会・システムエンジニアリング部会長など、産業用ロボットに関し複数の肩書を持って活動する小平紀生氏(三菱電機主席技監)。同氏は、システムインテグレーター(SI)によるマルチなソリューションこそが、ロボット活用の成果を広げ、ロボット産業の発展と、モノづくり競争力の高まりを導くと強調する。

■ロボット利活用に再考余地
 産業用ロボットは人手不足を背景に国内においても本格普及期にある。しかし同氏は、単なる人からロボットへの置換では導入効果に限界があると、次のように指摘した。
 「生産システムは進化すべきものですよね。そこに人がいれば工夫がでるし、改善も進むでしょう。ところが現状のままロボットに置き換えてしまうと、進化が止まることがある。改善の余地がある製造・生産工程を自動化し、その余地をふさいでしまったケースは少なくないように思います。周囲と同じような置き換え型のロボット活用で本当に競争に勝てますか、そう言いたいですね」
 「なにかと話題の協働ロボットについても、人と協働できる仕様だとやはりトルクが低いし生産性は落ちる場合が多いんです。多くの場合、柵の中に置いたロボットをぶん回した方が効率が上がる。そのあたりを熟慮し、自分が何をやりたいか、どうしたいか答えを出すことが各ユーザーに問われます。ロボット化という入口はいいけど、ポイントはもう一歩突っ込んでしたたかに活用することです。例えばロボットを囲った柵の中に時折人が手を突っ込んで、ロボットを制御しながら作業することも安全規格(ISO10218等)に沿って可能です。そうしたしたたかな活用、ベストソリューションをどうやって導くか。私が思うに、やはり肝要なのは優れたSIといっしょになって全体最適に取り組むことだと思います」

■SIの協会、今夏にも
 システムインテグレーターなしに産業用ロボットの活用価値を最大化するのは難しいとする同氏。最新のトピックとして、年内に旗揚げするSIの協会について語ってくれた。
 「一部で概略が報道されていますが、全国のSIが会員として集う協会が今夏にも立ち上がります。名称案として《FA・ロボットシステムインテグレーター協会》が有力視されています。FAはファクトリーオートメーションではなく、工場以外でもロボットは活用されますから、フレキシブルオートメーションとの意味あいになります。会員候補として全国のSI100社くらいが上がっています」
 「政府のロボット新戦略の実践部隊として3年前に設立したロボット革命イニシアテイブ協議会のロボット利活用ワーキンググループでSIの事業環境改善が大きな課題として議論され、事業活動の参照として《スキル標準》と《プロセス標準》の初版を策定しました。スキル標準はSIが備えるべきスキル、プロセス標準はSIが仕事を進めるプロセスの典型を示したもので、例えばプロセス標準には、契約締結のタイミングや分割検収といった考えも織り込んでいます。その流れを深堀発展させることも踏まえ、独自の協会を作ろうと昨年11月にキックオフミーティング実施とあいなったんです。」
 「SIが育ちやすい環境、儲かりやすく高度にスキルアップできる環境を整えられれば、ひいてはそれがロボットの最終ユーザーにとってメリットになる、市場の拡大にもつながる。かねてから業界はそんなふうに渇望していました。その思いが実現に向け動き出すことに大いに期待しています」

(一社)日本ロボット工業会 システムエンジニアリング部会長 小平 紀生 氏