連載

2018年2月10日号

独自技術で「塩尻から世界へ」

次の一手、生み出し続ける開発力
サイベックコーポレーション[超精密金型開発、プレス加工]
長野県塩尻市

 100年続くワインの産地として知られる長野県塩尻市。南アルプスを臨む雄大なこの土地に、「塩尻から世界へ」を目指す加工事業者がある。超精密金型とプレス加工のトップランナーとして業界の注目を集める、サイベックコーポレーション(平林巧造社長、従業員数85人、創業1973年)だ。
 金型設計からプレス加工まで自社で一貫し、売上は17年3月期で約25億円、比率は電動VCTのギヤ部品やシート部品など自動車関連が約75%。同12%の電気関連でもドットインパクトプリンタの電子部品で世界シェアトップ(約3割)を握る。
 平林社長は「国内マーケットの将来的な縮小は避けられない現実。現時点で17%の海外販売比率を4割に引上げようと、約7年前からドイツ企業への営業開拓を始めた。ドイツ企業はアジア企業に比べて技術の強みを理解してもらいやすく、既にアジア市場向け(自動車部品)の供給拠点としても認めてもらえるようになってきている」と未来を見据える。

■CFP工法や地下工場
 1980年代から独自に開発してきたCFP(Cold Forging Progressive)工法が、同社の技術の根幹にある。CFP工法とは、1つの金型に多数の工程を盛り込める順送プレスと、冷間鍛造技術を組み合わせたもの。「厚みのある多段形状の複雑部品でも高精度にプレス成形できるため、焼結や切削からの工法転換で大幅なコスト・時間の削減が可能になる」(同社VT研究所の長田直樹主幹技師)。
 CFP工法の開発は2~3ミリ厚のプリンタ部品からスタートし、徐々に対象部品の厚みを増やして2000年ごろから自動車部品にも展開。最大厚6.5ミリのサイクロイドギヤ部品ではMC切削加工からの工法転換で、±1ミクロンの精度を維持しつつ、成形コストを約6分の1に削減し、生産性を60倍に高めることに成功した。
 CFP工法向けにMCやプレス機もメーカーと共同で開発。「通常のプレス機では上部スライドが傾いてしまう」(同)ため、コラム剛性を通常の10倍に高めた特別仕様機なども開発した。さらに金型精度向上に向けては、07年、地下11メートルにある金型加工場「夢工場」が稼動。外気の影響を受けにくい地下では23℃±0.3℃の恒温環境を維持できる上、大型プレスなどによる振動を抑える効果も高い。振動レベルは地上の半分以下(19dB)。自社加工試験では面粗度が地上Rz0・68ミクロンに対し地下が同0・31ミクロンに向上した。

■自社設計の減速機
 こうして強みのCFP工法を磨いてきた同社だが、長田氏は「資金力の大きい中国企業など、同業他社の追い上げは激しい。ユーザーニーズを常に聞き込み、次の一手を繰り出し続ける必要がある」と言う。
 「次なる一手」の一つが、「サイクロイド減速機」だ。自動車の電動化で減速機のニーズが急拡大すると見込み、2009年、歯形から自社設計での開発を始めた。客先から求める仕様やトルクを元に自社で減速機の構造を設計し、減速機効率、振動や音の解析なども自社で評価。自動車ティア1からの引き合いも多く、福祉・介護用ロボット向けなど多分野への展開も視野に入れる。
 ほかにも、燃料電池用金属セパレータ、PHV向けの電池蓋など、自動車の地殻変動を見据えた開発を全方位で展開。厳格化する検査要求に応えるべく、検査ラインでは自動化やデータ分析の高度化なども推し進めている。