連載

2018年2月25日号

シーメンス、マインドスフィア新版で反攻の狼煙

低価格で中小製造業マーケットを狙う

 「シリコンバレーのIoTの定義は『民主化』。これまで大企業だけが独占してきたような情報や、それをコントロールする力を誰もが使えるようにならなければ意味が無い。だからこそ、我々は万人が使えるシステムを提供する」。シーメンス日本法人の島田太郎執行役員は、2月8日に都内で行われたIoTオペレーティングシステム「MindSphere(マインドスフィア、以下MS)」新版リリースの発表会でこう語った。
 最新版MSはAWS(アマゾンウェブサービス)に対応。開発者のための分析機能やデータサイエンティストのための作業スペース、アプリやサービスの売買が行えるマーケットプレイス「MSストア」を用意した。特に強調したのは、他社IoTソリューションやFA機器との親和性だ。
 「弊社が作ったものを使わなければならない、ではなく普段皆さんが使い慣れているツールがマインドコネクトを介して繋がる。DELLエッジゲートウェイ、アパッチにセールスフォース、ラズベリーパイなど、メジャーなプロトコルの大半を接続可能にした」(島田執行役員)
 エッジ領域との連携についても、シ社は自信を見せる。昨年発足したエッジクロスコンソーシアムに参加していることを引き合いに出し、「完全なデジタルツインを実現するためには、エッジ処理が必要不可欠。エッジクロスの情報はMSに繋ぐと明言しているし、許可も得ている」という。
 会見に先立って発表されたのが、制御盤メーカーのアイデン(石川県、池内保朗社長)への導入事例だ。同社工場内にはコマツ、アマダ等の工作機械があるが、これらの詳細な稼動データを抽出し、MSで可視化、分析し業務の改善につなげている。同ケースでは、立ち上げ期間1カ月で国内3工場、ベトナム工場をネットワーク化した。初期投資はおよそ350万円、これにものづくり補助金を活用し、実質負担はグッと抑えられているという。
 また、従来の従量制から定額制へ料金体系を刷新。企業のボリュームや目的に合わせたメニューを用意し、最も安いプランは月額4万円を切る。同社が意識しているのは、意思決定の早いオーナー企業が多い、中小製造業のマーケットだ。「破壊的な価格と自負している。中小企業の親父さんの1ヵ月の飲み代程度でMSは運用できる」(シーメンス日本法人、藤田研一社長兼CEO)。

■ライバルGEとの熾烈な戦い
 MSにとって目下、最大のライバルはGEの「プレディクス」だ。こちらは他社に先駆けて2014年にリリース、日本でもすでにNEC、LIXIL等が導入している。だが、シ社は「ウサギとカメ」になぞらえて、GEとの違いをハッキリと強調する。
 「我々は産業分野において、元来しっかりとした土台があり、カメのように着実にやってきた。買収した会社で一足飛びにやったGEとは、根本的なスタート地点が違う。最大の違いはデータセキュリティに対する考え方。我々は顧客のデータに一切触れない。様々なAPIをライブラリとして提供し、顧客が取得されたデータをおのおの活用していただく。この点は多くの企業から高い評価を頂いているところだ」(島田執行役員)。
 強烈なライバル意識をむき出しにするにはわけがある。現在、両者が競合しているのは主に発電分野。世界的な火力発電需要の減少で、共に新たな事業戦略としてデジタルプラントの構築を推進しているからだ。
 藤田社長も「今後も発電分野ではGEと熾烈な戦いが繰り広げられるだろう」と本音を覗かせる。それゆえ、後発ながら得意とする産業分野では負けられない、という思いがひしひしと伝わってくる。