連載

2018年5月15日号

ファナックが全事業でAI適応加速

深層学習アプリ、エッジを賢く制御

 ファナック(稲葉善治会長)は4月16~18日、山梨県忍野村の本社で新製品発表展示会を開催し、メインの後半2日間のみで一般ユーザー、販売店など約7000人が来場した。注目はロボット、FA(NC・サーボ)、ロボマシンの3事業すべてでAI(人工知能)適応の進化を見せたことにある。
 昨年10月に基本システム完成を迎えた製造現場のIoTプラットフォーム「FIELD system(フィールドシステム)」は今回展を機に第2版を発売。ファナック製ハードウェア(産業用PC)「FIELD BASE Pro」がNVIDIA社の「Tesla P4 GPU」に対応できるようになり、従来のCPUのみでは対応が難しかった深層学習などの高度なAIアプリケーションをエッジ(機器)側で実行可能になった。
 このGPU対応と同時に、フィールドシステムの新アプリとしてファナック製ロボットに対応する「AIバラ積み取り出し」を発売した。深層学習によりロボットが自動的に取り出し順番の学習を行うことで、システム立ち上げ時間が大幅に短縮できるもの。AIベンチャー・プリファードネットワークス(PFN)との協業当初(15年)から開発してきた機能で、PFNの西川徹社長は「ロボットに深層学習を応用した初めての製品として発表できることは非常に意義深い。深層学習の適応領域をより広げ、賢いロボット、賢い工作機械の市場投入を加速させたい」とコメントした。
 会場ではロボットによるバラ積み板金ワークの取り出し実演で同アプリの機能を紹介し、「熟練者のティーチングで45時間かかった作業が20時間にまで短縮できた。一般機械産業のほか、三品業界などロボット活用に不慣れな現場での採用を広げたい」(ロボット事業部)。
 ロボット事業ではそのほかにも、実軌跡と教示軌跡との差分を学習して補正する「AI軌跡制御」をロボットの新機能として披露(8月頃発売予定)。レーザー切断、ウォータージェットのアプリケーション等での活用を想定しているという。フィールドシステムの新アプリ(来年度発売予定)としては、ロボット内部のモーター、ギヤ、ベルトなど減速機以外の異常も早期に検知できる「AI軸異常検知」も見せた。
 また、ロボマシン事業では「AI熱変位補正」のオプション機能をワイヤカット放電加工機「ロボカット」(昨年11月)に続き、ロボドリルでも発売した。「機械学習による熱変位補正で加工精度を約40%改善できる。認知度を高め幅広いユーザーに訴求する」(ロボマシン事業本部小嶋部長)。FA事業では、機械学習を用いてサーボモータの加減速時の機械振動を抑制し高品位加工を実現する「AIサーボチューニング」を発売した。

 エッジの指令機能も
 フィールドシステムではAI適応のみならず、実使用拡大に向けた基盤を着々と固めている。今回展を機に発売した第2版は新たにエッジ機器への指令機能を追加したのも大きなポイント。「データを収集するのみならず、収集データの解析結果を素早くエッジ機器の制御に生かす『エッジヘビー』なシステムの基盤が整った」(同社)。
 また、各エッジ機器から収集したデータの時刻や生産物の位置・個数などの重ね合わせ精度を向上させデータベースで記録・管理しやすくする機能などを追加。エッジ機器との通信を行うソフト(コンバータ)の開発キットも公開し、つながる機器を増やす素地も整えた。今秋発表予定の第3版ではさらにクラウドやMES/ERPとの接続も予定しており、現場から経営までシームレスにつながるようになる。
 フィールドシステムのパートナー企業は4月17日時点で468社。発売済みのアプリはファナック製6本を含む7本とまだ少なく利用も十数社に留まるが、パートナー側では稼働監視や故障診断、加工精度管理など7つのカテゴリでアプリ開発が進む。自社でも稼働監視アプリを活用しながら現場目線の開発を進めており、次の展開に期待がかかる。