コラム

2018年6月10日号

 物はいいようといって、言い方次第で受け手の印象が違ってしまうことは多い。販売の現場を取材しても「まだ実績は皆無だが準備は整った」と聞く時と、「準備は整ったが実績はまだ皆無です」では、似ているようで期待値が全く異なるほどの開きがある▼こういう場合、発言をそのまま写し取るんじゃなく、再確認したり、別の角度から質問を重ねてより現実に近い言葉に変換する作業が欠かせない▼そのへんのセンスというか、もっといえば良識みたいなものがいま、消失してきてはいないか。取材者だけの話ではない。「アナタこういったじゃないか」―政界から雑踏の言い争いまで、問い詰め、追い詰めとかまびすしい▼昔の人は器が大きかったなどと聞いて、妙に納得するほどだ。窮屈で世知辛くなった世の一面を実感してしまう▼いや、ボヤ気は止め、次のような「言いよう」を皆さんどう思われるか。絶好調の半導体産業の周辺で耳にした話。旺盛な設備投資が続くが、設備メーカー側に危機感が覗く▼「納期が伸びに伸び、2年ものもある。かたや業界には再びM&Aの嵐が吹きそうで、発注者が買収され設備計画が立ち消えになるかもしれない。そうでなくとも部材の値上がりで初期の見積りがあわなくなっている」▼そうトップが述べたこの会社、目下業績好調ながら「経営の舵取り一つで、この先ドン底に落ちかねない」とさえ言う。うらやましい悩みでも、うれしい悲鳴でも、もちろん無い。切羽詰っている▼「おかげさまで順調」で始まったこの取材、途中で止めていれば全く違う話になった。