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鉄骨需要再燃、年間520万トンからどこまで伸びるか

―今号(6月10日号)の紙面特集より、ここでは「鉄骨需要再燃、年間520万トンからどこまで伸びるか」を掲載―。
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2020年夏に完成予定の「Hareza池袋」。
高さ158mの超高層ビルを建設する

 鉄骨需要が上向いている。2017年度実績の520万トンから上積みするのは、東京オリンピックだけではない。都市再開発、インバウンド需要、Eコマース、インフラ整備、超高層マンションなど、材料はいくらでもありそうだ。

東京五輪後も再開発

 巨大なクレーンがビルのすきまから顔を覗かせ、鉄骨や資材を満載したトラックが建設現場をひっきりなしに出入りしている。東京都内ではそういった光景が至るところで見られる。
 2020年に開催を控える東京オリンピックがまず思い浮かぶが、新宿、池袋、渋谷などの主要駅周辺では大規模な再開発計画が活発だ。
 その一つが、豊島区庁舎と豊島公会堂の跡地に建設中の「Hareza池袋」。池袋駅から徒歩5分のところにある敷地(6603平方m)に、高さ158mの超高層ビル、ミュージカルから宝塚歌劇、伝統芸能まで対応できる新ホールなどを建てる。
 豊島区は、今回の建設計画を「国際アート・カルチャー都市」のシンボルプロジェクトとして位置付ける。それを強調するフレーズとして、工事現場のフェンスに掲げられた看板には、完成予想図とともに「誰もが主役になれる劇場都市」「広場を囲む『8つの劇場空間』が生み出す 圧倒的なにぎわい」の文字が大きく書かれていた。完成予定は20年夏。ちょうどオリンピックが開催される時期だ。
 世界に「東京」の存在感を示す絶好の機会となるオリンピック。残り2年間が鉄骨需要の山場になることは間違いないが、それ以降も都内の再開発は続く。オフィスや商業施設などの3棟で構成する渋谷駅周辺のモデルプロジェクト(敷地面積1万5300平方m/27年度開業予定)、約10年かけて再開発する東京駅前の常盤橋プロジェクト(3万1000平方m/27年竣工予定)などがそうだ。
 今年2月、東京都と新宿区が発表した新宿駅周辺の「拠点方針再整備方針(案)」にも注目が集まっている。駅周辺は築50年以上の老朽化した建物が集積。販売額や売場面積がほぼ横ばいであることに加えて、他地域で開発が進んでいることから「新宿の相対的な地位が低下」(東京都と新宿区)しているという。
 課題の一つだった徒歩によるアクセスの悪さは、現在工事中の東西自由通路(20年完成予定)とともに、線路上空に通路デッキを新設することで解消させる。更新期を迎えた駅ビルは建て替え、駅、広場も含めた「一体的な再現」を進める予定だ。

設投一服も、さらなる効率化求む

 鉄骨加工を担うファブリケーターはすでにフル稼働。首都圏だけでなく、北関東や東海などの近郊エリアが繁忙期を迎えたほか、全国的にも高水準の工場稼働率を維持している。
 1980年代から90年代にかけて導入した生産設備の更新は落ち着いた模様。ファブリケーターの業界団体である(一社)全国鐵構工業協会の米森昭夫会長は年頭、需要に応えていく努力と工夫がこれまで以上に重要になっているとしながら、設備投資の検討もうながし、「将来の需要減少のことを考えると避けるべきだが、働き手が減る中でも仕事をこなすための、省力化・効率化の設備投資はぜひ実施していただきたい」とした。
 提案する生産財メーカーも「人手不足をカバーする自動化、経験の少ない人でも簡単に扱える操作性など、これからは付加価値で需要を掘り起こす必要がある」(鉄骨加工機メーカー幹部)、「3層で6パス必要だった溶接が、2層で2パスになればそれだけ効率は上がる」(溶接機メーカー幹部)など、視点を変えた提案が目立つ。
 数年前まで業界の課題だった加工賃の是正は多少改善されたものの、工程の上流にあたる図面・仕様決定の遅れ、運送業者の確保、人手不足など、需要拡大で顕在化した問題が山積している。先に挙げた再開発事業の多くは10万トン規模の鉄骨需要が見込まれる分、一部エリアで製作能力不足が懸念されるうえ、工程のズレが生産・納期計画に大きな影響を与えている。
 なかでも業界で懸念されるのは、超高層ビルに使用される高規格鋼材適用物件。施工試験に多くの時間を要するため、建設工程全体の遅延にもなりかねないことから「迅速かつ効率的に対応できる仕組みをつくっているところ」(前出の米森会長)という。

建設投資53.8兆円に

 鉄骨需要量は17年度実績で前年度比2.1%増の520万トン(=グラフ)。冒頭触れたとおり、数字こそ微増ながら好材料は多い。外国人観光客の増加に伴う飲食・宿泊施設の着工、収益改善を背景にした製造業の設備投資、Eコマース拡大による物流・倉庫施設の新設、停滞していた超高層マンションの復調(=右下に関連記事)などが追い風になっている。
 足元の状況もまずまずといったところ。経済産業省が四半期ごとに発表している鋼材需要予想は18年4月~6月期で2322万トン。造船、産業機械などの製造部門も含めた数値で、前年同期比1.8%増、前期比2.22%減となる見通しだ。
 建設部門は「公共・民間土木工事の堅調な推移や、首都圏再開発、五輪関係物件などの民間設備投資の緩やかな増加に伴う非住宅向け需要の増大が見込まれるものの、住宅部門で持家・貸家需要の減少が見込まれ、前年同期比で横ばい。土木部門の季節的要因により前期比では減少」という。
 建設投資額の動向にも目を向けたい。(一財)建設経済研究所が今春発表した予測によると、18年度は、政府、民間住宅、民間非住宅の合計で前年度比0.1%増の53兆8600億円。工場などの建築着工床面積は企業収益の改善で好調だった前年度から転じて0.2%減少。それに対して、住宅着工数は消費増税の駆け込み需要で「持ち家と分譲戸建の着工数が増える」と予測し、前年度比1.3%増とした。