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2018年版「中小企業白書」

「人手不足」と「生産性向上」、白書で実践的なヒントを提供

―今号(7月10日号)の紙面特集より、ここでは「2018年版「中小企業白書」」を掲載―。
 中小企業庁が公表した2018年版の「中小企業白書」によると、中小企業の経常利益は過去最高水準に達した。経済の好循環が中小企業にも浸透しつつあることが明らかになったが、一方で、大企業との生産性格差がさらに拡大し、人手不足感が過去最高レベルに達していることも分かった。
 日本の企業の99.7%は、従業員数300人未満の中小企業。約381万者の中小企業が雇用する従業員数は約3361万人と、雇用全体の7割を創出している。その中小企業がいかにして、「人手不足」と「生産性向上」という大問題を乗り越えるか。今年度の白書では中小・小規模企業の事例を豊富に紹介し、実践的なヒントを提供している。

低生産性と人手不足

 2018年版中小企業白書・小規模企業白書によると、中小企業の経常利益は5・3兆円と過去最高水準。景況感も改善傾向にあり、都市と地域間のばらつきも縮小した。
 一方で、労働生産性(従業員1人当たり付加価値額)は大企業との格差が拡大した。近年で最も労働生産性の落ち込んだ09年度と、足下の15年度の数値を比較すると、大企業は製造業、非製造業共に同程度の上昇率であるのに対し、中小企業ではどちらも上昇幅は小さいなど、中小企業の生産性向上が急務であることも分かった。
 業種別の「時間当たり労働生産性」についても大企業と中小企業を比較した。その結果、対象7業種すべてで中小企業の生産性が低いことが分かり、最も格差の大きい製造業では2倍近い差があった。
 では、どうすれば中小企業の労働生産性を向上させられるのか。白書ではアンケート調査などから、過去10年間の生産性変化を6つの類型に分類。企業行動や投資活動を分析し、解決策を探った。
 前半期間から後半期間を経て、類型が「効率的成長」(従業員数の伸び率より付加価値額の伸び率が大きい、労働生産性を向上させた企業)に変化した企業の行動をアンケート調査から分析。前半で「縮小」「衰退」(従業員が減少し、付加価値も減少)、に分類されていた企業では、IT投資やアウトソーシング、また機械・設備投資や研究開発を行うことなどにより、「効率的成長」へ変化する事例が多数見られた。
 「非効率」(従業員が増加したものの付加価値が減少)、「非効率成長」(労働生産性が低下)に分類されていた企業では、人材育成や業務効率化で、「効率的成長」に変わっていることが分かった。
 また、機械・設備投資やIT化投資、人材育成、業務効率化等の企業行動は、経営を見据える年数が長期間であるほうが取組を行う割合が高いこと、さらには、取締役会の開催や経営計画の策定、管理会計の取組を行っているほうがこれらの企業行動に取り組む割合が高いことも示した。

大卒求人倍率、6倍以上に

 白書では、中小企業における人手不足感が過去最高レベルにまで高まっていることも強調した。中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」によると、従業員数の過不足DI(過剰マイナス不足)は全業種で2009年をピークに、総じてマイナス方向に転じた。
 2013年第4四半期以降では、全ての業種において従業員が「過剰」と答えた企業の割合を従業員が「不足」と答えた企業の割合が上回っていることが分かる。特に、建設業やサービス業といった業種において人手不足感が顕著に表れた。
 従業員数の少ない企業ほど、大卒人材の採用も厳しい。総務省の「労働力調査」によると、大卒予定者求人数と就職希望者数について、従業員299人以下の企業の大卒求人倍率は2017 年度は6・4倍と大きく跳ね上がった。一方で、300人以上の企業の求人倍率は1倍で、希望者数が求人数をわずかに上回る程度だ。なお、従業員29人以下の企業では、高校卒業者も求人数の5分の1程度しか確保できていない状況にあった。
 年々規模の大きな企業に人が流れている傾向も分かった。直近20年の推移では、2000年代以降、従業員数1~29人の企業の雇用者数が減少する一方で、500人以上の企業が増加傾向に転じていた。

女性とシニア、労働参加拡大へ

 白書では、日本の労働力人口が減少する中で、女性・シニアの労働参加が、生産年齢人口減少の影響を緩和しつつある状況についても説明。一方で、「就労希望を持つ女性やシニアが就労できていない」ことを問題視した。
 総務省の労働力調査によると、過去10年の間に女性の雇用者数は約260万人が増加した。その雇用形態の内訳では、特に非正規の職員・従業員の増加幅が大きく、2015年以降は正規の職員・従業員の増加幅も大きくなっていた。
 しかし女性の場合、結婚や出産を理由に退職した人がその後、復職して仕事に就いている割合は26%と少ない.。復職していない「無業者」の女性のうち、60%が「復職したい」と考えているという。
 女性の完全失業者が仕事に就けない理由としては、25歳~54歳まででは「勤務時間・休日などが希望と合わない」が最多。次いで、「希望する職種・内容の仕事が無い」だった。白書では「育児のためにフルタイムで働くことは難しく、短時間勤務などを希望する女性が多い」とみた。
 シニア世代の労働参加の希望も強い。60歳以上のシニア世代男女に何歳までの就労を希望しているかを調査したところ、28.9%が「働けるうちはいつまでも」と回答しており、「65歳くらいまで」、「70歳くらいまで」がそれぞれ16・6%と続く。労働参加の意欲は相応に強いが、「希望する職種・内容の仕事がない」、「求人の年齢と自分の年齢が合わない」ことで、仕事に就けない状況も分かった。