オヤジの喜怒哀愁

2018年8月10日号

バイキング

18393

 夏休み、お盆シーズンをホテルや旅館で過ごす人も多いだろう。そんなとき楽しみなことの一つがバイキングである。
 まずは蘊蓄を述べる。8世紀から11世紀にかけてヨーロッパ各地を荒し回った北欧スカンジナビア方面の海賊のことをバイキングという。北欧の民にはサラダや肉、魚料理、パン、飲み物などいろいろな料理をテーブルに並べて食事をする人が好きなものを好きなだけとって食べる習慣があり、物の本によると正式には「スモーガスボード」というらしいのだが、我が国ではこうした形式の食事がバイキングの呼び名で広く知られるところとなった。
 最近ではホテルといえば朝食バイキングが当たり前のようになり、チェックインする時に朝食会場はこちらでございますなどと説明されながら朝食券を受け取ることが多い。
 卵料理とソーセージ、それにちょっとした地の物などをおかずにご飯と味噌汁といったわりと家庭的な取り合わせが可能であるし、食い足りなければそこからギヤを入れ換えて食パンを自分でトーストしたりロールパンをパクついたり家庭ではあまりやらない欲張りな食べ方も許される。食後にはフルーツやコーヒーが用意されている。ついつい朝から食べ過ぎてしまう。お膳立てされたメニューではこうはいかない。
 子どもたちがまだ小さかった頃、家族でバイキングを食べにいったことを思い出す。
 普段、このソーセージはひとり何本なのかとか、鍋のつみれは何個までなら食べていいのかとか、家ではそれなりに気を使っている子どもたちは、この時とばかりに、ソーセージだけを天こ盛りにしているのもいれば唐揚げをいっぱいとっているのもいる。
 ほかにも旨そうな料理がたくさん並んでいるのにまったくしょうがない奴らだと思ったが、よく考えてみると、ひと品ごと少量ずつ皿に盛ってあれもこれも食べようとしている親とどちらが食い意地が張っているのか分からない。むしろ、好きなものを好きなだけ、というバイキング本来の主旨に適っているのは子どもたちの食べ方なのかも知れない。
 オヤジは元をとろうと意気込んだ割に思ったほど食べられず、口惜しい。隣では妻が生クリームののったコーヒーゼリーを旨そうに食べている。しかし、すでに満腹である。どうして思ったほど食べられないのであろうか。やはり、外では家ほどにくつろげないからか。そう思ってテーブルの下でしばし靴を脱いでみた。すると、胃の中にわずかに余地が生まれたような気がして、性懲りもなくコーヒーゼリーをとるためにまた席を立つのであった。