連載

2018年8月10日号

8760時間止まらないIoT工場

最短3時間で製造、10万種対応

 「Webシステムに15時半までに受注情報が登録されれば、当日18時半には岐阜の工場から金型を発送。北九州くらいまでなら翌日にはお手元に届きます」―顧客のスマホ端末と工場が、まるで指一本でつながったかのように優れたデリバリー。そんなIoTシステムをベースとする完全自動化工場を、アマダホールディングス(磯部任社長)が構築し、アマダ製NCタレットパンチプレスやパンチ・レーザ複合機向けの標準パンチング金型で実現した。
 対象となる金型(パンチ・ダイ・ガイド)は128種類、客先の刃先寸法指定を含めると10万種以上にもなるのに、注文を受けてから最短3時間という驚異的な速さで製造が完了するという。
 しかも金型には個別ID(2次元コード)が刻印され、ユーザー側のマシンと連携。生産実績から寿命や摩耗を管理しやすくなり、「止まらない工場」の実現を後押しする。
 「金型は消耗品。いかにスピーディかつタイムリーに届けられるかが勝負になる」。金型製造を担うアマダツールプレシジョンの山川雄一社長はデリバリーの重要性を説く。
 アマダ製のNCタレットパンチプレスは現在、世界で3万台以上が稼働している。「切断加工はレーザー加工機への移行が進んでいるとはいえ、金型需要はグローバルで月間4万本にも。その供給責任は大きい」(山川社長)。標準仕様の金型に対する国内外の需要にコンスタントに応じるべく立ち上げたのが、昨年10月、アマダグループの土岐事業所(岐阜県土岐市)内で本格稼働を迎えた最新鋭IoT金型工場「T876工場」だった。
 月間生産能力は最大3万本。伊勢原事業所(神奈川県伊勢原市)内にあった旧工場の1.5倍にまで拡大しつつ、人員は3分の1の6人にまで抑えた。人手を要するのは、主に加工機や加工条件の調整とメンテなど。39台ある加工設備と97台ある付帯設備(ロボット・AGV・検査機等)は上位のWebシステムの受注情報にリアルタイムで連動して、素材搬送から加工機のツール交換、加工、洗浄、焼き入れ、研磨、検査まで自律的に動く。
 設備の稼働状態や検査結果はオペレータのスマホで随時確認。トラブル対応時にはセル単位で切り離すことができ、24時間365日(8760時間)連続稼働を実現した。

■自動検査、人の感覚に
 旧工場では、個別の顧客オーダーに応じて仕上げるリサイズ(完成)工程に約30人を投入し、受注から完成まで3日を要していたが、T876工場では加工も検査もフル自動で行うセル生産体制に移行し、最短3時間でのリサイズを10万種で対応可能にした。
 過去の受注を解析し1日の最大生産量1000本のうち8割は在庫の生産に充てられるようになったのも大きなポイント。残りの2割は、刃先仕上げ直前まで仕上げた仕掛品の在庫から、個別オーダーに最も近い寸法・形状のモノを選んで仕上げていく。
 これらは、工場内での製品個別の位置情報や製造情報を追跡するトレーサビリティが確立され、ITと製造のシステムがリアルタイムで連動しているからこそ可能な技。「マス・カスタマーゼーション」の国内先進事例と言えよう。
 検査工程の自動化の先進事例としても注目度が高い。中でも、アマダツールプレシジョン生産技術部の大津裕之グループリーダーが「最も立ち上げに苦労した」と振り返るのが、外観検査の条件出しだ。
 例えば、自動バフ研磨後の脱脂洗浄で付着した洗浄残りやシミ。画像検査では光の色を変えたり、人の動作と同じように、ロボットがワークによって傾け具合を微妙に変えて検査するようプログラミングすることで、人と同様の感覚で汚れの度合いを判別できるようにした。
 今後は、蓄積した加工・検査データをAIで自動解析して、加工機へのスピーディでより正確なフィードバックや予知保全を可能にする考え。また、ウェアラブル端末を装着してハンズフリーで機械のメンテなどを行うことや梱包工程の自動化なども検討している。さらに生産性を高め、「ベンティング向けの金型製造などにもノウハウを展開していきたい」(山川社長)という。

(写真=T876工場で生産しているパンチング金型)