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工作機械輸出大国「台湾」

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―今号(8月10日号)の紙面特集より、ここでは「QCDを改善するうえで要諦となる5工程」を掲載―。
 2017年の工作機械生産額で世界7位(米Gardner Business Media調べ)に位置する台湾が、輸出拡大に向けてさらなる攻勢に出る。ミドルレンジの手に入りやすさに加えて、省人化・自動化のニーズを取り込むべく、ロボットとのパッケージング、基幹プラットフォームの提案を本格化させた。販売・サービス拠点の新設も目立つ。昨年中盤以降の動きを追った。

18年売上、15~30%増加か

 台湾の工作機械市場も上向いているが、日本に比べて伸びが小さい。産業機械メーカーが加盟する「台湾機械工業同業公会(TAMI)」によると、2017年の生産額は約39億7180万米ドル(1米ドル=30.43台湾ドルで換算)。前年比で8.3%増加した。輸出大国だけに、輸出額の動きもほぼ同じだ。
 輸出先については中国財政部の貿易統計が詳しい(=9面下に関連表)。首位は中国。台湾製が売れている理由について、TAMIの崔海川駐日代表は「20~30年前、ドイツや日本に比べて安価な台湾製が自動車業界を中心に導入されて以降、中国語による意志疎通のしやすさもあって販売ルートが広がった」と話す。
 工作機械メーカーに18年の売上状況を聞いてみた。
 「中国で莫大な投資があった」とするのは累計販売台数5万台を誇る協鴻工業(ブランド名=Hartford)。海外副責任者のダニエル・ロウ氏によると、門型マシニングセンタの引き合いが増加しているという。
 販売拠点が世界50カ国以上ある永進機械(YCM)も中国向けが好調。前年実績を上回る状況が続いている。上海に生産拠点を立ち上げ、中国全土のサポート体制強化と納期厳守を進めてきた。懸念される米中貿易摩擦の影響について、マーケティング部のアリス・スー氏はこう回答する。
 「中国経済は鈍化の兆しを見せており、多くの企業がどっちつかずの状態。しかし、当社は特定の市場に集中せず、均等にソースを配分している。1つの市場衰退で売上に影響を受けることはない」
 「柔軟性を保つ」一例として挙げたのは東南アジアの現地サービス。マレーシアに技術センター、ベトナムに現地事務所を設置したという。

欧米、東南アジアへ
 工作機械メーカーは最大の需要地である中国以外にも目を向ける。01年以降、5軸加工機の割合が年々増加している百德機械(QUASER)は北米の販売力を強化中。17年、サウスカロライナ州にオフィスを移転した。
 売上の半数以上を欧州が占める時期もある百德機械だが、18年上期実績は▽イタリア▽台湾▽トルコ▽中国―の順で売上が多く、総経理のロック・リョウ氏にとって「北米は新しい市場」になるというわけだ。
 今後注力する地域に「インド」を挙げるメーカーも少なくない。台湾工作機械市場の上位に位置する、東台精機(Tongtai)もそう。マーケティング部のジョシュ・ファン氏は、「インドは世界の自動車部品供給拠点の一つになるため、工作機械の需要は絶えず増加する」とみる。前出の永進機械も「外国企業に有利なビジネス環境ではないが、今後5~10年で非常に高い可能性を秘めている」と期待する。
 18年の売上見通しについて、これまでに触れた工作機械メーカーは15~30%の成長を見込んでいる模様。「今後販売拡大したい国」として挙げたなかには、日本メーカーが開拓を進めているところも複数ある。
 スペックや価格だけでなく、技術サポートやメンテナンス体制もアドバンテージになる工作機械にとって、台湾メーカーの動向は市場にどのような影響を与えるのか。中国一強の状況は変わらないものの、台湾製機械の輸出順位が多少入れ替わるぐらいの可能性は十分にありそうだ。

高まる自動化需要への対応

 「機械同士が信号で稼動状況を知らせ合うだけでなく、加工記録をオペレータやクライアントへ自動的に送信できる」と話すのは、ホイール量産ラインで豊富な実績がある遠東機械(FEMCO)の営業担当者だ。
 昨秋のEMOショーで披露した自動化システムは、コンピュータ規格の一つであるイーサネットを活用。ワークの運び役となる多関節ロボットを囲むように、検査、旋削、洗浄の各種機器を設置する。
 進化形として、アルミホイール向けの自動化生産ライン「AVMシステム」を開発した。ホイールの生産状況をリアルタイムで監視しながら、加工と同時に品質・精度測定を完了させるのが特長。「3次元測定機とほぼ同じ精度で確認できる」という。
 台湾の工作機械メーカーでも「自動化」がトレンドになっている。東台精機で最も売れているという立形マシニングセンタは、センサ、自動ドア、ロボットアームなどを装備できる点が喜ばれているそうだ。「自動生産の傾向をとらえた機種で、自動車業界の支持を得ている」(マーケティング部のジョシュ・ファン氏)。
 協鴻工業は、今年11月に台湾で開かれる国際工作機械見本市TMTSで、多関節ロボットと5軸加工機を組み合わせたパッケージング製品「Robotcell」を提案する。ワークの形状・重量に応じて24時間稼動が可能な加工システムとして開発したもの。5軸加工機以外の機種にも対応可能で、用途に合わせて数種類のメニューを用意している。同社ホームページには、Robotcellの導入で生産量が30〜68%上がると書かれていた。
□独自のPF&ソフト展開
 IoTに向けた取り組みにも注目したい。稼動状況の可視化、データ分析による生産・加工の最適化につなげる独自の基幹プラットフォーム(PF)やソフトウェアを打ち出すメーカーが増えてきた。
 永進機械の「i‐Direct」は、生産状況の追跡、工場稼動率の管理、総合設備効率(OEE)の監視を通じて、生産プロセスのボトルネックを特定できるという。汎用機も接続できるそうで「あらゆるCNCコントローラー、機種、機器とリンクできる」(マーケティング部のアリス・スー氏)と言い切った。
 ソフトウェアでは、東台精機が「TLM-Tongtai Line Management」を提案中。インターネット経由で取得した工作機械・機器の稼動データを分析し、最適化につなげる。ターンキーとの組み合わせも可能。「機械の状況を簡単に監視し、自動的に作成されたレポートを受信できるので、工場管理も容易」という。
 一元管理・最適化できる範囲がPFやソフトウェアの優劣を決める。そこで台湾最大手の友嘉実業(FFG)は、シーメンス、KUKAなどと協力関係を結び、工作機械からロボット、ソフトまでつなげる取り組みを進行中。昨年、本紙の取材に対して、「世界にあるCNC関連メーカーの85%と協定を結び、機械言語の共通化を図っている」(輸出担当者)、「インダストリー4.0に対してグループ会社も一緒にやろうとしている。1社単独とグループの違いは大きい」(総裁のジミー・チュウ氏)と話していた。

生産地としての存在感

 台湾はOEM先としても一定の地位を築いている。工作機械関連メーカーが8~9割集積しているという台中市内から必要な部品を調達し、工場でアッセンブリすることで生産コストを抑えるのが台湾流だ。(一方で台湾工作機械メーカーの多くが内製率の高さをアピールしている)。
 5年ほど前からマシニングセンタの生産を一部委託している、日本のA社は「年間の発注数量を決めて定期的に供給させており、他の工作機械と異なって納期対応しやすい。そういう意味では売り方を違えた機械でもある」とみる。
 販売価格は日本製のおよそ半分に設定しながら、とくに肝となるNCと主軸はA社製を使用。「チューニングも当社でやって、そのときに把握したデータは相手に渡さないようにしている」とする。
 15年に現地取材した際には「発注元からアドバイスを受けながら生産することで十数年で品目を拡充できた」(麗馳科技/ブランド名=Litz)として、技術力の高さを表す一例に、OEMを引き合いに出すケースがいくつかあったが、最近では先に触れたようなIoTに向けた取り組み、知能化技術を備えた「スマートマシン」の製品化を前面に押し出している。

オークマが新工場
 旺盛な海外需要に対応するため、台湾で生産する日本の工作機械メーカーも少なくない。オークマは新北市に建設していた自己完結一貫生産の工場を8月から稼動させた。投資額は約23・2億円。旧工場の老朽化が進み、「また手狭であった」ことから生産能力の拡大と高効率化が課題になっていた。
 グローバル戦略機として、「GENOS」ブラントで展開する旋盤と立形マシニングセンタを月産300台(従来比1・5倍)生産する。総床面積は1万4300平方㍍に拡張。加工設備の増強と自動化の推進により部品加工能力を5倍に増強した。
 加工と組立工程の同期を取りながら、必要な部品・ユニットを組立着手に合わせて配膳することで、組立効率の大幅な向上を目指す。
 新工場にはスマートマニュファクチャリング技術をパッケージ化した商品「Connect Plan」を導入した。工場内の加工設備を接続し、機械の稼動状況と生産進捗を監視。稼動停止の原因を分析し、機械稼動率の向上を図る。
 隣接するショールームには、5軸制御立形マシニングマシニングセンタ、複合加工機、GENOSブランドなど8台を展示。同社は「台湾は古くからモノづくりが盛んであり、工作機械の有望市場。新たに設置したショールームを有効活用し、販売、技術・サービス体制も強化して、台湾市場の販売拡大を進めていく」とコメントしている。