オヤジの喜怒哀愁

2014年10月10日号

独立のための投票

1972

 少し前の話になるけれど、スコットランドの独立騒ぎには正直言って驚かされた。大国イギリスから独立しようという投票が行われたこと自体驚きだったし、直前の世論調査で一時、賛成が反対を上回り、85%という高投票率の中で賛成45%、反対55%という接戦だった投票結果にも驚いた。
 もちろん、これは日本のどこかの地方都市が日本から独立しようという話とは土台からして違う。イギリスは元々イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つの王国の連合国家でそれぞれが独立王国としての素地をもっている。フットボールのワールドカップにはいまだに別々の代表チームで参戦しているし、イギリス国旗がイングランド、スコットランド、アイルランドの国旗を重ねたものであるところにもそれは表れている。しかし、地方分権や組織分裂という観点から見ると、あながち日本と関係ないともいえない話なので ある。
 スコットランド独立問題の根っこには、地方格差や富の再配分をめぐる中央政府への根強い不満があったという。イングランドの都市とスコットランドの都市との所得格差が広がっている、政府の雇用対策でロンドンの雇用は増えてもスコットランドでは増えない、スコットランドに近い北海油田の権益を中央政府が独り占めしているといった不満だ。
 経済が成長している間はメリットを享受できた大連合国家が、成長が止まると逆に非効率ぶりが目につき、イギリス政府の大枠な政策とスコットランド住民が望むきめ細やかな政策との間にずれが大きくなってきたということである。これは、東京と地方との関係にもある程度あてはまる話だろう。経済が行き詰まると地方分権や分離独立への気運が高まるのが歴史の必然なのだ。
 最終局面では、政治的に中立のはずのエリザベス女王まで早まったことをするな、というコメントを発してスコットランドの独立はぎりぎりのところで回避された。通貨ポンドが使えなくなることによる経済混乱や安全保障の問題などリスク回避の住民意識が働いたともいわれる。日本では低成長経済の下で地方分権が叫ばれる一方、逆に中央への権力集中、自治体統廃合の方向が強まっている。安全保障、経済的自立を考えると、日本で地方独立の住民投票などやはりあり得ない話なのだろうか。