連載

2014年10月10日号

西日本随一、精密板金加工の専門集団

半導体から脱却、多品種少量を極める

佳秀工業[精密板金加工]

福岡県北九州市

 日本の半導体産業を引っ張るシリコンアイランドから、自動車産業の新たな集積地へと変ぼうしつつある北九州。リーマンショックを経て大きく変化する激流のさなか、地場中小製造業も新たな活路を切り拓きつつある。
 九州の陸の玄関口、JR小倉駅から車で20分強。佳秀工業(従業員数約110人)は製造工場が並び建つ洞海湾奥の工業地帯の一角にある。「シリコンサイクルに振り回されるのはもう終わり」。寺本麓人社長は決意を込めてこう話す。
 45年前に寺本社長の父が興した同社は、創業期の溶断加工からいち早く、80年代半ばに精密板金加工にシフト。精密板金に関する設備を次々導入するとともに加工ノウハウを蓄積し、「西日本の難しい切断加工は佳秀へ」と言われるまでに成長した。
 「創業期から数えて8回の大不況を経験した」という寺本社長だが、「中でもリーマンショックは最大級だった」と振り返る。液晶・半導体産業凋落の影響をもろにかぶり、月間売上高は直前ピーク時の3分の1に。「絶対に一人もクビをきらないと宣言し、それまでの利益をすべて吐き出して、一人の犠牲者も出さなかった」。

航空機から化粧品まで
 「生産性向上」を合言葉に全社をあげた改革を進め、それまでの6割を占めた半導体関連の受注をほぼゼロへと大きく転換した現在、寺本社長は「売上はピーク時の約3分の2だが、完全に復活した」という。
 鉄道車両、原子力、食品、医療機器関連など受注先の業種は多岐にわたり、最近では航空機部品製作の国際認証規格JISQ9100も取得した。地元では、北九州空港が三菱重工MRJの試験飛行と駐機拠点に選ばれたことから航空機産業活性化の機運が高まっており、佳秀工業でも来春から航空機関連でかなりの量の加工が決まっている。  98年に開設した大分県宇佐工場ではビル用津波対策扉や、ダイハツ九州のライン用治具などを製作しているほか、8年前に研究開発を始めたバイオケミストリー事業では化粧品原料の製造販売が来春から本格化する見込み。新事業の軌道が見え始めてきた。

戦略機械を継続導入
 業績回復の背景には西日本指折りの設備力がある。同社では、生産性や加工精度に優れた5千万円〜1億円以上の「戦略機械」を、リーマン期を除く約20年間ほぼ毎年導入してきた。設備武装の効果は絶大で、新規開拓社数は毎年30〜40社。品質保証体制の構築も高評価され、「工場をみてもらえればほぼ100%受注が決まる」という。
 4200坪の四角い敷地には工場が10棟。主力の精密板金関連の工場内には各種レーザー加工機10台がそこかしこに並び、現在、米フロー社製ウォータージェット(WJ)加工機が2台あるが、今秋、日本でも最大級の大出力最新鋭機を導入する。  各種CAD/CAMと100台超のPC、ヤマザキマザックのファブリギア(パイプ形鋼加工用大型レーザー加工機)やオークマの五面加工機など大型加工機を揃え、塗装用乾燥炉は西日本最大級。ワンストップで設計から切断、加工、塗装までトータルで請け負うことで、1カ月に1万種の製品を6〜7万個生産する多品種少量生産の極みでありながら、工期・コストの削減を可能にしている。  
 リーマンからの試練に挑戦する中、「事業は人あってこそ」の決意を新たにした寺本社長が始めたのが、「日本発の陽明学を超える行動哲学、昭和の大偉人・城野宏氏が生み出した脳力開発プログラム」(寺本社長)だった。社員それぞれが、不良率の低減や顧客満足度向上など具体的目標の達成に向けて作戦を練り、行動に移し、失敗をフィードバックして戦術を再検討するというもの。この脳力開発をさらに進め、「社員全員がプロの誇りをもって顧客の感動を生み出せる、『全輪駆動』の新幹線のような会社が理想」(同)という。