PICK UP 今号の企画

「工作機械」技術トレンド

―今号(10月25日号)の紙面特集より、ここでは「工作機械」技術トレンドを掲載―。
22189

テーブルに近づきやすい
松浦機械製作所の
5軸立形MC「MAM72-70V」

 工作機械がハードよりもソフト面がクローズアップされるようになって久しい。搭載されるIoTやAIが重要度を増す一方、機械的な性能は成熟した感があるからだろう。ところがさらなる複合加工化、機能を維持したままの省スペース化、多軸機の累積誤差の最小化、ロボットとの組み合わせやすさ…と見るべきところはまだまだある。こうしたハード、ソフトを含め工作機械関連の技術トレンドとして4つの技術に注目した。

1.精度増す多軸、小さく載せて大きく加工

 「5軸機だからといって精度が落ちるようなつくり方をしていない」
 金型加工向け高精度機で定評のある安田工業の幹部が今夏、本社工場で開いた内覧会でそうきっぱり言った。5軸制御は各軸の累積誤差が生じやすいという常識は崩れつつあるようだ。同社は同時5軸での高精度と難削材加工にも向く剛性を武器に、これまで手薄だった航空機部品加工向けに大型5軸横形マシニングセンタ(MC)の提案を本格化させている。
 3軸機と同等以上の加工面品位をもたせられる金型向け5軸MCを開発するのは牧野フライス製作所。加工面に段差が生じるという不安から、せっかくの5軸機を「同時」でなく「割出し」で使われるケースが少なくない。そんな現状を同社は軽量化ユニットによる俊敏化とモーションコントロール技術で打破する。
 国内外ともに5軸機の販売額が全体の50%に達したという松浦機械製作所は、APC(自動パレット交換機)を付けた5軸機でもオペレーターからのテーブル接近性と機械設置面積の縮小に取り組む。今JIMTOFで同社の最主力機、5軸立形MC「MAM72-70V」(最大ワーク径700ミリ)のAPC(最多18枚)は新開発のロータリー式で、交換時に傾斜軸テーブルのサポート部をAPCドアに格納するつくりにしたことで「機械全長を最小限に抑え、フロアスペースは従来機より13%アップに抑えた」と言う。
 工具主軸もコンパクトになった。DMG森精機が1千台以上の納入実績をもつ、5軸加工対応の複合加工機NTXシリーズの第2世代モデル「NTX 2000/2500/3000 2nd Generation」は「複合加工機史上最小」と謳う工具主軸(compactMASTER、全長350ミリは従来の7割)の搭載などで、従来機と同じ設置スペースでより大きなワークが加工できるという。

2.付加製造―高速肉盛り、造形不良も克服

 AM(Additive Manufacturing、付加製造)で通じるようになった金属3Dプリンターは、先行したパウダーベッド方式とパウダーノズル方式(レーザーメタルデポジション)に分けられる。前者は1層1層焼き固めて精度を出せるが、スピードに難があるとされてきた。だが、全テーブル領域をカバーするガルバノスキャナーヘッドを複数搭載したり、レーザー出力を高めたりすることで造形時間が短縮されつつある。後者はノズルから噴出する金属粉を母材ごと溶融・凝固させるスピードが売り。1つのレーザー照射レンズで連続的にレーザースポット径を変化させたり、金属材料にワイヤを用いて高速肉盛りしたりできる機種が登場した。また積層と切削の切り替え時間を数秒に短縮して生産性も高めている。
 切削パスの応用ではなく、積層精度を保持できるAM専用のパスを描けるようになった。ジェービーエムが提案するアプリケーション「Additive Master LUNA」は、5軸処理で正確にレーザーノズルの法線方向を制御できるのが特長だ。
 国の研究機関、TRAFAM(技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構。近畿大、東北大、産業技術総合研究所、企業27社の参画を得て2014年4月に設立)での成果も着々と出ている。パウダーノズル方式では本プロジェクトが終了する2019年時点の目標である毎時500cc、寸法精度±20ミクロンをすでに達成した(東芝機械および三菱重工工作機械)。東芝機械は従来の層ごとのパスからヘリカルパスに変えたことで表面粗度を改善。また断面が丸から四角に徐々に変形する筒状造形を可能にし、研究当初の造形不良も克服しつつあるという。

3.IoTの今と未来―企画展示で一堂に

 2年前の前回JIMTOFでは「ここから未来が動き出す」の開催テーマを体現するかのように、各社がこぞってIoT関連の提案をスタートさせた。稼働監視や保守サポート、加工時間予測、工具寿命管理…など様々な提案があったが、どれも2年前はまだパイロット段階。すでに実践期に入った今回展では、ボトルネックの解消策や技能伝承サポートなど、センサーやAI活用を含めた具体的な生産性向上メニューの提案が期待されている。
 メーカー別に林立するIoTプラットフォームを一堂に確認できる展示としては、(一社)日本工作機械工業会が東7ホールで行う企画展示「Connected Industries SHOWCASE @JIMTOF2018」に注目が集まりそうだ。会場全体を巨大な工場に見立て、日工会会員企業72社300台以上の展示機械の稼働状況を大型モニター7台で「見える化」するというもの。ソフィックスがシステム構築に全面協力した。
 オークマ、ヤマザキマザックなど独自のIoTプラットフォームを持つ企業ブースの展示機はそれを介して、日工会サーバーに接続。それ以外の約7割の企業はファナックのIoTプラットフォーム「FIELD system」を無償貸与され接続する。安全面の確保を踏まえ、今回の展示では機械のON/OFFとエラーの有無など稼働状態=日工会が現時点で示す「共有情報」の可視化に留めたが、複数メーカーの加工機が稼働する状況は実際の製造現場の姿に近い。日工会では「プラットフォーム間で『共有情報』を有効活用できる可能性を示唆し、古典的な囲い込み戦略の誤解を払拭する」という。
 展示ブースでは開幕初日(11月1日)の朝9時半から、日工会の飯村幸生会長と稲葉善治技術委員長を中心としたパネル討議も開催予定というから見逃せない。常時開催のプレゼンや土日の達人トークショーを含め、IoTの今と未来の姿を確かめられそうだ。

4.ロボットとの連携―教示や設置を簡単に

 人手不足の深刻化を背景に、工作機械へのワーク着脱や、エアブロー、計測などの後工程をロボットで自動化する動きが広がってきた。大量生産ラインではガントリーローダーなどで自動化する向きもあるが、加工機へのロボット搭載で先行するエグロでは、「日本に残るのは多品種少量で高精度の加工。その自動化対応には汎用性の高い多軸ロボットのほうが使い勝手が良い」(江黒寛文社長)とみる。
 今回展ではオークマがNC旋盤と一体化したビルトインの多関節ロボット「ARMROID(アームロイド)」(=写真)を初披露する。機械と多軸ロボットの協調動作で切粉処理や加工機内の清掃を行うほか、加工時のびびり発生をロボットのサポートで抑制するなど安定加工につなげる機能も備えた。機械に据え付けるだけで立ち上げが完了。CNC(OSP)からNC感覚で簡単に操作できるので教示の手間もかからないという。
 ヤマザキマザックでも、多関節ロボットとCNC旋盤を組み合わせた自動化セル「TA(ターンアシスト)」を出品する。搬送指示はCNC装置内の専用アプリにワークサイズや形状を入力するだけ。「すでに欧州向けで多くの導入実績がある。日本でも商機が大きい」(中西正純営業本部長)。
 DMG森精機でもプログラム不要のモジュール型ロボットシステムを出品。ターニングセンタの新製品「ALXシリーズ」ではデンソー製薄型アームと組み合わせた、簡単取り付けの部品搬送パッケージなどをみせる。