識者の目

個の量産に「柔軟化」必要

IoTは現場改善のインセンティブに

 2013年よりドイツがものづくりの大変革を目指して、「インダストリー4.0」という国家的プロジェクトを推進しているが、これに追従するように世界各国で同様な取組みが始められている。これらでは、IoTと『ものづくり』のデジタル化による革新的なものづくりの実現と、新たなビジネスモデルの創出が共通的な目標となっており、「第4次産業革命」と呼ばれるようになってきた。革新的なものづくりとして、ドイツでは、「個の量産」を挙げている。これは、究極の多品種少量生産と言える「1個流し生産」を、大量生産と同等の能率とコストで実現することであり、従来のものづくりを革新的に見直す必要があり、既に多くの取組みが始まっている。
 この具体的な動きは、欧州の国際工作機械見本市であるEMO2015から顕著に見られるようになり、一昨年のJIMTOF2016では、多くの技術的な取組みが披露された。そして、昨年のEMO2017、今年のアメリカ地域の国際工作機械見本市IMTS2018と着実な進展を遂げている。これらの動向を分析してみると、工作機械は、図に示すような4つの切り口で変貌しようとしていることが伺える。
 一つは、「柔軟化」である。個の量産を目指すためには、工作機械をコアとする生産システムの各構成要素が柔軟である必要がある。そのためには、工作機械構造と加工機能に柔軟性を持たせる必要がある。構造形態は、MCとTC加工機能を持ち合わせ、必要に応じ、MC、TCに変身可能になってきた。また、加工機能については、5軸制御工作機械を中心に、各種加工機能の複合化が進み、3Dプリンティング機能に加えて、同一機械上で、レーザによる焼き入れ後、研削加工仕上げが可能な機械も登場している。
 二つ目は、「省エネ化」である。稼働コストの最小化を目指し、高効率化が進んでいる。省エネ化は、従来からも電力消費量の削減を中心に鋭意進められている。更に革新的な省エネ化を図るためには、工作機械の運動要素の軽量化を図るなど、構造設計面からの徹底した省エネ化が必要と言える。
 三つ目は、「知能化」である。工作機械を、加工条件も含めて、自律的に最適化する仕組みが求められている。このような取組みも、びびり回避や衝突回避などで既に実用化されており、今後は、予防・予知保全など、更なる知能化に向けてAIの適用技術の高度化が期待されている。また、前述の柔軟化、省エネ化を促進するためにも、この知能化が重要となっている、
 四つ目は、「見える化」である。IoTを有効活用するためにも、繋がれる設備の一つである工作機械自身が見える化されていなければ、システム全体の最適化は不可能と言える。工作機械としては、構造本体、主軸系や送り駆動系などの稼働状態や、加工プロセス等の見える化が必要である。そして、ツーリングシステムや、ロボット、切りくず処理装置などの周辺装置などの見える化も必要となっている。これらの見える化が実現して初めて、工場全体、生産システム全体の見える化が達成されることになる。
 この見える化は、前述の柔軟化、省エネ化、知能化を更に促進することになり、結果的には、これらがお互いに相乗効果を発揮しながら、工作機械が高度化していくと言える。
 このようにして、見える化が達成できれば、IoTの有効活用が可能になり、生産システムの効果的な監視が実現できる。その結果として、それら監視データの収集、分析により、問題点が抽出され、その改善のための適切な対応も迅速に行えることとなる。
 ここで重要なのは、この見える化がトップダウン的な監視のためではなく、ボトムアップによる現場の改善のためのものであり、現場の作業者のインセンティブとなる気付きを与え、成長させるためのものであることだ。

MAMTEC代表(上智大学名誉教授) 清水 伸二