識者の目

中国 輸入博は「第3の改革開放」になりうるか

 11月、中国では「世界の市場」を印象づける注目イベントが相次いで開催される。ひとつは「双11全球狂歓節」。中国で「独身の日」とされる11月11日に、ネット通販最大手のアリババ集団が仕掛ける一大セールイベントだ。今年で10周年を迎え、中国の恒例行事として広く浸透している。
 もうひとつは第1回中国国際輸入博覧会(以下、輸入博)である。11月5日から10日までの6日間、上海市で開催されている。輸入をテーマにした「世界初」とされるイベントに外国企業の期待は高く、130以上の国・地域から3千社超の企業等が出展した。初めて中国で紹介される商品も5千件余りに達するという。
 輸入博は昨年5月に習近平国家主席の呼びかけで開催が決まった。中国商務省とともに主催機関となっている上海市政府の力の入れようも格別だ。上海市は開幕式にあたる11月5日と6日を、政府部門や学校などを中心に振替休日とした。筆者は11月4日まで上海に滞在していたが、地方からの応援部隊とみられる公安関係者が上海市の街角に配置され、監視の目を光らせる姿がみられた。空の玄関口となる上海浦東国際空港では、輸入博をPRする各種掲示物(=写真)のほか、マスコットのパンダ「進宝」が登場し、歓迎ムードに花を添えていた。
輸入拡大に本腰
 折しも米中貿易摩擦の最中での開催となったことで、中国は輸入博を無事成功させ、輸入促進に積極的な姿勢を強くアピールしたいところだ。中国はこの取り組みが「口先だけの」アナウンス効果に終始しないよう、すでに実効性のある措置を講じている。関税率の引き下げもそのひとつだ。この1年間だけで3回、工作機械、繊維製品や建材など3千超の品目を対象に実施した。これにより中国の平均関税率は2017年の9・8%から7・5%に下がった。また先月、名古屋市の経済団体に「東海3県の出展企業とその出品物の詳細を知りたい」と中国の複数の地方政府から問い合わせがあったという。各地方政府は輸入博に「バイヤー」を送り込み、大量の輸入品の買い付けを真剣に検討しているようだ。
 日本もかつて、輸入促進に大きく舵を切った時期がある。1972年を機に産業保護偏重を改め、関税率体系の見直しを断行した。ガットの多角的貿易交渉における貿易自由化要請や激しさを増す日米貿易摩擦がその背景にあった。80年代には政府主導で「メイドインUSAフェア」など大規模な輸入展示会を相次ぎ開催し、輸入促進事業を本格化させた。85年には政府・与党が「市場アクセス改善行動計画概要」を発表。政府調達、資本金融市場、サービスを含む6分野における体系的かつ総合的な措置で、国を挙げて輸入促進にまい進する強い姿勢を示した。90年にはジェトロに輸入促進部が設置され、輸入案件発掘を目的とした長期専門家派遣や輸入ビジネスサポートセンターによる実務支援など、きめ細やかな取り組みが展開された。
 中国でも今後、かつての日本のように、輸入博などの輸入促進策が断続的に実施されることになろう。輸入の拡大は、市場ニーズを踏まえて行えば、長期的には中国の産業構造の転換を促し、持続可能的な経済成長の一助となりうるからだ。一連の輸入促進策が、40年前の改革開放政策、20年前のWTO加盟に次ぐ「第3の改革開放」として評価される一大転換点となるのか、注目していきたい。

愛知大学 国際ビジネスセンター所長 現代中国学部 准教授 阿部 宏忠

あべ・ひろただ 20年間の日本貿易振興機構(JETRO)勤務を経て2011年から現職に。JETROでは北京、上海、青島に計10年間駐在し、日系企業の中国進出を支援したほか中国市場を調査。1968年生まれ。