連載

2014年11月10日号

サブミクロンの面精度、匠の量産提案

次世代素材の製品開発パートナーに
エフ・エー・テック[精密樹脂金型・精密樹脂部品成形]
奈良県五條市

 超硬合金のレンズアレイ金型を5軸MCの直彫りで短時間に加工し、しかも表面粗さはRz0.5μmという滑らかさに仕上げる。エフ・エー・テック(福井一史社長、従業員数58名)が平成23年度のサポイン事業を通じて築いたこの技術は、巷を賑わせる「超硬直彫り」ブームの先駆けだった。
 しかも、このケースで流す樹脂は水のように粘性度が低い新開発素材。未知の流動性にもかかわらず、量産試作品の特殊レンズの形状精度はほぼ鋭角の部分でも1μm以下を保ち、成形品の薄肉化を可能にした。
 ほかにも、コンマ数mm径テーパ形状の医療カテーテル向け金型、熱伝導性に優れた新開発樹脂を使った全く新たな金型などなど、時代の先端を行く開発事例を聞くほどに、その技術の源泉を知りたくなる。

■「一気通貫」の提案力
 整然とした加工現場には、微細加工に定評がある安田工業の5軸MC「YMC430Ver・II」をはじめ高精度MCが10台以上ずらりと並ぶ。窓がほとんどなく、室温は年間を通じて23度±0.5度レベル。高精度研削盤9台、焼入れ用の真空熱処理炉、射出成形機を備えたクリーンルームまで揃うこの企業が、創立からわずか12年だと聞けば、その成長速度の異例さがうかがい知れるだろう。
 元はと言えば、福井社長は東大阪にあった中堅金型メーカー・宮岡の出身で、同社樹脂部門で80年代から大手メーカーとの共同開発や試作などに取り組んできたという。だが、奈良に樹脂部門が移転した後の2001年、宮岡はメインバンク破綻のあおりを受けて他社に転売され、転売先の企業も1年で倒産する。
 逆境の極みに思えるが、再起は倒産からわずか一カ月後と驚異の早さ。「支払い条件は相談に乗る。なんとしてもすぐに再開してほしい」。メーカーから数百万円単位の発注が相次ぎ、福井社長は元宮岡のベテランエンジニアを率いて「掘建て小屋同然の工場」から再スタートを切った。
 素早い再起を強く求められたのは、メーカーの共同開発パートナーとしてなくてはならない存在だったからだ。
 核にあるのはサブミクロン単位の面精度を誇る金型加工技術と、蓄積した量産成形のノウハウ。「既存の型では流れないような粘度の新開発樹脂や特殊な製品形状でも、型形状から成型法まで、量産時の製品精度を確実に遂行できる手法を『一気通貫』で提案できる」と品質保証部の奥野広昭部長は誇らしげに話す。

■永続トライで精度を探求
 精度の追求過程は「ハイテクではなく、ローテクの極み」なのだという。荒加工、仕上げ加工の刃物Rをどの組み合わせにするか。刃物姿勢やプログラム設定は、MCのベッドの振動の影響は―求める面精度が出るまで、数限りないトライを繰り返す。
 そうして出した「一定の解」をすべて数値化してマニュアルにまとめた後、さらに良好な解を求めて再トライ。「終わりのない問いを追求し続けられる現場力こそが、最大の強み」という。
 現場のモチベーションの高さは、独自の評価体系で強化された面も大きいようだ。多能工化や提案力など従業員の資質を全7項目・3段階で明確に数値化して公表し、さらに他部門の上長評価を加えて公正さを担保するというもの。自主的に考えて動く風土を育て、さらに近年では、自動車部品サプライヤー向けの標準規格TS16949の自主運用を推進。階層別の教育体系を設け、大手並みの教育体系へとブラッシュアップしている。
 目下の目標は現在、年間売上高(約7億円)の1割にすぎない量産成形を3〜4割にまで高めること。奥野部長は「通常はできないような多数個取り成形や樹脂の薄肉化、小型精密インサート部品の成形でQCDを飛躍的に高められ、生産の国内回帰を推進できる」と自信あり。クリーンルームを生かした量産体制の強化で、医療や自動車関連分野を開拓する構えだ。