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特集:神奈川県のモノづくり

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―今号(12月10日号)の紙面特集より、ここでは特集:神奈川県のモノづくりを掲載―。
 神奈川県は新しい時代の風を日本に呼び込むゲートウェイだ。さかのぼれば横浜に黒船が来航して以降、多くの西洋文明が神奈川の地から日本中に広がっていった。高度成長期とバブル崩壊を経て大手の量産拠点は県外や国外に移る向きがあったものの、研究開発拠点やマザー工場の多くは県内に残り、イノベーションの種を様々な分野で産み育てている。今回の特集では、イノベーションを起こす発信地として進化を遂げる神奈川県のモノづくり動向を、生産財中心に追った。
 神奈川県は豊かな自然に囲まれる土地ながら、首都・東京と絶妙な距離を保って発展を続けてきた。面積としては全国で5番目に小さいものの、総人口(約916万人)は全国2位。その県内生産(2015年度33.9兆円)はフィリピン、フィンランドに匹敵する経済規模を誇る。
 東京都心より地価が安い一方で、羽田空港や東海道新幹線、東名高速が県内を横断するなど交通アクセスに優れ、戦前から多様な産業が集積した。最新の「平成28年経済センサス活動調査」によると15年度の神奈川県の製造品出荷額は17兆4772億円で、全国トップの愛知県(約46兆円)に次ぐ2位。製造品出荷額の内訳をみると輸送機、石油、化学のほか生産用機器の出荷比率も高い。
 神奈川県東部の川崎・横浜地区は鉄鋼業や石油精製・ 石油化学などの企業が集積し、日本の高度経済成長をけん引するコンビナート群を形成。オイルショックとバブル崩壊を経て、国内外へ量産工場が移る動きもあったが、研究拠点やマザー工場は県内に残った。今も日産自動車、富士ゼロックス、ソニー、武田薬品工業などグローバル企業が県内に拠点を置き、優れた技術を有する中堅・中小企業も集積している。中でも学術・開発研究機関の従業者数(民間)は、約4万8000人と東京(約4万人)を上回る全国トップだ(平成28年経済センサス基礎調査)。
 一方で、相模原市や伊勢原市を中心とする内陸地域は地盤が強固で平坦地が多く、工業団地にうってつけ。軍都として栄えた経緯から陸路のアクセスにも優れ、最近では域内を縦断する「さがみ縦貫道路(圏央道)」開通により利便性をさらに高めている。

新産業創出をサポート

 神奈川県の総合施策「かながわグランドデザイン」(第2期:15〜18年)では、産業創出目標を掲げ、各種施策を推し進めている。
 ロボット関連では、「さがみロボット産業特区」で生活支援ロボットの実用化・普及を図り、関連産業の創出・育成を狙う。ロボット開発のボトルネックとなっている実証実験を促進して、製品化に結びつけていくのが事業の主なテーマ。同特区内で実施する実証実験を毎年1件ずつ増やし、18年には134件(累計)を目標に掲げた。
 県外・国外から企業の事業所の立地推進については16年4月から「セレクト神奈川100」という新たな企業誘致施策も設けた。独自の規制緩和など県と市町・関係団体が一丸となって立地をサポート。県外・国外から4年間で累計100件の事業所立地を目標としている。
 県内製造業の9割以上を占める中小企業の技術力向上もサポートする。産業技術センターの支援を受けた製品化など、中小企業が実用化した技術の件数を年間8件ずつ増やし、18年に累計132件(累計)を目標としている。
 産業の新陳代謝を加速するべく、起業支援にも熱心だ。17年度から個別ハンズオン支援を行う「かながわ・スタートアップ・アクセラレーションプログラム」を実施。これまでには次世代蓄電デバイスと高精度測位システムを手掛ける「スペースリンク」や、独自開発した小型EVを生産販売する「E・ミニモ」など、次世代の有望技術を持つ様々な企業が同プログラムで生まれ育ち始めている。

臨海部に「キングスカイフロント」

 県では「未病」のテーマを掲げてライフサイエンス分野の産業創出を進めており、11年には県東部の臨海エリアを中心に「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区」の指定を受けた。さらに神奈川県全域は14年、国際的ビジネス拠点の創出等を目指す「東京圏国家戦略特区」の指定も受けている。
 これらの施策が融合する新たな取組みとして今、最も注目を集めているのが羽田空港対岸・川崎市殿町エリアの「キングスカイフロント」だ。04年に閉鎖されたいすゞ自動車工場跡地の約半分(40ヘクタール)の土地に、創薬、再生医療、医療機器などライフサイエンス分野の企業進出が進展。再生・細胞医療の実用化・産業化をオープンイノベーションで進める「かながわ再生・細胞医療産業化ネットワーク(RINK)」などを中心に、世界最高水準のライフサイエンス研究拠点創出を目指している。
 2020年には羽田空港側と殿町エリアをつなぐ連絡橋も開通予定。国内外へのアクセス向上により、さらなるイノベーションの進展が期待されている。