識者の目

ミャンマーに再注目しよう

 2019年は米中貿易摩擦、ハイテク覇権争いで、中国の動きに注目が集まる。しかし、これから先を見据えた時、ASEANとインドが重要で、インドを見据えるとタイ+1としてのミャンマーが注目すべき国となる。
 5年前にミャンマーブームがあったが、再注目したい。アジア開発銀行によるGDP成長率(2011︱2030年)予測では、ASEAN平均が5.6%、高い順にミャンマー9.0%、カンボジア8.2%、ラオス7.8%、ベトナム7.3%である。
 筆者は昨年の11月〜12月、ミャンマー工業省とJICAプロジェクトの招聘を受け、工業省の裾野産業育成への協力、具体的取組みとして自動車部品サプライヤーを目指すためのプラスチック産業協会への指導を行った。その内容を2回に分けて紹介したい。
 ティラワ経済特区(SEZ)はヤンゴン南東20kmにあり、広さ約2400ヘクタール(品川区とほぼ同じ)。15年9月にZone−A(405ヘクタール)、18年7月にZone−B第1期(101ヘクタール) の開業、今年9月にはZone−B第2期(77ヘクタール) が開業予定である。
 18年11月1日時点で、予約締結済97社、うち操業開始済が56社である。契約済企業の国籍内訳では日本が50社と多いが、タイ14社、韓国6社、台湾5社、ミャンマー4社のほか13カ国にのぼる。日本政府援助でインフラ整備が行われ、ミャンマーでつきものの停電等の心配がない。また、投資認可や輸入ライセンス・通関等の手続きがワンストップサービスセンターで行えることが魅力になっている。

■部品の現地調達強化へ
 注目入居企業はスズキ自動車(20ヘクタール)である。18年1月から操業開始、SKD(セミノックダウン)であるが、CIAZ、ERTIGA、SWIFTの3車種を生産、月産約1000台に達している。
 ミャンマー国内でのスズキの新車販売も好調である。ミャンマーでは現在、実質中古車輸入を禁止、さらにオートローンが可能となったことで新車販売に追い風となっている。たとえばSWIFTの価格は2千万チャット(約140万円)と購入しやすいレベルになっており、ミャンマー新車市場で約6割シェアを占めるスズキのさらなる伸びが予測される。
 課題は、今後現地調達を進めていくために、日系Tier1、Tier2のミャンマー進出が増えてほしいこと(できれば、ティラワSEZに)、またローカル部品製造業の技術力向上である。JICAプロジェクトは、そのローカル部品製造業の育成として、まずプラスチック成形業を対象とするのがよいと選択した。
 ミャンマーでは、企業間協力をしないという傾向が強いが、同業者が協力して共通の課題に挑戦することが重要と、工業省のJICA技術協力専門家、砂田雅則氏が尽力し、プラスチック産業協会内での自動車部品製造部会の設立を図ってきた。今回のプロジェクト活動では、その主要メンバーと共にティラワSEZとスズキ自動車を訪問した。スズキ自動車のSKD工程見学は、メンバー企業が取り組めるプラスチック成形品があるかを確認してもらい、具体的な目標課題を持ってもらうことが目的であった。
 また、ローカル部品製造業の技術力向上のモデル事業として、プラスチック産業協会の主要3企業での現場指導を、出雲樹脂の石原和春製造部長を招き実施した。プラスチック射出成形の基礎知識のテキスト(英語版)を作成して配布、スクリュー3点セットの動作説明などには動画を活用した。
 このような指導で常に感じるのが通訳の問題で、通訳自身が技術内容を理解できる人でないと重要な部分が伝わらない。今回は、専門家、通訳ともベスト人材を得られたので、受講側の評価も高かった。現場指導では作業者に成形条件設定を実際に行ってもらいチェックすると、いろいろの理解不足を確認でき、成果の多い指導となった。

オフィスまえかわ 代表・工学博士 前川 佳徳

同志社大学大学院工学研究科および神学研究科修了。工学博士、神学修士。大阪府立産業技術総合研究所研究員、大阪産業大学デザイン工学部教授を経て、現在オフィス・まえかわ(ものづくり企業支援)代表。製造業のアジア展開支援を行っている。タイAlliance for Supporting Industries Association 顧問、日本・インドネシア経済協力事業協会顧問など。型技術協会元会長、現名誉会員。