コラム

2019年3月10日号

 襖をさっと閉めたら、そこに息子の小さな指があった。あっと思う間もなく火のついたような泣き声。医者に駆け込んだ▼骨に異常は無かったが、包帯の下の4歳児の2本の指は、大人の指ほどに黒く腫れ上がった▼20年程前の出来事だが、その日の失態は後日談とともに重い記憶として残る。2、3日して夜、自宅に電話があった。保育園の保母さんからだ。言い出しにくそうだが、距離を保ちしっかり質問された▼息子さんはなぜ指を怪我したのか。体罰ではなかったのか…。疑われて次第に不愉快になり、最後、そこまで言われる筋合いじゃない、と応じてしまった▼保母さんにすれば、勤務時間外に何も好んで電話しているわけではない。確かめておくべきとの判断で、嫌な役を買って出たのだ▼何かあれば保育園や学校に責任転嫁されてしまう社会のムードは当時にもあった。「あの時なぜ学校は気づけなかったのか」…。▼時を経て最近、小学校の教師になった同級生と久々に会った。今の教師は本来の仕事より、各家庭の対応に追われ、それが極度のストレスを生んでいる…。やるせない話が続いた▼何かがどんどん悪くなっていないか。幼児虐待のニュースが相次ぐ中、親による体罰を禁止する法案が国会で提出されることになったが、レベルの低い学校ほど校則が厳しくなりがちなのと似ていると感じる▼法で細かく縛らざるを得ない世の中になったと思うと、国民の一人として恥ずかしい。