識者の目

人から学び、人に教えられるロボットをあらゆる分野へ

 川崎重工業のロボット事業は昨年6月、50周年を迎えた。実は日本で最も古いロボットメーカーだ。世界でも同社ほど古い企業はなくなった。自動車関連のスポット溶接や塗装向けのロボットを納入するほか、半導体ウェハ搬送向けクリーンロボットでは世界シェア50%以上のシェアをもつという。将来、どんなロボットの使われ方を想定するのか。
 −ロボット事業の近年の状況は。
 「ここ数年、我々は2割近い成長を続けてきました。ただ、半年前から中国などで需要の足踏み状況にあります。しかし、客先からの引き合い案件自体は伸びています。2019年度は後半には盛り返し、全体では前年度よりプラスになると見ています」
 −2017年11月に技能伝承型の遠隔操作システム「Successor(サクセサー)」を開発されました。
 「遠隔でバイラテラルで動くものはよくありますが、Successorはロボットが自由に動き、難しそうなところだけ人間が割り込んで遠隔操作できます。しかも、ロボットはAIを使って人の技能をどんどん覚えていきます。一部のお客様に試していただいているところ。実はここ(西神戸工場)で、あと数カ月でSuccessorを使った塗装ラインを公開できるようになります。こうした直感的に教えられるシステムの方が従来ロボットよりもマーケットは大きくなると思います」
 −具体的にはどんな使われ方を想定していますか。
 「ロボットがうまく作業できなければオペレーター室にいる人に信号を送ります。室内の画面に状況が映り、それを見て人が遠隔でサポートします。ロボットはサポートされた作業を覚えて自動運転の精度が上がります。これを繰り返すことでロボットが賢くなると、たとえば、1人で10台のロボットをサポートしていたのが、20台、30台、100台とカバーできるようになります。しっかりした人が数人いればライン全体をカバーできます。一気に無人化するのでなく省人化し、限りなく無人化に近づけます。もっとすごいことがあって、ロボットが覚えた微妙な動き、力加減を逆に再現して人に示すこともできます」

■ ユーザーメリットを重視
 −ABBさんとユーザーインターフェースの共通化を進めています。
 「去年の6月に欧州で1つのタブレットを使ってABBさんと我々のロボットを動かすということをお客様に体験してもらいました。1社のロボットを動かせれば他社のどのロボットでも動かせるようになればよいと思います。これは我々でなくユーザーにとってのメリットです」
 −どうしてABBさんを選ばれましたか。
 「我々の双腕ロボット『デュアロ』によく似たYuMiという製品をABBさんはお持ちです。たぶんABBさんの狙うターゲットは我々と似ていて競合もする。だからこそどちらを選んでも操作できるべきでしょう。それに日本と欧州の代表的なメーカーから共通のものが出るということが重要で、日本だけでやるとどうしても特殊扱いされます。やはりグローバル展開するには海外のメーカーと歩調を合わせる方がいいでしょう」
 −中長期的な展望を聞かせてください。
 「我々は産業用ロボットメーカーから総合ロボットメーカーを目指します。ロボットが必要とされるあらゆる分野、たとえば災害対応や医療分野も視野に入れます。医療ロボットは2019年度中に上市したい。ロボットにより人に優しく、失敗リスクが低く、簡単かつ遠隔操作可能なものにすることで、手術時間を短縮できます。将来は自宅や出張所、救急車の中でも手術できるようになります。ロボット技術が医療にも使える時代がやって来ています」

川崎重工業 取締役常務執行役員 精密機械・ロボットカンパニープレジデント 橋本 康彦 氏 (一社)日本ロボット工業会 会長