PICK UP 今号の企画

最新の溶接

―今号(4月10日号)の紙面特集より、ここでは最新の溶接を掲載―。
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厚板を高出力でワンパス加工する提案が
増えている(写真=ダイヘン「D-Arc」)

 溶接の効率化が進んでいる。短時間できれいに仕上げ、後工程の手間を少なくする。経験の少ない人でも安定した品質が出せる。繰り返し使われてきた言葉ながら、その効果を一層高めた製品・技術が続々と誕生している。

ワンパスで厚板工数削減、増加するアルミ対応提案も

 金属接合を代表する溶接の中でも、技術革新が目覚しいのが厚板への対応だ。多層盛りではなく、高出力によるワンパス加工で作業工数の大幅な削減を狙う提案が活発になっている。
 その分野で先行するダイヘンはアーク溶接システム「D−Arc」から最大電流850Aの大電流MAG溶接モードを開発した。溶着容量450グラム(毎分)は「国内トップクラス」という。板厚25ミリ鋼板の隅肉溶接において、脚長20㍉のワンパス加工を可能にした。
 溶接専用LSIの精密波形制御を活用し、500A以上の大電流MAG溶接でアークの不安定要因となる振り子状の溶滴移行を抑制したのがポイント。アークの安定性と低スパッタ化を実現しただけでなく、広い開先部でも溶着量を高めたことで溶接パス数を大幅に低減した。
 溶接作業工数を最大80%削減し、多層溶接でワンパスごとに必要だったスラグの除去作業(パス間処理)を不要にした。新たな展開として昨秋に半自動仕様(定格電流650A)を発売。「(D−Arcは)元々ロボットなどの自動機を想定して開発したものだが、『手でも溶接したい』との要望を受けて製品化した」(森本慶樹取締役)という。
 厚板溶接の効率化に向けて、競合他社も高出力溶接機・システムのラインナップを揃えてきた。パナソニックが昨年3月に発売したパルスMAG自動溶接機「YD−700VH1」は、定格出力700A・55Vに設計した。タンデム溶接システム相当の溶着量(毎分300グラム)で、板厚22㍉のワンパス溶接を溶接電源1台とシングルトーチで可能にした。
 厚板溶接に必要なアークセンサー機能を溶接電源に内蔵した。同社製ロボットのみ対応可能。「ロボットコントローラーとの配線はアークセンサーケーブルの接続だけで簡単にできる」という。
 ファナックは昨春開催の国際ウエルディングショーで、産業用ロボットを使用した建機部品溶接システムとして、リンカーン・エレクトリック製700A溶接機との組み合わせを披露した。溶着容量は毎分420㌘。アークセンサによる補正もポイントに挙げた。
 鉄に比べて、2倍以上の溶接電流が必要なアルミにも注目したい。不二越の担当者は「溶接が難しい」と言われる理由について、(1)大きな電流を出せる溶接機が中々存在しない(2)溶接機を支えるロボット・ユーティリティも大きなものが必要(3)電極にアルミが付着し安定しない点を挙げる。対策の一つとして提案するのはオフセット溶接システム。下部電極を製品に干渉しないようフランジの端部に当てつつ上部電極を回転させることで、短いフランジへのスポット溶接を可能にした。
 安川電機がスポット溶接用ロボットとして今年1月に市場投入した「MOTOMAN−SP130」は、自動車のボディと部品がターゲット。低燃費化を目的にアルミやハイテン材の導入が進んでいることから、高加圧スポット溶接に必要な要素を盛り込んだ。
 2.5キロワットのガン用サーボモータを開発し、スポット溶接電動ガンの高加圧化に対応する。サーボモータをバッテリーレスにすることで、生産性やメンテナンス性の向上につなげた。同じサイズの既存機種の動作速度を越えるスピードを可能にし、可搬質量も130キログラムに大きく引き上げた。

誰でも安定した品質に、経験カバーする高機能機続々

 団塊世代の熟練工が退いたことで、数年前から足りない経験をカバーする高機能溶接機が増えている。安定したアークが出せるデジタル制御機はその代表格だろう。マイト工業が新製品として提案中のインバータフルデジタル交流・直流TIG溶接機「MT−350AF」は、ダブルデジタル表示で操作を容易にした。低速、高速パルスで高品質な溶接が可能に。直流でステンレス・軟鋼・鋼を溶接し、交流でアルミTIGに対応する。
 交流の出力波形パターンは3種類。「高品質アルミ溶接を再現する」という。定格出力電流は200〜350A。高出力ながら、設置場所を選ばないスリムなボディ(高さ440×横幅240mm)も特長に挙げている。
 パナソニックが昨秋開催の自社展で参考出品したフルデジタルCO2/MAG溶接機「YD−350VZ1」は、中電流域での溶接性能を強化。新たに開発した高精度波形制御でスパッタ発生量を抑えた。ボリュームゾーンの大きい板厚8〜2ミリに対応するラインナップのなかでも「高級機種として位置づける」という。
 ダイヘンの森本慶樹取締役が「従来機に比べて2倍の売れ行きを見せている」として挙げたのは、溶接制御LSIを搭載した交流・直流両用パルスTIG溶接機「Welbee Inverter A500P」だ。精密な入熱制御によるアルミ極薄板の高品質溶接だけでなく、厚板の高能率溶接にも対応できるようにした。
 最大交流周波数を200Hzから500Hzに拡大。アークの集中性を高め、同じ電流でも溶け込み量増加を可能にした。瞬時に溶融プールを形成することで、仮付け速度やスタート速度を向上させ、アルミ溶接の高能率化を実現する。
 定格出力電流は同社従来機比43%増の500A。最大板厚12mmのアルミ溶接に対応する。連続溶接(使用率100%)が可能な溶接電流が270Aから387Aに拡大し、溶接機の稼働率アップとトーチケーブル延長時の高電流維持を可能にした。
 自動で条件設定する溶接ガイド機能を搭載した。使用方法は、電流径、母材材質、溶接継手形状、母材板厚を設定するだけ。溶接調整を容易にし、作業の効率化を図った。
 出張現場の溶接機を選ぶうえで重視されるのが、環境に左右されない操作性だ。育良精機のインバータ制御直流アーク溶接機「ISK−Li160A」は、電源をつながなくてもφ2.6mm溶接棒を約50本使用できる。入力電圧は100V。高性能リチウムイオンバッテリーを内蔵したことで、現場で電源を探す手間を省いた。
 長くて重い入力ケーブルの携帯や延長する必要もないため、現場内での移動が多い作業者の負担を減らせる。アークのスタート性を向上させる点付けモード、電池残量確認など、使いやすさにもこだわった。
 「溶接機として業界初」というバッテリーマネジメントシステムを搭載した。過充電や温度異常を常に監視し、主制御回路へ警告を発信するというもの。充電回路部を制御し、バッテリーの劣化を防止する。
 やまびこジャパンが「溶接のプロのために開発した」のは、ワンダスティック溶接機「HDW310MI」だ。最大の特徴は、自社開発のキャパシタ充放電とインバータ発電技術を融合した新制御システム。アイドリング停止状態からでも格段に早いアークスタートと、強くて粘りのあるアーク特性を可能にしたという。
 電撃防止ONの状態からも、快速・快適さを感じられる溶接ができるのも売り。発電もアイドリング停止状態から瞬時に作動するので、すぐにグラインダー作業ができる。

前後の一手間を手軽に、短時間で仕上げる

 溶接の高品質化には前後の処理工程が欠かせない。スパッタ・スラグ除去、開先加工、焼け取りなどがそう。ロボットシステム、溶接機がいくら高精度になっても、その一手間の有無がワークの溶接強度や外観に与える影響は大きい。といって、人も時間もかけたくないのが現場の本音だ。
 レヂトンの研削砥石「ハイパーブラック」は柔らかい研削面が段差や凹凸にもフィットして下地の削りすぎを防止しつつ、溶接焼けやサビなどを美しくスピーディに除去できる。ナイロン不織布とシリコンカーバイト砥粒を融合させたのが特徴。デリケートな部品にも最適で、塗膜剥離や黒皮除去、仕上げ作業にも威力を発揮する。鉄・ステンレス、アルミなど、幅広い材料に対応する。
 マイト工業が開発した「マイトスケーラ MS−4200」は、2人同時に焼け取りができる点を売りにする。定格出力90Aのハイパワータイプ。刷毛、クロスの同時使用を可能にした。ステンレスやチタンの溶接時に発生する焼け(スケール)に使用する。「使う場所を選ばない」単相100V・200V兼用機。細部や狭い場所に便利な刷毛のほか、大型構造物の全面電解に最適というクロス「コテッシャー」が使えるようになった。
 開先加工機を豊富に取り揃えるフコクの中でも、好調なセールスを記録しているのが、RIDGID社製の「ポータブルパイプべべラー B−500」だ。パイプ(直径最小4インチ)から平板まで対応する。適用加工範囲は厚み4.8~12.7mm。炎や火花を出さずに、2分以内にワンパスで一定のきれいな開先面に仕上げる。
 金属板のロール加工に特化するエスカディアは、材料を傷付けず、きれいに巻けるベンダーを各種ラインアップ。高耐久ウレタン仕様の3本ロールタイプは、材料を傷つけず、ストレート残りが少ないうえ、「食いつくように材料を送るのでロールスリップによる加工ミスに悩まされない」のがポイントだ。