識者の目

大手製造業の「IoT・M2M」先進事例 【コニカミノルタ】(前編)

 KMCとコニカミノルタとのIoT・M2Mの取り組みは2016年のインターモールドでのコニカミノルタの浅井真吾常務執行役員との出会いから始まった。同社はオフィスサービスやヘルスケア、商業・産業印刷、産業用光学システム、機能材料など幅広い事業を展開している売上1兆円クラスの大手企業。主力の複合機/複写機は部品点数が1万数千点から成る情報機器である。
 浅井常務は当初、現場に対して「とにかく成形機、プレス機、測定機器など全てのデータを取ってみろ。見えなかった現場データが見えた時に初めて、データをどう使えば良いのかが分かってくるはずだ。そうしなければ目指す姿の道筋は見えてこない」と号令をかけたそうだ。当時はまだ「IoT」という言葉がメディアに露出し始めたばかりの頃。浅井氏のトップダウンで始まった改革は、今では現場が主導するボトムアップ型に進化している。

■データ活用し「工程内保証」へ
 同社の樹脂部品の製造工場では、数十台に及ぶ20年以上前に製造された古い成形機やメーカ違いの成形機、周辺機器が並んでいた。KMCが独自に開発したM2Mシステム「∑軍師」でこれらの加工機・周辺機器全てから、全製造情報のリアルタイム収集を目指した。
 成形機内部の温度、圧力などの傾向値も管理し、不良発生を予防できる監視システムを一部で実証したほか、「閾値(しきいち)」を外れた部品はロボットが自動で取り出して区分けするシステムまで自社開発した。全工程で閾値をクリアすれば検査レスで出荷できる「工程内保証」を目指している。
 樹脂部品に限らず、プレス機にもセンサーを追加した。プレス時の荷重変化を計測し、不良の流出を防ぐ効果や、プレス荷重バランスの計測でダイハイト調整やSPM改善につなげている。全ての製造ラインにIoT/M2Mシステムを導入するのに費やした期間は約3年。浅井氏は「品質が第一。製品の不良と不具合が減れば、おのずから納期やサイクルタイムが短縮され、コストも必然的に下がる」と力説し、取り組みを着実に進めていった。

■金型管理とメンテ
 同社では国内外に数万個におよぶ金型を保有しており、所在管理やメンテナンス履歴の整理、棚卸による資産管理が非常に難しくなっていた。そこでKMCの開発した「QR銘板」(黒色アルマイト材に精密切削でQRコードを刻印、特殊ガラスコートにより耐久性を高めたプレート)を金型に取り付け、タブレット端末で管理状態を記録できるシステムを構築した。更に成形機にもQR銘板を張り「どの成型品をどの成形機で何個生産したのか」「金型メンテナンスはいつ、どのように行われたのか」なども見える化した。
 また、プレスラインでは「スケルトンモデル」と呼ばれる順送型の連続工程板を日々記録するなど、金型メンテナンスも怠りない。こうした金型データ管理により、「金型の計画的メンテナンス体制が構築できるようになり、金型起因の製品不具合や設備停止が大いに削減された」(コニカミノルタ)という。金型保管棚にもQR銘板を取り付け、棚卸しや資産管理の工数を大幅に削減。今後は国内外の製造拠点、サプライヤーまで含めた全ての金型にQR銘板を装着し、中国、マレーシアなどでもグローバルな生産、金型管理体制の構築を急いでいる。
 さらに間接業務の負担軽減に向けては、日報や機械日報、不具合打ち上げ、測定表等をタブレットで閲覧・共有できるデジタル帳票「M−Document」(KMC)を導入している。こうした取り組みをコニカミノルタでは中国、マレーシアの海外工場にまで展開した。残る課題は、部品製造の75%を占めるサプライヤーとの連携だ。次回はその取り組みを紹介したい。

㈱KMC 代表取締役社長 佐藤 声喜

秋田県出身、1956年生まれ。芝浦工業大学機械工学科博士課程修了。三井金属鉱業のデトロイトオフィスで技術開発者として活躍し、同社社長表彰、HONDA研究所長表彰、特許/実用新案240件以上出願などの実績を積む。その後、1990年にインクスを設立し、常務取締役として技術コンサルや金型・試作・設計派遣など事業全般を統括した。2010年にKMCを創業し、代表取締役社長。製造業の技術コンサルや生産プロセス改革に関わるソフト開発を手掛ける。川崎市リサーチセンターフェロー、素形材センター理事、光造形産業協会理事、日本金型工業会技術委員などを歴任。日本酒のソムリエ「唎酒師(ききざけし)」の資格も取得ずみ。