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東京五輪後の建設市場と鉄骨需要

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関西圏内でもホテルの建設が相次ぐ。
奈良県ではラグジュアリーホテルとして、
日本初上陸の「JWマリオットホテル」が
2020年春に完成する予定

―今号(6月10日号)の紙面特集より、ここでは東京五輪後の建設市場と鉄骨需要を掲載―。

全国で大型再開発、大阪、広島、福岡でも

 建設市場が新たなステージに入る。以前から進行している鉄骨需要10万㌧規模の首都圏大型再開発事業は、新宿、池袋、渋谷など、挙げれば切りがないが、全国各地でも新たな計画が動き出した。中国地方の中心に位置する広島県では、JR西日本グループが広島駅ビルの建て替え計画を発表。延床面積は約11万1000平方㍍で、2025年春の開業を目指す。
 博多駅周辺も再開発に着手する。福岡市が「博多コネクティッド」として打ち出した。対象エリアは駅から半径約500m(約80万平方m)。容積率緩和制度の拡大、屋根のある広場でも公開空地評価を最大2.5倍に引き上げるなどのインセンティブを設けた。10年間で20棟を建て替えた場合の建設投資効果は約2600億円。延床面積で1.5倍(49万8000平方m)、雇用者数で1.6倍(5.1万人)まで拡大することで、年間5000億円の経済波及効果を見込んでいる。
 25年に開催される大阪・関西万博の経済波及効果は約2兆円。建設費用は1250億円になる予定だ。さらに大阪府と大阪市は万博会場となる夢洲に統合型リゾート(IR)の誘致を進める。対象エリアは約60万平方㍍。9300億円を投資する。
 好材料はほかにもある。老朽化に伴うオフィスビルの建て替え、インバウンド(訪日外国人旅行)需要のさらなる増加を見込んだ宿泊施設の整備、首都圏を中心に建設が進む超高層マンションなどがそうだ。鉄骨需要は年間500万t前後で推移(左下グラフ)している状況。ファブリケーターの稼働率も高水準を維持しており、今後は人手不足をカバーするさらなる省人化と効率化が求められている。

ビル建替バブル到来か、東京23区内で平均築31年に

 高度成長期からバブル期にかけて建設されたモノたちが次々と老朽化している。高速道路、橋梁、鉄道、トンネルなどの交通インフラに加えて、オフィスビルも建て替えの時期を迎えつつある。ザイマックス不動産総合研究所によると、東京23区内にあるオフィスビル(延床面積300坪以上)の平均築年数が2018年12月時点で30.9歳に達した。
 9206棟1281万坪(賃貸面積ベース)から算出したところ、とくに5000坪未満の中小規模ビルが「高齢化した」という。バブル期(1986~1997年)に竣工した物件が多く、築20年以上が498万坪と中小規模ビル全体の82%も占めている。築20年未満は107万坪に留まっており、建て替え需要が一気に増加する可能性は十分にありそうだ。
 2000年から19年にかけて、大規模ビルを含めて420棟300万坪増加。「バブル崩壊後も毎年一定量の供給があった」大規模ビルに対して、中小規模ビルはバブル期の大量供給が影響し、170棟30万坪しか増えていない。
 具体的にいつ頃から建て替えのニーズが高まるのか。ザイマックス総研が15年に興味深いアンケート調査の結果を発表している。中小規模ビルオーナー298人にビルの物理的な寿命を聞いたところ、「築50年」とした回答が最も多く、全体の8割以上は築50年以上と考えていた。先に挙げた平均築年数から考えてみると、建て替えバブルとも言うべき需要急増はあと20年待たなければいけない計算になる。
 建て替えや改修に対する意識は高まりつつある。18年に実施した全国政令指定都市(19都市/大阪市除く)のビルオーナー調査では、賃貸ビル事業で重視する項目の中で「テナント要望への対応」「ビルの改修やリニューアル」「省エネ対策」などの割合が高かったという。一方、「中長期の修繕計画作成」「法改正に伴う既存不適格の改修」や「耐震対策」は、重視はしているものの実施した割合は低く、「これは(前年に実施した調査)東京・大阪とほぼ同様である」とした。

25年に客室数110万規模に、インバウンド需要のさらなる獲得へ

 全国で宿泊施設の建設が進んでいる。インバウンド(訪日外国人旅行)需要の影響だ。観光庁の宿泊旅行統計調査によると、2018年の延べ宿泊人数は5.1億人(=グラフ)。全体の8割を占める日本人が頭打ちなのに対して、外国人の宿泊数は増え続けており、18年には9000万人に達した。
 人口が減少している日本にとって、インバウンドは宿泊市場を支える重要な顧客。あらゆる施設でインバウンドの割合が年々高まっており、中でもシティホテルは4割に達する勢いだ。国際的なビッグイベントである東京五輪や大阪・関西万博を控え、さらなる需要増加に期待が寄せられている。ただその中で懸念材料として指摘されているのが、首都圏や関西圏のホテル不足だ。
 国内の宿泊事情を定期的にレポートしている日本政策投資銀行は「25年までに多数のホテルが開業する見通し」と見ている。同行が客室数などを基に将来の宿泊者数を試算したところ、「現在のホテル整備計画を見ると、20年前後、遅くとも25年で新規客室供給が、ひと段落する見込みであり、将来のホテル客室数はある程度見通しがつく状況になっている」という。
 ホテル客室数は17年時点で95.9万室。20年までに11.6万室、25年までに13.1万室が新たに供給され、客室総数は17年比13.7%増の109万室に達すると予測した。ただ現在のような高い客室稼働率を25年以降も維持するには、インバウンド宿泊客を年間1億2300万人呼び込む必要があるという。
 過熱とも言えるホテル供給は首都圏に限った話ではない。25年までの客室増加率は、大阪と京都で30%、愛知と沖縄で20%を超えるそう。中でも愛知は福岡を大きく上回って全国4位の規模となる見通しだ。喜んでばかりもいられないようで「愛知は(インバウンド宿泊数を)2.5倍以上の増加が必要となる見通しであり、福岡以上に外国人旅行者が宿泊する県になることが求められる」としている。

超高層、19年以降に11.4万戸、首都圏中心にマンション竣工

 マンションの建設計画も話題から外せない。中でも注目は20階建て以上の「超高層」だ。不動産経済研究所の調査によると、全国で2019年以降に完成を予定しているのは300棟11万4079戸。18年3月末の前回調査に比べて56棟1万7426戸増加した。
 エリア別で最もシェアが高いのは首都圏の183棟8万4012戸。東京23区内が半数を占めた。続く近畿圏は47棟1万4581戸。そのうち大阪市内は30棟9506戸だった。
 1990年代以降に建設・計画が増加した理由について、同研究所は「中古となっても値崩れが起き難く、換金性に優れている」と説明する。大都市圏から地方中核都市まで波及した超高層マンション人気は、「規制緩和による駅前再開発の進捗が大きく影響していた」という。
 右肩上がりが続いていたわけではない。とくに07年以降は、価格高騰によるマンション販売の不振、リーマン・ショックが相次ぎ、建設計画の延期や事業方針の変更から竣工数が09年の3.5万戸から10年には1万戸台に落ち込んだ。
 経済回復とともに竣工数も増加。15年には09年以来の高水準となる1.8万戸に達した。ただ直近3年間は再び低迷しており、1.1万戸〜1.2万戸で推移。18年は棟数こそ45棟に増えたものの、戸数は前年からほぼ横ばいの1万1356戸に留まった。
 同研究所は、19年から竣工数が増加に転じて1.8万戸を突破し、20年も同水準を維持すると見る。その根拠として「今後の超高層マンションは、東京都心部や湾岸エリアを中心に超高層大規模開発や複合再開発プロジェクトなどが数多く控えている」点を挙げている。